記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/14 記事改定日: 2019/9/20
記事改定回数:2回
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
自閉症スペクトラム障害(ASD:Autism Spectrum Disorder)は社会的相互作用、コミュニケーション、興味、行動に影響があらわれる病気です。でも、何となく言葉ではわかるけどイメージしづらいと思っている方も多いと思います。この記事では、年齢別に自閉症スペクトラム障害の特徴についてご紹介します。
自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder;ASD)は3歳くらいまでにあらわれるもので、以下のような特徴がみられます。
会話中に目を合わせることが苦手です。また、環境の変化を素早くキャッチすることが苦手なので、空気を読んだり、相手の気持ちを察したりすることができません。
言葉を話し始めるのが遅かったり、意味を理解することが難しかったりします。また、呼んでも反応しなかったり、反応しても相手が言った言葉をただオウム返しするだけだったりすることもあります。
自分の興味や関心があることに対するこだわりがとても強く、気が済むまで徹底的に調べ続けることがあります。また、毎日同じ行動をとり続けるので、予定外の出来事や初めての出来事に抵抗することがあります。
以下に、自閉症スペクトラム障害の特徴を年齢別に紹介します。
赤ちゃんが自閉症スペクトラム障害を抱えている場合、お母さんと視線を合わせようとしない傾向がみられます。また、抱っこも嫌がるので、赤ちゃんが泣きやむようにと抱っこをしてあげても、泣き止む気配がみられない、といったこともみられます。
1歳ぐらいになると、多くの赤ちゃんは表情が豊かになったり、手や声を使ってお母さんにして欲しいことを伝えようとしますが、自閉症の赤ちゃんの場合、1歳になっても表情が乏しかったり、名前を呼んでも反応しないといった様子がみられます。また、手や声を使って何かを伝えようとするのではなく、親の手を引っ張って何かを伝えようとします(この現象を「クレーン現象」と言われています)。
2歳ぐらいになると、自閉症スペクトラム障害の特徴的な症状がかなり出てきます。たとえば、周囲の子供と比べて言葉が遅れていたり、毎日同じものが食べたいと強く言い張ったり、いつもと違う行動をしようとするとパニックを起こしたりするといったことがみられます。
他人の感情を理解することが難しく、会話を始めたり、会話に正しく参加することが困難です。言語発達が遅れ、ジェスチャーや表情を使って、言語の欠如や言語力の遅れを補うことはありません。言語力の発達と並行して自分で言葉を組み立てることはなく、他人が話した言葉や表現を繰り返す傾向があります。他の子どもが同じごっこ遊びを繰り返し続ける一方で、ごっこ遊びをしない子どももいます。
また、同じ行動をするのが好きで、小さな変化でかんしゃくを起こすことがあります。興奮したり動揺したりしたときに、手をバタバタ動かしたり、指をねじったり、鳴らしたりする子どももいます。電気をつけたり消したり、ドアの開け閉め、物を一列に並べたりなど、繰り返しの動作をする子どももいます。
周囲に配慮できず、自分がやりたいことを好きなようにしてしまう傾向がみられます。自分の気持ちを伝えたり、人の気持ちや意図を汲み取ったり、想像することが苦手だったり、その場に応じた臨機応変な対応が苦手だったりします。
また、人と関わるときは何かしてほしいことがあるときだけで、それ以外の場面ではひとりでいることを好みます。
自閉症を抱えた子が思春期になると、抑揚がない不自然な話し方をしたり、雑談に苦手意識を感じたりします。また、自分が興味があることにのめりこむ傾向もみられます。
中には、自分が自閉症であることに気づかないまま大人になる方もいます。大人になってから診断を受けることに抵抗を感じるかもしれませんが、病院で診断を受けることで、自分自身はもちろん、家族も症状を理解できたり、必要なアドバイスや支援を受けることができます。また、自立した生活が送れるようになったり、自分のスキルや能力に合った仕事を見つける訓練などを行うサービスを受けることもできます。
もし、上記に挙げた特徴に当てはまるものが多いと感じる場合は、病院で診察を受けることをお勧めします。
自閉症スペクトラム障害の子供および若者は、認知(思考)、学習、感情、行動の問題が頻繁に起こります。たとえば、注意欠陥多動性障(ADHD)、不安、うつ病といった症状がみられます。
海外の調査ではありますが、自閉症スペクトラムの子供のうち、約70%は非言語IQが70未満で、そのうち50%の子供の非言語IQは50未満だった、というデータがあります。さらに、その全体で「重度の学習障害」がある人のうち、50%が自閉症スペクトラムだった、という統計も出ています。
自閉症の主な特徴である社会的コミュニケーションと相互作用の問題は、幼児期の初期に気づくことが多いです。特に、子供が保育園や学校に通いはじめるなど、子供を取り巻く環境が変わったときに気付きやすいです。子供に自閉症の兆候があると感じたら、専門の医師に相談してください。また、懸念事項について子供が通う保育園・幼稚園や学校と話し合うことも助けになります。
自閉症スペクトラム障害の原因は、正確にはまだわかっていません。ただ、遺伝的および環境的要因が複合的に関与しているものと考えられています。
なお、以前はMMRワクチンが自閉症スペクトラム障害の原因と考えられていましたが、世界中で行われた数多くの研究により、MMRワクチンと自閉症との間に関連性は見つかっていません。