ギラン・バレー症候群の症状やサインは?どんなときに病院に行くべき?

2017/10/18 記事改定日: 2020/2/19
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「ギラン・バレー症候群」という病気をご存知ですか?筋肉の運動神経に異常が出て、手足が思うように動かせなくなる病気で、日本では難病に指定されています。
この記事では、ギラン・バレー症候群の症状や病院に行くべきサインについて解説していくので、早期発見に役立ててください。

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ギラン・バレー症候群になると、どんな症状が出るの?

ギラン・バレー症候群とは、主に筋肉を動かす運動神経や感覚を司る感覚神経に異常が発生し、手足に力が入らなくなる自己免疫疾患の一種です。不治の病気というわけでなく、適切な治療を受ければ1ヶ月程度で快方に向かっていくこともありますが、重症化すると人工呼吸器を使わなければならないほどの呼吸障害を起こすこともあります。

なお、治療開始が遅れると予後が悪くなるというデータもあるため、症状が出たらすぐに治療することが大切です。

ギラン・バレー症候群は、年間発病率は10万人に1~2人ほどと稀な疾患です。若い人から高齢者まで発症例があり、年齢による発症のしやすさに差はみられませんが、女性よりも男性がなりやすい病気ともいわれています。

ギラン・バレー症候群の症状

ギラン・バレー症候群になると、まず手のひらや足の裏あたりから痺れなどの感覚障害を発症していきます。同時に筋肉に力が入らなくなり、脱力感が出始めます。
日数経過ごとに脱力症状は広がり、筋力の低下も重症化します。神経症状が出る大体1~3週間ほど前には急性胃腸炎になったり、のどが腫れたりと風邪のような症状が出ることもあります。

発症からおよそ2~4週間が症状のピークで、運動神経の障害が最も重くなり、歩行もままならない状態になることがあります。

他に感覚障害が発生することもあり、事実、ギラン・バレー症候群患者の9割以上が関節や筋肉の痛みを訴えるというデータがあります。

とくに自律神経障害は、重症化すると突然死の原因にもなるので注意が必要です。

どんな症状、兆候があるときに病院へ行けばいい?

ギラン・バレー症候群の3分の2は発症1~3週間前に風邪や胃腸炎などの既往があります。とくに食中毒の原因菌として多いカンピロバクター感染症は、ギラン・バレー症候群の発症リスクが高いことが分かっていますので注意が必要です。

ギラン・バレー症候群では以下のような初期症状が見られますので、風邪などの既往がある人で思い当たる症状がある場合はなるべく早めに病院を受診して医師に相談するようにしましょう。

  • 手足の力が入りにくくなり、布団の上げ下ろしや階段の上り下りなどに支障が生じる
    (とくに足の力が入りにくくなることが多く、徐々に手の力も落ちてくる)
  • 顔の筋肉に力が入らず、顔が垂れさがる・目が閉じられない・口角から涎が垂れるなどの症状が見られる
  • 目の動き合悪くなり、物が二重に見えることがある
  • 飲食物を上手く飲み込むことができず、むせやすくなる
  • ろれつが回らなく、話しにくくなる
  • 手足にしびれや痛みが生じる
  • 突然の発汗や動悸など自律神経失調症状が見られる

ギラン・バレー症候群は何が原因で発症するの?

ギラン・バレー症候群の発症原因は明確には解明されていない部分も少なくありません。
しかし、インフルエンザなど何らかの感染症にかかった後に多く発症することから、感染症をきっかけに身体の免疫系統に異常が引き起こされることが原因と推測されています。特にカンピロバクター腸炎をはじめとした感染性胃腸炎、一般的な風邪症状を引き起こすウイルス性上気道炎を発症して3~4週間後に発症することが多いのが特徴です。

これらの感染症によって免疫系統に異常が生じることで、末梢神経の一部を「異物」と勘違いした免疫が攻撃を開始するためと考えられているのです。
その他、ワクチン接種の後や薬の副作用によってギラン・バレー症候群を発症するケースも報告されています。

ギラン・バレー症候群の症状は治療で改善できる?

ギラン・バレー症候群の明確な治療法は確立されていません。いまのところは、先行感染している感染症を治療することと、血漿を交換するなどの治療法がとられるのが一般的です。筋肉への障害をもたらす病気なので、ときには呼吸筋への障害が出ることもあり、その場合は人工呼吸器をつけながらの治療となります。

しかし、ギラン・バレー症候群はどちらかというとリハビリテーションが重要です。リハビリは時間を要するものですが、筋肉障害による寝たきりが原因での褥瘡(じょくそう)の予防もしなければなりませんし、運動神経の麻痺により関節が固まらないようにある程度動かさないといけません。完治しない病気ではありませんが、機能が元に戻るまでには時間がかかるでしょう。

おわりに:ギラン・バレー症候群の疑いがある症状がみられたらすぐに病院へ

ギラン・バレー症候群は、早期に適切な治療を行えば回復が見込めることもありますが、治療が遅れて重症化してしまうと、深刻な事態を招く恐れがあります。手足の痺れや脱力感、風邪のような症状が見られたら、すぐに病院を受診してください。

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