記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/8/10
記事監修医師
前田 裕斗 先生
肺炎は、毎年世界中で何百万人もの人に影響を及ぼしているといわれています。肺炎はワクチンや生活習慣の見直しなどで予防可能な病気であり、通常は治療することもできます。では、肺炎ワクチンは、どのような人が受けるべきで、どのような種類や注意点があるのでしょうか。
今回は、肺炎のワクチンについて解説します。
肺炎とは、あらゆる世代の人に軽度から重度の病気を引き起こす恐れがある肺の感染症です。肺炎の一般的な兆候として、咳、発熱、呼吸困難があります。世界的にみると、肺炎によって、毎年およそ100万人の5歳未満の子供たちが命を落としています。これは、HIV感染、マラリア、または結核などの感染症による死亡数よりも多いです。 しかし、肺炎はワクチンや適切な治療(抗生物質や抗ウイルス薬など)で予防することができます。(以下ワクチンとは肺炎球菌ワクチンのことを指します)
ワクチン接種が必要な人は以下のとおりです。
免疫システムは以前ほど機能していません。肺炎感染症を撃退するのは難しいでしょう。65歳以上の高齢者は全員、ワクチン接種を受けるべきです。
心臓病、糖尿病、肺気腫、喘息、またはCOPDなどの慢性閉塞性肺疾患を抱えていると、免疫システムが弱くなり、肺炎にかかる可能性が高くなります。化学療法を受けている人、臓器移植を受けている人、HIVやエイズを患っている人も同様です。
長期間間喫煙していた場合、肺の内部を覆って病原菌をろ過する機能を担う小さな毛が損傷を受けます。この毛が傷つくと、悪い病原菌を食い止めることができなくなります。
大量のアルコールを摂取すると、免疫システムが弱くなる可能性があります。白血球(感染と戦う)が、健康な免疫システムを持つ人と同じように働きません。
人々は手術や重症の病気を乗り越えています。病院のICU(集中治療室)にいて、人工呼吸器で呼吸を補助してもらう必要がある場合、肺炎の危険性があります。大手術を受けたばかりの場合、または重傷から回復している場合も同じことが言えます。病気や怪我のため、あるいは手術で回復しつつある場合、免疫システムが弱っているため、元気なときと同じように病原菌と戦うことはできません。
すべての人が肺炎球菌ワクチンを接種する必要はありません。18〜64歳の健康な成人であれば、通常ワクチンを摂取しなくても問題ないでしょう。また、ワクチンの成分にアレルギーがある場合は接種を避けましょう。はっきりしない場合は、医師に相談しましょう。
インフルエンザのように、肺炎の季節といったものはありません。あなたと医師が肺炎ワクチンを必要としていると判断した場合、1年中いつでも接種することができます。インフルエンザの季節であれば、違う腕に接種するようにすれば、インフルエンザワクチンと同時に肺炎ワクチンを接種することができます。
肺炎のワクチンは2種類あります。どちらのワクチンも、すべての肺炎を予防することはできませんが、30以上の一般的で重症なタイプの肺炎に予防効果が期待できます。そのため、肺炎ワクチンを必要とする人は、両方のワクチンを接種すべきという考え方もあるようです。ワクチンを両方接種する場合は、最初にPCV13を接種した後、1年以上経ってからPPSV23を接種します。
PCV13は、肺炎の原因となる最も重症な13種の肺炎球菌に感染するのを防ぐことができます
PPSV23はさらに23種類の肺炎球菌を防ぎます。
ワクチンには、病気の原因となる実際の細菌ではなく、肺炎菌の抽出物だけを含んでいます。そのため、 ワクチン接種が原因で肺炎を発症することはありません。しかし、中にはワクチンによって以下のような軽度の副作用が表れることがあります。
・注射をした周辺の腫れ、痛み、または赤み
・軽度の発熱
・虚弱または過敏症
・食欲減退
・筋肉痛
肺炎ワクチンを接種した人のうち、1%未満にこのような副作用がみられます。アレルギー反応はさらに稀です。
肺炎のワクチン接種のスケジュールをどのようにしたらいいか分からない場合は、医師に相談するようにしましょう。ワクチン接種が必要な高齢者などはワクチン接種をし、特にワクチンを必要としない人も、日常からできる予防対策に取り組むように努めてください。