働く女性がつわりの時期を無理なく過ごすためのポイント

2026/8/11

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

つわりは仕事を続ける時期にも起こりやすい

妊娠初期には、吐き気、嘔吐、食欲の低下、胃の不快感、だるさなどのつわり症状が現れることがあります。厚生労働省の働く女性向け情報では、つわりは妊娠6週ごろから始まり、妊娠12週ごろには落ち着くことが多いとされています。ただし、始まる時期や症状の種類、程度、続く期間には個人差があります。原因についても十分には解明されていません。
仕事をしている場合は、通勤、勤務時間、職場のにおい、食事や休憩を取れる時間などが日々の過ごしやすさに影響します。見た目には体調の変化が分かりにくい時期でもあり、周囲に症状を伝えにくいと感じることもあるでしょう。
つわりの程度をほかの人と比べる必要はありません。仕事を続けられる程度の人もいれば、勤務方法の調整や治療が必要になる人もいます。その日の体調に合わせ、無理を重ねないことが大切です。

通勤や勤務中の負担を減らす方法を考える

朝の通勤時間帯に吐き気が強くなる、混雑した電車やバスで気分が悪くなる場合は、毎日同じ通勤方法を続けることだけにこだわらず、負担を減らせないか検討します。
厚生労働省では、妊娠中の女性労働者への対応例として、時差通勤、勤務時間の短縮、負担の少ない交通手段や通勤経路への変更、在宅勤務などを示しています。また、勤務中についても、休憩時間を長くする、休憩回数を増やす、補食できる時間を設ける、横になれる場所を用意するといった対応例があります。
職場によって利用できる制度や仕事内容は異なりますが、始業時間をずらすだけでも混雑を避けられる場合があります。長時間の立ち仕事や外回りなどが負担になっている場合も、できる範囲で仕事内容について相談してみましょう。
体調が比較的よい日に無理をして仕事を進め、その後に大きく体調を崩すこともあります。その日の調子だけではなく、勤務後の疲れ方なども含めて負担を考えることが大切です。

食事は一度にたくさん取ろうとしない

つわりがあると、普段と同じ時間や量の食事を取ることが難しくなる場合があります。日本産婦人科医会では、軽症の場合の対応として、少量ずつ回数を分けて食べる方法や、脂質を控えめにして炭水化物を取り入れる方法を示しています。
仕事中であれば、おにぎり、パン、クラッカーなど、そのときに食べやすいものを少量準備しておく方法があります。空腹になると吐き気が強くなる人もいるため、決められた昼休みだけに食事を集中させず、職場で可能であれば短い休憩時間に少量を取る方法も考えられます。
こども家庭庁も、妊娠初期につわりがあるときは、体調に合わせて食べられるものを取ることを案内しています。食事内容を完全に整えることにこだわりすぎず、症状が落ち着いてから食事の内容やタイミングを見直していきましょう。
水分についても、一度に多く飲むと吐き気が出る場合は少量ずつ試します。温度や種類によって飲みやすさが変わることもあるため、自分が受けつけやすいものを選びましょう。

職場への相談には母健連絡カードを活用できる

つわりがつらくても、上司や人事担当者にどのように説明すればよいか分からず、我慢して勤務を続ける人もいます。このようなときに利用できるのが、母性健康管理指導事項連絡カード、通称母健連絡カードです。
母健連絡カードは、医師などから受けた通勤緩和や休憩、勤務時間の短縮などの指導内容を、女性労働者から事業主へ伝えるためのものです。カードが提出された場合、事業主は記載された指導事項に応じて適切な措置を講じる必要があります。つわりや妊娠悪阻もカードで扱われる症状や診断として示されています。
口頭だけでは体調を説明しにくい場合は、妊婦健診の際に主治医へ仕事の状況も伝えて相談するとよいでしょう。例えば、通勤時に何度も吐き気が出る、勤務中に食事ができない、立ったままの仕事を続けるのが難しいなど、実際に困っている状況を具体的に伝えることがポイントです。
仕事を休む必要があるか、勤務時間をどの程度調整する必要があるかは、症状や仕事内容によって異なります。一人で判断せず、主治医と職場の双方に相談しながら対応を考えましょう。

市販薬やサプリメントを自己判断で増やさない

吐き気が続くと、市販の胃薬や吐き気止めを使いたいと感じることがあります。しかし、妊娠初期は赤ちゃんの器官が形成される時期であり、薬の使用には注意が必要です。日本産婦人科医会でも、妊娠初期には使用する薬剤に制限があることを示しています。
つわりに対しては、症状の程度に応じて医療機関で薬による治療が検討されることもあります。吐き気が仕事や生活に大きく影響している場合は、市販薬だけで対応しようとせず、産婦人科で相談してください。
健康食品やサプリメントについても、複数の商品を自己判断で重ねて使用することは避けます。妊娠中に使用している薬やサプリメントがある場合は、商品名や成分が分かるものを受診時に伝えると確認しやすくなります。

水分が取れない場合は仕事より受診を優先する

つわりの多くは妊娠の経過とともに軽くなりますが、症状が強くなると妊娠悪阻として治療が必要になることがあります。日本産婦人科医会では、高度な体重減少があり、水分摂取が困難な場合には重症妊娠悪阻として治療が必要になるとしています。脱水や栄養素の不足などにも注意が必要です。
水分をほとんど取れない、食べたり飲んだりすると繰り返し吐いてしまう、体重が大きく減ってきた、立って仕事を続けることが難しいほど体調が悪い場合は、次の妊婦健診まで我慢せず、かかりつけの産婦人科へ相談しましょう。症状によっては点滴などの治療が必要になることがあります。
また、妊娠初期の腹痛や性器出血には、つわりとは別の原因が隠れていることがあります。強い腹痛や出血などがある場合も、仕事による疲れだけと判断せず産婦人科へ連絡してください。
働きながらつわりの時期を過ごすときは、普段と同じ働き方を守ることより、体調に合わせて食事や休憩、通勤、勤務時間を調整することが大切です。必要な場合は母健連絡カードなども活用し、医師と職場に具体的な症状を伝えましょう。働き続けることと体を休めることを対立させず、その時期に合った働き方を選ぶことが、妊娠中の健康管理につながります。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

つわり(24) 妊娠初期(67) 妊婦健診(3) 妊娠中の食事(4) 妊娠中の薬(2) 働く女性(1) 妊娠中の仕事(1) 母健連絡カード(1) 妊娠中の通勤(1) 仕事と妊娠(1) 妊娠中の体調管理(1)