記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/2/17
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
子どもに学習障害(LD)があるといわれたとき、親はどうすればいいのでしょうか。LDの診断は難しく、どうしてLDになったのか医師でさえわからないこともあります。しかし、必要なサポートを受けることで子どもの能力やニーズを評価してあげることができます。
学習障害(LD)は、出生時にみつかる場合と、大きくなるまでわからない場合があります。出産前後にダウン症候群などの先天性の疾患がみつかってLDと診断された場合は、将来子どもの発達にどんな影響があるのか正確にはわからないでしょう。
小児科医であるマーティン・ワード・プラット博士は「いちばんの問題は、LDは早期に診断するのがとても難しいことです。発達時にその兆しはほとんどありません。2歳になっても子どもがことばを発しない場合はLDに関連があるかもしれませんが、はっきりとした確証ではありません」といっています。
子どもの障害の程度はその子が話したり歩いたり、文字を読んだりする年齢になるにつれてだんだん明らかになり、出生時に診断されていない子どもの場合LDだとわかるまでに時間がかかることがあります。また知的機能(認知能力)は、5歳以上の子どもをテストすることでのみ測定できるため、これらの障害をもつ子どもの大半は、学校に通い始めたときにようやく診断でき、ほとんどのLDは5歳で明らかになるといわれています。
LDと診断されても、子どもの将来にどのような影響を及ぼすのかを説明するのは難しく、今、親ができることは子どもにどのようなサポートが役立つのかを知ることです。LDと診断されたら、まず小児科医や地域の「LD児をもつ親の会」などに相談されるのがいいでしょう。
「発育遅延」ということばは、子どもが期待通りに成長していない状態を表すときに使われることがあります。発育遅延自体はLDの診断結果ではありませんが、子どもがLDと診断されるには、以下のようなものが挙げられます。
・どのくらい発達が遅れているのか、どの部位が遅れているのか
・発達の遅れがみられない部位はあるか
・遅れているのは子どもの背景が影響しているかもしれないこと(障害とは関係ない理由で病院に長期間入院していた、など)
・潜在的な病状が、発達の遅れを説明できる可能性はあるか
・発達の遅れは、家庭での育て方が悪かったり、不適切な刺激を受けていることが原因ではないか
ほとんどの親は、子どもは健康で正常に発達するものだと思っています。そのため自分の子どもがLD児であると聞いただけでショックを受け、診断を受け入れることができないかもしれません。
子どもに何が必要か、遠慮なく何でも医師に質問してください。子どもができることをできるだけ多くみつけましょう。医師、看護師、サポートグループまたは友人や家族と話すことは、気持ちを落ち着かせるために役立つでしょう。同じ境遇をもつほかの家族の話やカウンセリングは、有益なサポート情報となります。
「児童福祉法」には、障害をもつ子どもを含めたすべての子どもを評価する義務があると明記されています。福祉サービスや発達障害のある子どものための関連機関などの具体的な教育と医療を特定し、これらを満たすための行動計画を作り実用的なサポートを含むケア、財政問題、親や介護者といったさまざまな側面からサポートが受けられます。
たとえば、以下のような、日常生活すべての面について考えてみてください。
・家庭で子どもの世話をする(たとえば授乳や入浴)
・乳母車や車で子どもを外に連れていく
・子どもを保育園や学校に連れて行く
・赤ちゃんや幼児のコミュニティ活動に参加させる
住んでいる地域の福祉課などでは、必要に応じて自宅での援助やサポートの情報を提供してくれるでしょう。
障害が何であれ、親としての役割を果たすのに役に立つサポートを受ける権利をもっていることを忘れないでください。発達の遅れは必ずしも重要ではありません。かのワード・プラット博士も「歩くのが遅い子どもがいれば、発達が遅れているようにみえるかもしれません。でも親がもっとゆっくり歩いていたら、それは遺伝である可能性があるのです」といっています。
ゆっくりと子どもに向き合っていきましょう!