介護疲れをためないために家族ができること

2026/8/15

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

介護疲れは心と体の両方に表れる

家族の介護が始まると、食事、排泄、入浴、服薬、通院、見守りなど、これまでなかった役割が日常生活に加わります。夜間に何度も起きる必要がある場合や、認知症による行動への対応が必要な場合は、介護者が十分に休めないこともあります。
介護疲れは、体が疲れているという感覚だけではありません。眠れない、食欲が落ちる、何をしても気持ちが休まらない、仕事に集中できない、本人への言葉がきつくなるといった変化として現れることがあります。
介護をしている家族が体調を崩すと、それまでの在宅生活そのものを続けにくくなる場合があります。そのため、介護者が休むことは介護を投げ出すことではなく、介護を継続するために必要な生活管理の一つとして考えることが大切です。

すべてを家族だけで行わない

家族介護では、自分ができるうちは自分で行おうと考える人も少なくありません。しかし、介護はいつまで続くかをあらかじめ見通すことが難しく、状態によって必要な支援も変化します。長期間続けることを考えると、一人の介護者がすべてを担う形には無理が生じることがあります。
要介護認定を受けている場合は、訪問介護、デイサービス、ショートステイ、福祉用具などを組み合わせて負担を調整できます。介護サービスを利用する際には、本人の支援だけでなく、家族がどの介助に負担を感じているかもケアマネジャーへ伝えることが大切です。
例えば、入浴介助が身体的に難しい場合はデイサービスでの入浴を検討する、夜間対応が続いている場合はショートステイを利用して休息日を作るなど、負担の大きい部分から外部へ任せる方法があります。自宅で行う介護をゼロにする必要はなく、家族にしかできないことと専門職に任せられることを分けて考えます。

介護者の休む時間を予定として確保する

疲れたら休むという考え方だけでは、介護では休息の時間がなかなか生まれない場合があります。本人の予定を中心に生活していると、自分の通院、散髪、友人との交流、趣味などを後回しにし続けることもあります。
そのため、デイサービスを利用する曜日には外出する、月に一度はほかの家族に任せる、定期的にショートステイを利用するなど、介護から離れる時間を先に予定へ入れる方法があります。休息時間は特別な用事のためだけに使う必要はありません。眠る、散歩する、自宅で一人で過ごすといった時間も休息になります。
介護者が休んでいる間も本人が安全に過ごせる仕組みを整えておくことで、休むことへの不安も軽減しやすくなります。利用できるサービスは要介護度や地域、本人の状態によって異なるため、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ相談します。

家族の役割分担は介助以外も含めて考える

兄弟姉妹や親族がいる場合でも、全員が同じように身体介護を担当できるとは限りません。遠方に住んでいる人や仕事、育児をしている人もいます。そこで、介護の分担を考えるときは、介助の回数だけを基準にしないことも大切です。
通院に付き添う、ケアマネジャーとの連絡を担当する、日用品を購入する、介護費用の管理をする、定期的に電話をするなど、離れていても担える役割があります。主な介護者だけが情報を抱え込まないよう、受診結果、薬、介護サービスの予定などを家族間で共有しておくことも役立ちます。
また、介護者によって本人への対応方法が大きく違うと混乱につながる場合があります。本人が一人でできること、介助が必要なこと、転倒などに注意する場面を家族や介護職で共有し、できるだけ同じ方針で支援しましょう。

仕事をしている人は両立支援制度を確認する

仕事をしながら介護をしている場合は、介護サービスに加えて職場の制度も確認します。2025年4月に施行された改正育児・介護休業法では、介護離職防止に向け、事業主に介護休業などを利用しやすい雇用環境の整備や、介護に直面した労働者への制度の個別周知と利用意向の確認などが求められています。
介護休業のほか、介護休暇、短時間勤務などの措置、所定外労働の制限、時間外労働や深夜業の制限など、状況に応じて利用できる制度があります。
介護のためにすぐ退職するのではなく、まず職場の人事担当者などに制度を確認し、介護保険サービスと組み合わせて生活を整えることを検討します。介護が長期化する可能性もあるため、仕事を続けながら支援体制を作る視点が大切です。

介護者自身の変化を相談のサインにする

睡眠不足が続いている、食事を取れない、持病の治療を後回しにしている、仕事や家事ができないほど疲れている場合は、現在の介護体制を見直す時期と考えます。また、本人への怒りを抑えられない、強い言葉を繰り返してしまう、介助することが怖くなっているといった場合も、家族だけで抱え込まず支援につなげることが大切です。
地域包括支援センターでは、高齢者が住み慣れた地域で生活を続けられるよう、保健医療や介護に関する相談を受け、必要な制度や専門機関へつなぐ支援を行っています。 すでにケアマネジャーがいる場合は、次の定期訪問まで待たず、負担が増えた時点で相談して構いません。
介護者自身に強い体調不良や抑うつ状態が続いている場合には、介護の相談とは別に、自分自身のかかりつけ医などへの相談も検討します。

まとめとして介護を続けられる仕組みをつくる

介護疲れをためないためには、介護者がさらに頑張るのではなく、介護の量そのものを調整することが重要です。デイサービスや訪問介護、ショートステイなどを活用し、家族内でも役割を分担して、一人に負担が集中しない仕組みを作ります。
介護者が定期的に休むことや、自分の仕事、健康、生活を維持することも、在宅介護を続けるうえで大切です。本人の状態が変われば必要な介護量も変わるため、以前決めたケアプランをそのまま続ける必要はありません。
疲労が大きくなってから支援を探すより、比較的余裕があるうちに相談先や利用できるサービスを確認しておきましょう。本人と家族の両方が無理なく生活できる状態を目指すことが、長期的な介護を考えるうえでの基本になります。

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