記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/8/12
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
昨日まで食べていたものを突然嫌がる、野菜だけ残す、日によって食べる量が大きく違うなど、子どもの食事に悩む保護者は少なくありません。幼児期は自分の意思がはっきりしてくる一方、食べ物の味やにおい、硬さ、見た目などへの好みも現れやすい時期です。
厚生労働省の乳幼児栄養調査でも、子どもの食事について、偏食やむら食い、遊び食べなどを困りごととして挙げる保護者がいることが報告されています。食事の悩みは特別なことではなく、成長の過程でみられる場合もあります。
一食で何をどのくらい食べたかだけを見るのではなく、数日程度の食事全体や身長、体重の増え方、元気に活動できているかなどを合わせて確認することが大切です。2025年版の日本人の食事摂取基準でも、必要なエネルギーや栄養素は年齢などによって異なることが示されています。毎食を理想どおりに整えようとするより、さまざまな食品に触れる機会を少しずつつくっていきましょう。
子どもが料理を残すと、あと一口だけでも食べてほしいと感じることがあります。しかし、口を無理に開けたり、食べ終わるまで席を立たせなかったりする対応は、食事そのものへの抵抗感を強くすることがあります。
苦手な食べ物がある場合は、一度食べなかったからと今後も食べられないと決めつけず、量や調理方法を変えながら食卓へ出してみます。大きな一切れではなく少量にする、煮る、焼くなど調理方法を変える、好きな料理と一緒に並べるなど、その子が受け入れやすい形を探します。
食べられなかったことを叱るより、食卓に座れた、料理に触れられた、においをかげた、少し口にできたなど、小さな変化を見ていくことも大切です。食事は栄養を取るだけではなく、家族と過ごしながら食べ物に慣れていく時間でもあります。厚生労働省が示してきた子どもの食育に関する考え方でも、子ども自身の食べたい気持ちを引き出し、楽しく食べる経験を重ねることが重視されています。
野菜をほとんど食べない、魚を嫌がるなど、特定の食品を食べないことが続くと栄養不足が心配になることがあります。そのようなときは、苦手な食品そのものを食べさせることだけにこだわらず、ほかに食べられる食品を確認します。
たとえば、一つの食材だけで必要な栄養をすべて取っているわけではありません。主食、肉や魚、卵、大豆製品、乳製品、野菜や果物など、食べられる食品を組み合わせながら食事全体を見ていきます。成長に必要なエネルギーやたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどの必要量は年齢によって異なるため、極端に限られた食品だけを食べる状態が続く場合には専門家へ相談することも大切です。
偏食が気になるからと、保護者の判断だけでサプリメントを多く使用することは避けます。特定の栄養素は、取り過ぎによる健康への影響にも注意が必要です。食べられる食品が非常に少ない場合や栄養面が心配な場合は、小児科医や管理栄養士などへ相談し、必要性を確認してから対応しましょう。
食事の時間になるとほとんど食べない場合は、食事内容だけでなく、その前の間食や飲み物も振り返ります。食事の直前まで菓子や飲み物を取っていると、おなかが空かず食事量が少なくなることがあります。
幼児期の間食は、大人のおやつとは意味が異なり、三度の食事だけでは補いにくいエネルギーや栄養を取る機会にもなります。そのため、だらだらと食べ続けるのではなく、時間や量をある程度決めて生活の中に組み込むことが大切です。食事の前後を含め、一日の流れを確認してみましょう。
また、食事中にテレビや動画を見続けたり、おもちゃで遊びながら食べたりすると、食事に集中しにくくなることがあります。食事の時間はできる範囲でほかの遊びと区切り、座って食べられる環境を整えます。時間が長くなりすぎた場合は、すべて食べ終わるまで待つことにこだわらず、家庭で一定の区切りをつける方法もあります。
食べない理由が好き嫌いとは限りません。食材が硬くてかみにくい、口の中でまとまりにくい、飲み込みにくいなど、食事の形が発達段階に合っていないこともあります。子どもの歯の生え方や、かむ力、飲み込む力には個人差があるため、年齢だけで食事の形を決めず、実際の食べ方を観察します。
日本小児科学会は、食品による窒息を防ぐため、月齢や乳歯の生え具合などに応じた食事を選び、一口に多く詰め込まないこと、よくかんで食べること、歩いたり遊んだりしながら食べないことなどを呼びかけています。特に小さな子どもでは、丸飲みしやすい食品や硬い食品などに注意が必要です。
苦手に見える食品でも、細かくする、軟らかく加熱するなどの工夫で食べられる場合があります。一方で、無理に口へ押し込むことは窒息の危険にもつながるため避けましょう。
好き嫌いがあっても元気に過ごし、身長や体重がおおむねその子なりの経過で増えている場合は、時間をかけて食べられる食品を増やしていけることもあります。一方、食べられる食品が極端に少ない、食事のたびに強く拒否する、かむことや飲み込むことが難しそう、食事中に頻繁にむせるなどの場合は、小児科などへ相談します。
さらに、体重が増えない、以前より減っている、身長の伸びが気になる、元気がなく活動量が低下している場合などは、単なる好き嫌いだけで判断しないことが大切です。こども家庭庁の児童福祉施設向け食事提供ガイドでも、身長や体重を発育曲線で継続的に確認し、増加不良などがみられる場合には医師への相談につなげることが示されています。
母子健康手帳などの発育曲線に身長と体重を記録すると、一回の測定値だけでは分かりにくい成長の変化を確認しやすくなります。
子どもの食事は、毎日同じように進むとは限りません。食べなかった一食だけで判断せず、食べられるもの、成長の様子、食事中の表情などを見ながら進めます。保護者が食べさせることに疲れている場合も含め、家庭だけで抱え込まず、乳幼児健診、小児科、自治体の栄養相談などを利用しながら、その子に合った食事の進め方を考えていきましょう。