やけどで行う初期対応と家庭での予防

2026/9/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

身近な生活用品でもやけどは起こる

やけどというと、熱湯や火に触れる事故を思い浮かべることが多いかもしれません。しかし家庭内には、炊飯器や電気ケトル、暖房器具、調理器具、ヘアアイロンなど、触れるとやけどにつながるものが数多くあります。

調理中の鍋やフライパン、熱い飲み物、暖房器具などは、大人でも不注意や転倒によってやけどをすることがあります。また、乳幼児は興味を持ったものへ手を伸ばしたり、コードを引っ張ったりするため、大人が予想していなかった場所で事故が起こることがあります。身長が低いため、テーブルの上から落ちてきた熱い飲み物などが顔や胸へかかることにも注意が必要です。

国民生活センターは2024年、ヘアアイロンによる子どものやけどについて注意喚起しています。調査では、加熱部分が短時間で高温になり、電源を切った後も温度が十分に下がるまで時間がかかることが確認されています。子どものいる家庭に限らず、使用中だけでなく使用後の置き場所や保管方法にも注意することが大切です。

やけどをしたらできるだけ早く流水で冷やす

熱いものに触れた場合は、まず熱源から離れ、やけどした部分を流水で冷やします。消防庁では、やけどの応急手当として流水による冷却を案内しています。水ぶくれがある場合は、傷口を保護する役割があるため、意図的につぶさないことが大切です。

衣服の上から熱湯などをかぶった場合は、皮膚へ張り付いた衣服を無理にはがすと傷を深くすることがあります。一般的な熱によるやけどでは、衣服の上から流水をかけて冷却する方法があります。ただし、化学薬品によるやけどなどは対応が異なるため、原因物質がある場合は救急機関などの指示を受けてください。

広い範囲を長時間冷やすと、身体が冷えすぎることがあります。特に乳幼児や高齢者などでは体温低下に注意し、患部を冷やしながら顔色や震えなどの様子も確認します。氷や保冷剤を皮膚へ直接当てる方法は、冷えすぎによって組織へ負担をかける可能性があるため避け、流水による冷却を基本とするとよいでしょう。

家庭にある薬を自己判断で塗らない

やけどの直後に、家庭にある軟膏や消毒薬などを塗りたくなることがありますが、傷の深さや状態によって必要な治療は異なります。消防庁の応急手当に関する情報でも、やけどでは水ぶくれをつぶさず冷却し、深いやけどが疑われる場合には医療機関を受診することが案内されています。

皮膚が赤い程度に見えても、時間がたつと水ぶくれがはっきりする場合があります。冷却後は清潔なガーゼなどでやさしく覆い、こすらないようにします。粘着力の強いテープを傷のある皮膚へ直接貼ることも避けたほうがよいでしょう。

水ぶくれが破れた場合には、皮膚のバリア機能が低下して感染しやすくなることがあります。汚れた手で触らず、傷が広い、強い痛みが続く、赤みや腫れが増える場合などは医療機関へ相談してください。

顔、手指、関節周辺、陰部などのやけどは、範囲が小さくても機能や傷あとへの影響を考えて専門的な評価が必要になる場合があります。年齢にかかわらず、やけどの状態について判断に迷う場合は、皮膚科や形成外科、救急医療機関などへ相談するとよいでしょう。乳幼児の場合は、小児科への相談も選択肢になります。

広範囲のやけどや皮膚が白くなった場合は受診する

やけどの重症度は、面積だけでなく皮膚の深さや場所、年齢、全身状態などを含めて判断します。強い痛みがある場合や、広い範囲をやけどした場合には、速やかな医療機関の受診や救急要請が必要になることがあります。

一方、深いやけどでは痛みを感じる神経まで損傷し、かえって痛みが弱くなることがあります。皮膚が白っぽく変化している、黒く焦げているなどの場合は、痛みが少なくても軽いやけどとは判断できません。消防庁でも、皮膚が真っ白になったり黒くなったりする深いやけどでは受診を勧めています。

煙を吸い込んだ可能性があり、声がかすれる、咳が続く、呼吸が苦しいといった症状がある場合も緊急性があります。電気によるやけどや薬品によるやけども、皮膚表面だけでは損傷の程度が分からないことがあるため、医療機関へ相談してください。

おわりに やけどをしたら冷却し事故が起こりにくい環境をつくる

やけどをしたときは、熱源から離れたあと速やかに流水で冷やし、水ぶくれを無理につぶさないことが基本です。傷の状態が分からない段階で家庭にある薬を自己判断で重ねて塗ることは避け、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。

予防では、熱い飲み物をテーブルの端へ置かない、電気ケトルなどのコードを通路や手の届く場所へ垂らさない、使用後のヘアアイロンを安全な場所で冷ますなど、日常生活の中で熱源に触れにくい環境をつくることが重要です。

特に子どもや高齢者がいる家庭では、行動範囲や身体機能に合わせて環境を見直すことも事故予防につながります。家族構成や生活スタイルの変化に応じて、熱いものの置き場所や電化製品の使い方を定期的に確認しておくとよいでしょう。

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