記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/8/15
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
災害が起こると、道路や交通機関が使えなくなったり、医療機関や薬局が被災したりして、普段どおりに通院できなくなることがあります。自宅から離れた避難所で過ごすことになり、いつもの薬を持ち出せなかったという状況も考えられます。
厚生労働省は、人工透析を必要とする慢性腎不全やインスリン治療が必要な糖尿病をはじめ、高血圧、ぜんそく、てんかんなどの慢性疾患について、災害時にも治療を継続することの重要性を示しています。
体調が変わっていないように感じても、薬を急に中断すると病状に影響する場合があります。避難して食事量が減った、薬の残りが少なくなったといった場合も、自己判断で服用回数や量を変えるのではなく、医師や薬剤師などへ相談することが基本です。
災害への備えとして役立つのが、お薬手帳などの服薬情報です。普段飲んでいる薬について、薬の名前、用法・用量、何の病気の治療に使っているかを確認できるようにしておきましょう。注射薬や吸入薬を使用している場合は、製品名や使い方も分かるようにしておくと安心です。
さらに、治療中の病気、薬や食品のアレルギー、かかりつけの医療機関や薬局、緊急時の連絡先などを一枚の紙にまとめ、非常用持ち出し袋へ入れておく方法があります。子どもに持病がある家庭では、保護者が一緒にいない状況も想定し、学校や避難先で必要な情報を伝えられるようにしておくことが大切です。
スマートフォンに薬の一覧やお薬手帳を撮影して保存する方法もあります。ただし、充電切れや通信障害も考えられるため、紙とデジタルの両方で確認できるようにしておくと使いやすくなります。
持病の薬が少なくなった場合は、すべて使い切るまで待つのではなく、早めに避難所の医療スタッフや医療機関、薬局へ相談します。薬によっては急に中止することが望ましくないものや、体調や食事量に応じた調整を医療者が判断する必要があるものがあります。
厚生労働省では、災害時にマイナンバーカードや資格確認書、お薬手帳などを持参できない場合でも、本人の同意のもと、一定の条件で医療機関や薬局が薬剤情報などを確認できる仕組みを整えています。また、電子処方箋に対応した医療機関や薬局で登録された直近の薬剤情報については、マイナポータルから確認できる場合があります。
ただし、災害の状況や医療機関の設備によって利用できないこともあります。電子的な情報だけを頼りにせず、自分でも薬の情報を持っておくことが重要です。
必要な備えは持病によって異なります。糖尿病では、食事量や活動量が普段と変わることで血糖値が変動する場合があります。日本糖尿病学会では、2024年に災害時糖尿病診療マニュアルを改訂しており、災害時にも糖尿病治療を継続するための体制整備を進めています。
特にインスリンを使用している人は、災害時の薬の保管方法や、食事が取れない場合の対応について、普段の診察時に主治医へ確認しておくとよいでしょう。自己判断で注射を中止したり、大幅に量を変えたりすることは避けます。
透析治療を受けている人では、治療を続けられる施設を確保する必要があります。日本透析医学会も、患者向けに災害への備えに関する情報を公開しています。 ぜんそくの吸入薬、てんかんの薬など、日常的に使用する薬がある場合も、非常時にどこへ相談するかを主治医や薬剤師と話し合っておきましょう。
避難所では、周囲の人から持病があることが分からない場合があります。日常生活では問題なく過ごしている人でも、薬や治療食が必要だったり、医療機器の電源が必要だったりすることがあります。必要な支援がある場合は、受付時や巡回する保健師、医療スタッフなどに伝えましょう。
子どもの場合は、自分で病名や薬を説明することが難しいことがあります。ぜんそく、てんかん、糖尿病、重いアレルギーなどがある場合は、病名、薬、発作や体調悪化が起きたときの対応について家族が説明できるよう準備します。学校や保育施設で作成している緊急時の資料があれば、持ち出し袋にもコピーを入れておくと役立ちます。
治療に必要な電源や冷蔵保管など、一般的な避難所では確保が難しいものがある場合は、そのことも早めに伝えることが大切です。福祉避難所や医療機関など、状態に応じた避難先への調整が必要になることがあります。
避難生活では、睡眠不足、不安、寒暖差、食事や水分の変化などが重なります。そのため、普段安定していた持病の症状が変化する場合があります。
強い息苦しさがある、意識がもうろうとする、けいれんが長く続く、胸に強い痛みがある、急に手足が動かしにくくなる、冷や汗や震えなどを伴って意識状態がおかしいなど、急激な変化がある場合は、避難疲れとして様子を見続けず、速やかに救護所や医療機関へつなげてください。
持病がある人の災害対策では、薬を用意することだけでなく、自分の治療内容を他の医療者に伝えられるようにしておくことが重要です。薬や医療用品の残量、お薬手帳、連絡先を定期的に確認し、処方や治療内容が変わったときには防災用品の情報も更新しましょう。家族にも必要な情報を共有しておくことで、本人が説明できない状況での備えになります。