記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/7/11
記事監修医師
前田 裕斗 先生
日本では100人に3~7人と、年々患者数が増加しているうつ病。いわゆる“心の病気”と分類されていますが、その原因についてはあまり知られていません。そこで今回は、うつ病及びその前兆と言われている自律神経失調症の発症に深く関わっているストレスについて見ていきましょう。
うつ病は、精神疾患の中でも気分障害と分類されている疾患のひとつです。「憂うつである」「気分が落ち込んでいる」などの、抑うつ状態だけが起こっている状態を指します。過度のストレスや様々な理由から脳の機能障害が起きてしまい、脳がうまく働かなくなることで、ものの見方が否定的になり自分がダメな人間であるかのように感じてしまうことが特徴です。そのため普段なら乗り越えられるようなストレスもよりつらく感じてしまうため乗り越えられず、さらに落ち込む・・・という悪循環が起きていきます。
うつ病は環境のストレスなどが引き金になる場合と、原因となることがはっきりしないまま起こる場合があります。
ストレスの原因がはっきりしないタイプのうつ病では、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質の働きが悪くなっていると考えられていますが、まだ十分に実証されているとは言えません。そのため、セロトニンやノルアドレナリンを単純に体内で増やせばうつ病にはならないというわけではありません。
特定の薬剤がうつ状態を引き起こすという報告があります。たとえば、うつ状態を起こす薬剤として知られているもののひとつがインターフェロン(IFN)です。IFNによるうつ状態の原因は、血液の中からわずかに脳内に移行したIFNの作用、副腎皮質や甲状腺を介する作用、ドパミンやインターロイキンなどに関連する作用などが複雑に働いていると言われています。その他には、GnRHアナログという、一時的に閉経と同じ状態にしてしまうような薬も、うつ状態を引き起こす可能性があります。
一方、休みの日には比較的元気であるなどといううつ状態の場合は、性格面の影響が大きいことが多く、神経伝達物質の影響はそれほど大きくはないと考えられます。
“ストレス”と聞くと、仕事や人間関係などの精神的なものを思い浮かべがちですが、うつや自律神経失調症(自律神経の交感神経と副交感神経の働きが過剰あるいは不足することで起こる体の不調のこと。うつ病の前兆と考えられている)の原因となるストレスはそれだけではありません。ここでは、その4つのストレスについて詳しく見ていきましょう。
ある出来事に対して「この出来事は自分に対してマイナスである」と感じることです。代表例として、仕事での失敗、人間関係のこじれ、大切な人を喪失した体験などが挙げられます。
これは主に体のゆがみのことです。
体がゆがんでいると、あなたが意識しているかしていないかに関わらず、その情報が脳に伝わってストレスを感じます。うつや自律神経失調症の原因に関係すると考えられている体のゆがみとして、主にあご・全身の筋肉・背骨・骨盤などが挙げられます。実際にうつ病や自律神経失調症の人は、体がゆがんでいる場合が多いと言われています。
これは栄養不足であることを指します。
ある栄養素が過剰または不足していると、その情報が脳に伝わることでストレスを感じるのです。うつ病や自律神経失調症の原因となりやすい栄養素と、反対にうつや自律神経失調症になりにくい栄養素があります。また、化学物質や匂いで感じるストレスも化学的ストレスと呼ばれます。
文字通り、寒すぎることや暑すぎること、湿度が快適でないことなども、ストレスになり得ます。加えて、気圧の変化などもストレスの原因になると考えられていますので、天気が悪いということもこれらのストレスに分類されます。
この温度と湿度のストレスそのものがうつ病や自律神経失調症の原因になることはあまりありません。しかし、既にうつ病や自律神経失調症の症状が現れている人にとっては、状態を悪化させてしまう要因になる可能性があるので注意しましょう。
「うつ病=精神的なストレスが原因」というイメージが強いかもしれません。しかし実際は、脳内の神経伝達物質の働き、薬剤に由来するもの、性格上の問題、また体のゆがみ・栄養不足・天候や湿度などにも左右されると考えられています。もし、うつ病及び自律神経失調症を患っている人が周囲にいれば、その人にかかっている負荷は何であるかを見極め、それらを軽減してあげることが改善への近道と言えるでしょう。