難聴になったらどんな治療を行うの?―難聴の治療法について

2017/7/11

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

中高年になって難聴に悩まされる人は多いですが、若くても鼓膜の損傷や病気などにより難聴になる人がいます。難聴は原因によって治療法が異なり、原因によっては根本的な治療が難しいものもあります。

この記事では難聴に対して行われる治療についてくわしく解説していきます。

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難聴の治療は原因によってさまざま


耳が聞こえにくくなる原因は大きく分けて二つあります。一つは外耳もしくは中耳という音の伝導路の異常が原因で起こる伝音性難聴で、もう一つは内耳もしくは脳に音を伝達する神経の損傷によって起きる感音性難聴です。伝音性難聴は、一時的な症状であることも多く、治療で完治が期待できます。例えば、耳の中に垢等の異物があり聞こえにくくなっているときは吸引機や耳かきで取り除くことができますし、細菌による感染で起きた難聴は抗生物質で治療できることもあります。鼓膜の損傷や、耳の骨の問題、滲出液の排出は手術で回復が見込まれるケースも多いです。

一方で、神経の損傷や内耳、脳が音波を正常に検知できないことなどが原因で起こる感音性難聴の場合は、根本的な治療が難しく一生治らない場合もあります。このような完治が難しい、もしくは治療が長期にわたる難聴と向き合っていくために、今日では補聴器に頼ることが多くなっています。その他に聴力補助装置を埋め込む手術を行う場合もあります。

難聴の治療―補聴器


補聴器はマイクで拾った周囲の音を増幅器で大きくし、より音を聞き取りやすくしてくれる補助装置です。ただし補聴器はあくまで補助装置で、聴力自体を取り戻してくれるものではありません。そのため、重度の難聴患者や特定の症状がある患者には適さない場合があります。耳鼻科医は、患者それぞれの状態に合わせて補聴器の使用をアドバイスしてくれるでしょう。

補聴器を購入する際は、専門店の販売員と相談しながら、症状や耳の形状に合った補聴器を選びましょう。最近の補聴器は小さく目立たないものが多く、耳の穴に完全に収まるものもあります。補聴器の購入後は、機器の作動具合を点検してもらうため定期的に専門店を訪ねましょう。もし補聴器を使っていて音のひずみや耳の中の細菌感染を繰り返すようであれば、それは補聴器そのものの問題ではない場合もあります。耳鼻科医に相談し、自身の症状との関連を診察してもらいましょう。

難聴の治療―外科手術


外科手術で補聴器具を耳の中に埋め込み、音の振動を内耳に伝わるようにすることができます。手術には以下のようなものがあります。

人工中耳

中耳の骨の1つに、小さな機器を取りつけることで、中耳の骨を直接動かして強い音の振動を内耳に伝えることが可能になります。手術の種類によってはハウリングを外さなくてもプールやお風呂に入ることができるようになります。

人工内耳は感音性難聴の治療にも使われることがあります。

骨固定型補聴器

内耳に音を伝達する骨に補聴器を取り付ける手術です。この手術は片耳が難聴である人や、外耳道の形に問題がある人、感染症を長く患った結果難聴になった人に奨められる場合があります。

人工内耳

内耳に大きな損傷があると高性能な補聴器でも音がうまく聞こえないことがあります。そのときは人工内耳を取り付けるよう奨められる場合があります。人工内耳は体外のマイクと受信機で受け取った情報を、手術で内耳に埋め込んだ電極で受信し、聴覚神経に直接音の信号を送るシステムです。人工内耳はろう者や重度聴覚障害を持つ成人に対しても有効な手術とされています。

おわりに:難聴の治療は症状の進行度合いや原因によって大きく異なる

難聴の中でも伝音性難聴の場合は、原因によっては耳鼻科での簡単な治療で解決する場合がありますが、感音性難聴の場合は治療が難しかったり、治療が長期にわたったりする場合があります。難聴の治療には補聴器が使われることがありますが、最近は補聴器も小型化、高機能化しており聴力の補助に大いに役立ってくれます。症状によっては外科手術という選択もありますので、難聴で悩んでいる方は、医師と相談しながら、自分に合った治療方法を選択するようにしましょう。

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