記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/8/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
月経がなくなってから時間がたった高齢女性に、下着やトイレットペーパーに血がついていることがあります。ごく少量で一度だけの場合でも、閉経後に性器からの出血がみられたときは婦人科で原因を確認することが大切です。出血の原因には、閉経後の女性ホルモンの低下に伴う腟の萎縮や炎症など比較的良性のものもあります。一方で、子宮内膜の病変や子宮体がんなどを除外する必要があるため、見た目の量だけで判断することはできません。国立がん研究センターがん情報サービスでは、子宮体がんで最も多い自覚症状として出血を挙げ、閉経後の出血や、おりものに血が混じって褐色になる程度の変化にも注意を促しています。出血が少ないから大きな病気ではない、痛みがないから問題ないと自己判断せず、受診につなげることが基本です。
高齢女性では、本人が性器からの出血だと思っていても、実際には尿道や肛門など別の場所から出血している場合があります。日本産婦人科医会は、不正性器出血の診察では出血の状態を確認するとともに、腟や子宮だけでなく尿道や肛門などにも異常がないか確認することが重要としています。本人や介護者が出血に気づいた場合は、無理に出血部位を特定しようとする必要はありません。いつ気づいたか、下着やパッドのどこに血がついていたか、鮮やかな赤色か褐色か、何回くらい続いているかなどを記録しておくと診察時の参考になります。排尿時の痛みや血尿、便に血がつく状態、外陰部の傷やただれなど、同時に気づいた症状も伝えましょう。介護を受けている女性の場合、本人の羞恥心に配慮し、複数人の前で詳しく確認するのではなく、必要な情報だけを静かな場所で尋ねることも大切です。
閉経後の出血があるときに、次の子宮がん検診まで待とうと考える人もいるかもしれません。しかし、自覚症状がない人を対象に行う検診と、すでに出血などの症状がある人が受ける診察は目的が異なります。国立がん研究センターがん情報サービスでは、閉経後に出血がある場合には、検診ではなく医療機関を受診するよう案内しています。婦人科では、出血の量や時期、過去の病気、服用している薬などを確認し、必要に応じて内診、超音波検査、子宮内膜の細胞や組織を調べる検査などが検討されます。どの検査が必要かは年齢や症状、既往歴によって異なります。高齢で診察台への移動が難しい場合や、認知症などで検査への不安が強い場合は、予約時や診察前に医療機関へ伝えておくと対応を相談しやすくなります。
閉経後の出血を診察するときは、現在使用している薬について伝えることも重要です。日本産婦人科医会は、不正性器出血の評価では薬の服用歴を確認する必要があるとしています。血液を固まりにくくする薬を使っている場合などは出血の程度に影響することがありますが、薬が原因だと思って婦人科の病気を除外せずに済ませることはできません。また、ホルモン補充療法を行っている女性では、治療方法によって出血が起こることがあります。日本産婦人科医会は、ホルモン補充療法中の不正性器出血についても、治療によるものと安易に判断せず、出血量が多い場合や持続、再発する場合には子宮などの病変を確認することが重要としています。自己判断で処方薬を中止せず、薬の名前や使用開始時期とともに出血について主治医へ相談しましょう。
検査で大きな異常が見つからなかった場合でも、その後も出血が続いたり、一度止まったあとに再び出血したりしたときは、改めて医療機関へ相談します。日本産婦人科医会の2026年の資料でも、閉経後に出血がある場合は、状況に応じて子宮内膜の組織検査や子宮鏡などによる再評価が必要になることが示されています。出血が大量で、立っていられないほどのめまいやふらつきがある、意識が遠のく、息苦しさがあるなど全身状態に急な変化がみられる場合は、通常の外来予約を待たず、速やかに医療機関へ相談してください。高齢女性では、本人が出血について話すことをためらったり、認知機能の低下によって症状を十分に説明できなかったりする場合があります。家族や介護職が下着やパッドの血液に気づいたときは、単なる皮膚の傷や痔と決めつけず、本人の尊厳に配慮しながら受診につなげることが大切です。閉経後の出血は、不安をあおるのではなく、原因を確認するための受診サインとして捉えましょう。