心的外傷後ストレス障害(PTSD)は何が原因?
2017/3/3
心外傷後ストレス障害(PTSD)は、非常に強いストレス、恐怖または悲惨な出来事の後、または長期のトラウマ的出来事を経験した後に発症する病気です。離婚、就労の喪失、試験の不合格など、単に動揺している程度では、そのストレスがPTSDに発展することは通常ありません。
PTSDについて
PTSDは、重度のトラウマ的経験を持つ3人に約1人に割合で起こりうるとされていますが、一部の人がなぜ症状を発症し、他の人がなぜ発症しないかという理由は定かではありません。ただ、PTSD発症の可能性を高める要因とみられるものがあるようです。
例えば、過去にうつ病や不安を抱えていたり、家族や友人から多くの支援を受けていない場合はトラウマ的出来事の後にPTSDを発症しやすくなるとされています。
また、PTSDに関与する遺伝因子も存在する可能性も考えられています。例えば、精神病のある親を持つことは、PTSDを発症する機会を増やすと言われています。
PTSDにつながるとされている出来事の種類は次のとおりです。
・大きな交通事故
・性的暴力、強盗などの暴力的な人身虐待
・長期にわたる性的虐待、暴力、または重大なネグレクト
・暴力的な死の目撃
・軍事戦闘
・人質にされる
・テロ攻撃
・洪水、地震、津波などの自然災害
・生命を脅かす病気と診断される
・近親者または友人の突然の死亡や重傷
考えられる原因
PTSDを発症させる原因は明確ではありませんが、可能性としていくつか挙げられています。
生存メカニズム
可能性として考えられるのが、PTSDの症状は更なるトラウマ的経験から生き残るための本能的なメカニズムの結果であるということです。
たとえば、PTSDの経験を持つ多くの人々が起こすフラッシュバック(トラマトなった記憶が、突然かつ非常に鮮明に思い出されたり、同様に夢に見たりする現象)は、出来事についての詳細を考え、もう一度起こった際に、よりよい対応ができるように考えさせるために起きるのかもしれません。
しかし実際には、トラウマとなった出来事から踏み出すことができないため、現実には非常に役に立たないものです。
アドレナリンレベル
研究によると、PTSD患者には異常なレベルのストレスホルモンがあることが示されています。通常、危険に曝されると、体内の反応を引き起こすアドレナリンなどのストレスホルモンが体内で生成されます。この反応は、「戦うか逃げるか反応」として知られており、感覚を弱め、痛みを鈍くするのに役立ちます。
PTSDの人は危険がない場合でも、大量の戦うか逃げるか反応ホルモンを体内で産生し続けることが判明しています。これは、PTSDを持つ人が体験した、麻痺した感情と過覚醒に対する反応ではないかと考えられています。
脳の変化
PTSD患者は、感情処理に関与する脳の部分が脳スキャンで通常とは違うように見えます。
記憶と感情を司る脳の一部分は、海馬として知られています。PTSD患者においては、海馬の大きさが通常より小さく見えます。脳のこの部分の変化は、恐怖や不安、記憶障害やフラッシュバックに関連していると考えられています。
うまく機能しない海馬は、フラッシュバックや悪夢が適切に処理されるのを妨げる可能性があるため、そうした不安は時間の経過と共に減少しません。
PTSDの治療により、記憶の適切な処理をもたらし、時間の経過とともに、フラッシュバックおよび悪夢が徐々に消滅していきます。
おわりに
東日本大震災や熊本大地震の被災者の方々にも、PTSDを発症されている方がたくさんおられます。日常を生きる中で、災害や事故に巻き込まれる可能性は十分ありえます。自分の心の状態、そして周囲の人の心の状態には敏感になっておく必要がありますね。