記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/8/9
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
地震や大雨などの災害が起こると、断水や停電によって自宅のトイレや浴室が使えなくなったり、避難所で多くの人と生活したりすることがあります。月経中であれば、生理用品の不足や交換場所の確保、使用済み用品の処分など、普段とは異なる困りごとが加わります。
内閣府男女共同参画局が令和6年能登半島地震への対応を調査した報告では、生理用品が人目につく場所に置かれていたことや、男性が配布していたことから、女性が受け取りにくい状況があったことも示されています。必要な物資が避難所に届いていても、受け取り方やプライバシーへの配慮によって利用しにくくなる場合があるため、個人で準備できるものを持っておくことは安心につながります。
また、災害と婦人科疾患との関連についての報告は多くありませんが、災害後には月経不順や無月経、外陰炎などがみられる可能性が指摘されています。生活環境や睡眠、食事、精神的な負担が大きく変化する時期だからこそ、月経を含めた体調の変化にも目を向けることが大切です。
災害への備蓄では、生理用品も水や食料と同じように平時から準備しておきます。内閣府男女共同参画局の備蓄チェックシートでは、生理用ナプキン、おりものシート、サニタリーショーツ、中身が見えないゴミ袋、女性用下着などが女性用品として挙げられています。また、個人によって必要なものは異なるとしたうえで、一人あたり最低3日間の量を備蓄することが望ましいとされています。2025年には、使い捨て下着などについても追記されました。
備えるときは、非常時だけに使う特別な商品をそろえるより、普段から使い慣れている種類を少し多めに購入し、使った分を補充する方法が取り入れやすいでしょう。昼用と長時間向けのナプキン、下着、黒や不透明の袋などをまとめておくと、急な避難にも対応しやすくなります。
自宅の備蓄とは別に、数回分の生理用品と下着を小さな袋に入れ、非常用持ち出し袋や通勤用バッグに入れておく方法もあります。月経カップやタンポンなどを使用している人は、手洗いや洗浄が難しくなる可能性も考え、断水時でも使いやすい用品を予備として持っておくと選択肢が広がります。
断水が続くと、毎日入浴できないことがあります。このような状況では、入浴そのものにこだわりすぎず、清潔なタオルやウェットティッシュなどを利用して体を拭き、汚れやすい部分をできる範囲で清潔に保ちます。日本産婦人科医会の災害時の支援資料でも、妊産婦について、入浴にこだわらず体を拭き、外陰部は部分的に洗ったり拭いたりする方法が示されています。
生理用品が不足している場合でも、一枚を必要以上に長時間使い続けることを前提にはせず、避難所の運営者や保健師などに不足を伝えましょう。かゆみや痛み、皮膚のただれなどがあるときは、香りや刺激の強い衛生用品を重ねて使うより、できる範囲で清潔と乾燥を保つことが基本になります。
強いかゆみや痛みが続く、おりものの色やにおいが普段と大きく異なる、発熱や下腹部痛を伴うといった場合は、避難所の医療スタッフや巡回する保健師、医療機関などに相談してください。
災害時には、トイレが遠い、混雑している、暗い、衛生状態が気になるなどの理由から、できるだけトイレに行かなくて済むよう水分を控えたくなることがあります。しかし、水分や食事を控えることは脱水などの健康問題につながるおそれがあります。内閣府の防災情報では、断水などで自宅のトイレが使えなくなる場合に備え、経済産業省が災害用トイレを一人あたり1週間35回分を目安として備蓄することを推奨しています。
生理用品だけでなく、携帯トイレや簡易トイレを準備しておくことも女性の健康を守る備えの一つです。自宅で使用する場合を想定し、実際の便器への取り付け方や使用後の処理方法も一度確認しておくと、発災後の負担を減らせます。
避難所では、夜間に一人でトイレへ行くことに不安を感じる場合もあります。場所や照明、鍵の有無を確認し、不安があれば家族や知人と一緒に移動する、運営者に環境の改善を相談するなど、安全面も含めて考えましょう。
災害後に月経の時期がずれると、強いストレスが原因だと考えてしまうことがあります。実際に災害後の月経不順などは報告されていますが、月経の変化にはさまざまな原因があります。災害によるストレスだけと決めつけず、変化が続く場合には婦人科へ相談することが大切です。
厚生労働省の情報では、月経が3か月以上ない状態や、1回の出血が8日以上続く状態、月経時期以外の出血などは月経や出血の異常として示されています。避難生活中は日付の感覚が曖昧になりやすいため、スマートフォンや手帳などに月経開始日や出血の程度を簡単に記録しておくと、後から体調を振り返る際にも役立ちます。
出血量が明らかに多く、強いめまいやふらつきがある、意識が遠のく、強い腹痛を伴うなど急激な体調変化がある場合は、避難生活による変化として様子を見続けず、医療スタッフや医療機関へ早めに相談してください。妊娠の可能性があり出血や強い腹痛がある場合も同様です。
女性の災害対策では、物資の数だけでなく、それを安心して使える環境も重要です。内閣府男女共同参画局のガイドラインでは、プライバシーを確保する間仕切りのほか、女性用品とともに防犯ブザーやホイッスルなども備蓄品として挙げられています。
平時のうちに自宅周辺の指定避難所を確認し、非常用持ち出し袋には生理用品、下着、不透明なゴミ袋、携帯トイレなど、自分に必要なものを加えておきましょう。月経用品には好みや体質による個人差があるため、支援物資だけを前提にせず、自分が使いやすいものを備えておくことがポイントです。
災害はいつ起こるかを正確に予測できません。月経中に避難する可能性も考えて、特別な準備として構えすぎず、普段使うものを少し多めに持つところから始めると続けやすくなります。