記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/6/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
養子を迎え、育てていく過程には、新しい家族が増えたことにワクワクすることもあれば、大きなストレスを伴うこともあるでしょう。
養子に迎えた子供の医療情報に関して、あらかじめ何を知っておけばよいのでしょうか? そして、どんなことが顕在化する可能性があるのでしょうか?
・その子供の胎児時の妊娠期間、出産時及び初期発育について
・その子供が生まれた家系の病歴・治療歴について
・その子供自身の病歴・治療歴について(虐待及びネグレクト(育児放棄)の経験、免疫・負傷および病気に関する記録)
・その子供の現在の身体的健康状態(視力、聴力、歯科医療など)
・その子供の精神的健康状態及び行動について(トラウマ《精神的外傷》及び喪失を含む)
これらすべての情報を得ることが困難な場合もあります。例えば、立てられた養子縁組の計画に不満がある場合には、その子供の肉親は子供についての情報を共有することを拒むことがあります。
また、肉親の行方がわからなかったり、実父が誰であるか分からないようなケースもあります。健康状態に関する情報を完全に集めきることができないと、その子供の抱える問題点を理解できずに将来に起こり得る事態を事前に防ぐことが難しくなってしまうこともあります。
養子として引き取られた子供には、子供自身の体験に起因する、摂食に関する不安事項がしばしば見られます。それには、以下のようなものがあります。
・過食
・食べ物の貯め込み
・食べ物の窃盗
・特定の食べ物を食べることに伴う困難(固形物や特定の食感をもつものなど)
例えば、充分な、あるいは定期的な食事を与えてもらえなかった子供は、養子として引き取ってもらった後でも、過食や食べ物の貯め込みといった行動を引き起こすことがあります。
これは、その子供にとって必ず次の食事が提供されると信じることができないことから生じるものです。
4人の養子を持つある人は、次のようなアドバイスをしています。
・落ち着いた食事の時間を過ごせる環境を整え、定期的な食事のルーティンを設定してください。
・その子供が好むものを少量与え、徐々に新しい味・食感のものを取り入れていくようにしてください。
・子供に無理に全部食べきらせようとはしないでください。また、その一方で、食べることにトライしてほしいと思っていることを伝えてあげましょう。
・以前のトラウマの記憶を呼び起こす引き金となりそうな食べ物に気をつけてください。
養子として迎えてくれる家族を必要としている子供の中には、複雑な疾患を抱えている子供もいます。
例えば、脳性小児まひ、嚢胞性線維症、ダウン症、胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)を抱える子供の場合には、子供に必要なものをそろえることや、子供が必要とするサービスを確実に受けられるように環境を整えてあげることができなくてはいけません。
また、子供の中には、身体的・医学的な問題以外にも、ネグレクトや虐待によって引き起こされたトラウマを持っている子供もいるので、気を配る必要があります。
新しい家族を迎える前は楽しみのほうが大きいかもしれません。しかし、子供のバックグラウンドはさまざまであり、またそこまでの人生もさまざまです。そして、新しい親がその詳細な情報を入手することは難しいのです。
子供達がよりよい人生をおくれるように、そして養子となった子の、心も体も充分なケアができるように、今回のコラムを活用してください。