高齢者の食事中の窒息を防ぐために 介助と見守りのポイント

2026/9/13

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

高齢者では食べ物による窒息に注意が必要

高齢者の食事介助では、食事量や栄養状態だけでなく、食べ物を安全に飲み込めているかを確認することが大切です。加齢や病気の影響によって噛む力や飲み込む力が低下すると、食べ物が喉に詰まりやすくなることがあります。
消費者庁によると、2024年の人口動態統計では、気道閉塞を生じた食物の誤嚥による死亡者のうち、65歳以上が約9割を占めています。餅がよく知られていますが、窒息につながる食品は餅だけではありません。パンなども含め、その人の噛む力や飲み込む力に対して食べにくいものには注意が必要です。
また、窒息と誤嚥は同じものではありません。誤嚥は食べ物や飲み物などが気管側へ入ることで、窒息は食べ物などによって気道が塞がれ、呼吸が妨げられる状態です。どちらも高齢者の食事では重要な注意点となります。
食事中に何度もむせる、お茶などの水分でむせる、食後に咳が増える、食べる時間が以前より長くなったといった変化は、摂食嚥下機能が低下している可能性を考えるきっかけになります。

食事を始める前に姿勢と体調を確認する

食事介助では、食べ物を口へ運ぶ前の準備も重要です。眠気が強い、呼びかけへの反応が鈍い、発熱している、呼吸が苦しそうといった状態で無理に食事を進めると、安全に飲み込みにくくなる場合があります。
まず本人が十分に目を覚ましているかを確認します。椅子に座れる人では、身体が左右へ大きく傾かず、安定して座れるよう姿勢を整えます。ベッド上で食事をする場合も、本人の身体状態に応じて上体の角度や頭の位置を調整します。
ただし、嚥下障害がある人に適した姿勢は一人ひとり異なります。一般的によいとされる姿勢をそのまま全員に当てはめるのではなく、嚥下機能の評価を受けている場合は、医師や言語聴覚士などから指導された姿勢を優先します。
義歯を使用している人では、義歯が正しく装着されているかも確認します。口の中が極端に乾いている場合や、食べ物が前の食事から残っている場合にも、食事前の口腔状態を整えることが役立ちます。

一口量を少なくして本人のペースを待つ

介助する人が急いでいると、本人がまだ飲み込んでいないうちに次の一口を運んでしまうことがあります。口の中に食べ物がたまると、本人が処理しきれず、むせや窒息につながる可能性があります。
一口量は、その人が無理なく口の中でまとめられる量にします。一口ごとに噛む様子や飲み込む様子を確認し、口の中が空になったことを確かめてから次へ進みます。本人が自分で食べられる場合は、必要以上に介助せず、できる動作を生かすことも大切です。
消費者庁では、高齢者が餅などを食べる場合、一口を無理なく食べられる量にし、ゆっくりよく噛んで飲み込むよう注意を呼びかけています。お茶などで食べ物を無理に流し込むことは避けます。
食事中に会話を楽しむことは大切ですが、食べ物が口に入った状態で話を促すと、飲み込む動作とのタイミングが合わなくなることがあります。本人が飲み込んでから声をかけるなど、落ち着いたペースを意識します。

むせが増えたときは食事形態を自己判断で変えない

むせるようになったからと、すべての料理を細かく刻めば安全になるとは限りません。細かくした食品が口の中でまとまりにくくなり、かえって食べにくくなる場合もあります。また、水分にとろみをつければすべての人が飲み込みやすくなるわけでもありません。
国立長寿医療研究センターでは、摂食嚥下障害について、検査や評価を行ったうえで、本人に適した食事形態、水分へのとろみの有無、食事姿勢などを検討することが重要としています。
食事中や食後のむせが増えた、水分を飲むたびに咳き込む、食べる量が減った、食事後に声が変わる、肺炎を繰り返すといった場合は、かかりつけ医などへ相談します。必要に応じて耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、歯科などにつながることがあります。
家族や介護職は、何を食べたときにむせたか、どの程度食べられたかなどを記録しておくと、専門職が状態を評価する際の参考になります。

窒息が疑われるときは速やかな対応が必要

食事中に突然声を出せなくなった、咳ができない、呼吸ができない、顔色が急に悪くなった、喉を手でつかむようなしぐさがみられた場合は、窒息を疑います。通常のむせとして様子を見続けず、速やかに救急要請などの対応を行うことが重要です。
窒息時の応急手当には背部叩打法などがありますが、本人の状態によって対応が異なるため、介護を行う家族や職員は消防機関などが実施する救命講習を受け、正しい方法を身につけておくと安心です。
窒息が起きなかった場合でも、食事中に強くむせた後から呼吸の様子がおかしい、咳が続く、顔色が悪い、意識状態が変わったといった場合は医療機関へ相談します。
安全な食事介助では、食べ物を制限することだけでなく、その人の食べる力を知ることが基本です。本人の楽しみをできるだけ保ちながら、姿勢、一口量、食事形態、介助のペースを整えていきましょう。

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