記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/7/6 記事改定日: 2017/8/25
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
記事監修医師
東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック
二宮 英樹 先生
人生において誰しも一度は不安になったことはあるでしょう。しかし、度が過ぎる心配や不安は心身に影響を及ぼします。今回のテーマである過呼吸もそのひとつ。過呼吸自体はそれほど危険な症状ではありませんが、パニック発作などにつながる場合があります。
不安やストレスを抱えていると発作的に呼吸が早くなることがあります。そうすると血液中の二酸化酸素濃度が急激に下がります。血中の二酸化炭素濃度が低くなると脳の動脈が収縮し、体には酸素が十分にあるのに脳は酸素不足と認識するのです。そのため、さらに酸素を取りいれるために呼吸をたくさんしようとします。その状態が過呼吸です。
対処するには血液中の二酸化酸素濃度を高める必要があります。呼吸のペースをゆっくりと整えるように努めることや、心を落ち着かせることが大切です。ベンゾジアゼピンなどの抗不安薬を用いる場合もあります。よく聞く紙袋を口元にあてて呼吸をする治療法や低酸素血症など重篤な合併症を引き起こす可能性もあるため行わないようにしましょう。紙袋を使った治療法は、最近では推奨されていません。
パニック発作はパニック障害によって引き起こされる症状のひとつです。パニック発作が起こると、急な激しい不安や心配、肉体的症状に襲われます。発作ははっきりとした理由も無く、突然発生することが多いです。
以下の症状が突然あらわれた場合、パニック発作の可能性があります。
・動悸や激しい鼓動
・発汗
・震え
・過呼吸
・息苦しさ
・吐き気
・めまい
・指先の刺痛
・耳鳴り
発作は5~20分に渡り継続することがほとんどです。パニック発作に襲われる人はしばしば自身が心臓発作に襲われていると感じることがあり(鼓動が激しくなり乱れるため)、或いは死をむかえるのだとさえ感じる場合もあります。しかし実際に身体への危険は無く、発作によって身体状態を損なうことはありません。
パニック発作の症状は、身体が「戦うか・逃げるか」という状態になったときに発生します。 その際、身体はより多くの酸素を取り入れようとするために呼吸が荒くなります。また、体内ではアドレナリンなどのホルモンが分泌され、鼓動が早まり筋肉が張った状態になります。
パニック発作の数は、状態がどれほど深刻であるかによって異なります。毎月1〜2回の発作の人もいれば、1週間に複数の発作を起こす人もいます。ときには発作が非常に激しく感じることもありますが、それ自体は危険なものではありません。発作は基本的には物理的な害を引き起こしません。そして、パニック発作を起こした場合に、入院することはまずありませんので安心してください。
多くの精神疾患と同様に、パニック障害の正確な原因は完全にはわかっていません。 しかし、おそらく身体的・心理的な複数の要因に結びついていると考えられています。再発性の予期せぬパニック発作が続き、「またパニック発作が起きたらどうしよう」という不安が少なくとも1ヶ月間続く場合などは、パニック障害と診断されることがあります。不安やパニック障害の症状がある場合は、かかりつけ医の診断を受けるのが良いでしょう。
パニック障害の治療の目的は、パニック発作の数を減らし、症状の重症度を緩和することです。 主な治療方法は心理療法と投薬の2つです。
過呼吸やパニック障害そのもによって健康状態を損なうことはありませんし、治療法もあります。不安な場合は医師に相談し、治療や対処を行ないましょう。また、過呼吸やパニック障害についてあまり心配しすぎないことも大切です。