記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2026/9/15
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
亜鉛は、身体の中でさまざまな酵素の働きに関わる必須ミネラルです。たんぱく質や核酸の代謝、皮膚や粘膜の健康維持などに関わるほか、味覚を正常に保つためにも必要な栄養素です。
「日本人の食事摂取基準 2025年版」では、65歳から74歳の亜鉛の推奨量を男性9.0mg、女性7.5mg、75歳以上では男性9.0mg、女性7.0mgとしています。
亜鉛が不足すると味覚障害や食欲不振などがみられることがあります。一方で、味が分かりにくいからといって、必ず亜鉛不足が原因とは限りません。薬、口の乾燥、鼻や口の病気、全身疾患など、さまざまな要因が関係します。
高齢者では複数の要因が重なることもあるため、食生活だけで判断しないことが大切です。
亜鉛は牡蠣などの魚介類、肉類、卵、大豆製品など、さまざまな食品に含まれています。特定の食品だけを大量に食べるのではなく、主菜となる食品を日によって変えることで取り入れやすくなります。
肉が硬くて食べにくい人は、ひき肉や薄切り肉を使う、軟らかく煮込むなどの方法があります。魚や卵、豆腐など比較的食べやすい食品と組み合わせてもよいでしょう。
食事量の少ない高齢者では、朝食がパンとお茶だけ、昼食が麺だけといった食事が続くと、亜鉛だけでなくたんぱく質やほかのミネラルも不足しやすくなります。亜鉛を意識する場合も、まず主食、主菜、副菜を組み合わせることが基本です。
健康食品を利用する前に、普段の食卓に魚、肉、卵、大豆製品などがどの程度登場しているか確認してみることが役立ちます。
味を感じにくくなると、しょうゆや塩、砂糖などを以前より多く使うようになることがあります。本人はいつも通りの味に感じていても、家族が食べると非常に濃く感じる場合があります。
このような変化があるときは、単純に調味料を増やすのではなく、だし、酢や柑橘類の酸味、しょうがやしそなどの香りを利用します。料理の温度や食感を変えることで食べやすくなる人もいます。
味のおいしさは舌で感じる味覚だけで決まるわけではありません。厚生労働省の情報では、食べ物の風味には嗅覚、食感、温度、色、体調なども関係するとされています。
鼻づまりや嗅覚の低下があると、味が分からなくなったように感じることがあります。舌だけの問題と決めつけず、口や鼻の状態も確認します。
高齢者では唾液量が少なくなったり、薬の影響で口が乾きやすくなったりすることがあります。唾液には食べ物を口の中でまとめ、味の成分を感じやすくする働きがあります。
口が乾いている場合は、食事中に水分を取り入れる、パサつきやすい料理にはあんや汁気を加えるなどの工夫があります。ただし、心不全や腎臓病などで水分量の指示がある場合は、その指示を優先します。
舌の表面に汚れがあるからといって、強くこすれば味覚が改善するものではありません。日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会も、舌の表面に付いた舌苔をブラシなどで無理に取らないよう案内しています。
歯の痛み、口内炎、義歯の不具合などがある場合は、食事だけではなく歯科への相談も検討します。
味覚への関係から、亜鉛のサプリメントを自己判断で利用したくなることがあります。しかし、亜鉛は多く摂れば摂るほど味覚が改善するものではありません。
「日本人の食事摂取基準 2025年版」では、亜鉛の耐容上限量が設定されています。65歳から74歳では男性45mg、女性35mg、75歳以上では男性40mg、女性35mgです。これは通常の食品を意識して摂る際の目標量ではなく、過剰摂取による健康障害を防ぐための上限です。
亜鉛を長期間過剰に摂ると、銅の吸収が妨げられ、銅欠乏などにつながる可能性があります。消費者庁も、錠剤やカプセル状の健康食品は特定成分を過剰摂取しやすいとして注意を促しています。
治療中の病気や服薬がある場合は、利用前に医師や薬剤師へ相談してください。
味が分からない、以前と違う味がする、何も食べていないのに変な味を感じるといった状態が続く場合は、耳鼻咽喉科などへの相談を検討します。血液検査で亜鉛や貧血の状態を確認したり、味覚検査を行ったりする場合があります。
食事がおいしく感じられない状態が続くと、食事量の低下や体重減少につながることもあります。家族や介護職は、調味料の使い方だけでなく、残食が増えた、好物を食べなくなったなどの変化にも目を向けます。
急に味覚だけでなく、ろれつが回らない、顔や手足の動きがおかしい、意識状態が変化したなどの症状が現れた場合は、栄養不足として様子を見ず、速やかな医療対応が必要です。
味覚の変化では、亜鉛を含む食品をバランスよく取り入れながら、口腔状態、嗅覚、薬、病気など複数の可能性を確認することが大切です。