足腰が弱くなったときに見直したい生活習慣

2026/8/15

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

足腰の弱りは日常生活の小さな変化に表れる

年齢を重ねると、筋力やバランス能力などが少しずつ変化し、以前は問題なくできていた動作に時間がかかることがあります。椅子から立ち上がるときに手をつくようになった、階段を避けるようになった、歩幅が小さくなった、外出すると疲れやすくなったといった変化は、足腰の機能を見直すきっかけになります。
ただし、足腰が弱くなったように見える原因は筋力低下だけではありません。膝や腰の痛み、めまい、息切れ、低栄養、薬の影響などによって活動量が減っていることもあります。本人が年齢のせいと考えて動かなくなると、さらに筋力が低下するという循環につながることもあります。まずは、いつ頃から、どの動作が難しくなったのかを確認することが大切です。厚生労働省も、高齢者では個人差を踏まえ、可能な範囲から少しでも身体活動を増やすことを勧めています。

座っている時間が長くなりすぎないようにする

足腰の健康を考えると、運動の時間だけでなく、一日の中でどのくらい体を動かしているかも重要です。外出が減ると、テレビを見たり椅子に座ったりする時間が増え、立つ、歩く、物を運ぶといった日常の動作も少なくなります。
厚生労働省の身体活動・運動ガイドでは、高齢者に対して座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意することが示されています。特別な運動を始めることが難しい場合は、食事の後に食器を片づける、洗濯物をたたむ、家の中を移動する、庭やベランダに出るなど、普段の生活で体を動かす機会を減らさないことから始めてもよいでしょう。
一方、歩行が不安定な人に無理に立つことを勧めると転倒につながる可能性があります。手すりや歩行器を使っている人は、安全な移動方法について理学療法士や作業療法士、ケアマネジャーなどに相談することも大切です。

歩くだけでなく筋力とバランスを保つ運動を取り入れる

散歩や買い物などで歩くことは、身体活動を保つ方法の一つです。ただし、足腰の機能を維持するには、歩くだけでなく、筋力やバランス、柔軟性などを幅広く使うことも役立ちます。厚生労働省では、高齢者について、筋力、バランス、柔軟性などを含む多要素な運動を週3日以上、筋力トレーニングを週2から3日行うことを推奨しています。ただし、これはすべての人が同じ内容を行うという意味ではなく、体力や持病に合わせた調整が必要です。
日常生活では、安定した椅子からゆっくり立ち上がる動作や、支えのある場所で行うかかとの上げ下げなども足の筋肉を使います。運動習慣がなかった人は、急に回数を増やさず、続けられる範囲から始めます。運動中に強い息切れ、胸の痛み、めまい、ふらつき、関節の強い痛みが出た場合は中止し、医療機関へ相談しましょう。

食事量と体重の変化も確認する

足腰の弱りが気になると運動だけに目が向きやすいものですが、食事も重要です。高齢者では、食欲の低下、噛みにくさ、飲み込みにくさ、病気や薬の影響などによって食事量が減り、低栄養につながることがあります。低栄養はフレイルの要因の一つであり、筋力低下や活動量低下などと関連します。
最近ズボンが緩くなった、顔や腕が細くなった、食事を残すことが増えたといった変化があれば、体重も確認してみましょう。食事では、主食だけで済ませず、肉、魚、卵、大豆製品などのたんぱく質を含む食品を本人が食べやすい形で取り入れることが基本になります。ただし、腎臓病などで食事内容の調整を指示されている場合は、主治医や管理栄養士の指示を優先します。
急な体重減少や食欲低下が続く場合は、単なる老化と考えず、病気や口腔機能の問題などがないか医療機関へ相談します。

外出しにくくなった理由を確認する

足腰が弱くなった人に対して、もっと歩くよう勧めるだけでは改善につながらないことがあります。膝が痛い、転ぶのが怖い、途中でトイレに行きたくなる、人に歩く姿を見られたくないなど、外出が減った背景にはさまざまな理由があります。
本人の負担になっていることを確認したうえで、近所まで短時間出かける、家族と買い物に行く、デイサービスや地域の通いの場を利用するといった方法を考えます。家事や外出、社会参加も身体活動を増やす機会になります。
できないことを指摘するより、現在できている動作を続けることも重要です。本人が自分で立てる場合には必要以上に介助せず、安全を確認しながら本人の力を使ってもらうことが、生活機能を保つことにつながります。

急に歩けなくなった場合は早めに原因を確認する

数か月から数年かけて徐々に歩く力が低下している場合と、昨日まで歩けていた人が急に歩けなくなった場合では対応が異なります。急な変化があるときは、筋力低下だけではなく、感染症、脱水、薬の影響、骨折、脳卒中など身体の病気が関係している可能性があります。
特に、片側の手足に急な力の入りにくさがある、言葉が出にくい、ろれつが回らない、顔の左右差がある、突然の強い頭痛や意識の変化がある場合は、脳卒中など緊急性の高い病気も考えられるため、速やかな救急受診が必要です。
また、転倒後から股関節や腰を強く痛がり、立つことができない場合も、無理に歩かせず医療機関へ相談します。

まとめとして毎日の動きを少しずつ保つ

足腰の弱りを防ぐためには、運動だけを頑張るのではなく、座っている時間、外出、家事、食事、体重など生活全体を見ることが大切です。高齢者では身体機能に大きな個人差があるため、歩数や運動回数だけを目標にすると負担になることもあります。
まずは今できている生活動作を減らさず、可能であれば少しずつ体を動かす機会を増やします。歩行が不安定になった、転倒が増えた、体重が減った、外出できなくなったなどの変化があれば、主治医やリハビリ専門職、ケアマネジャーなどに相談しましょう。本人に合った方法で動ける環境を整えることが、足腰の機能と自立した生活を長く保つことにつながります。

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