記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/24 記事改定日: 2018/4/9
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
カンジダ症は、身体のさまざまな部位に影響を与え、患者の健康状態に応じて局所的な感染症または抵抗できないほどの病のいずれかを引き起こす可能性があります。
感染予防や再発防止のためには、発症の原因をきちんと理解しておくことが重要です。
今回はカンジダ症の原因について解説していくので、生活改善に役立ててください。
カンジダ症は、カンジダ菌という真菌の過増殖によって引き起こされます。カンジダ菌は、消化管および尿路に生息する常在菌です。
免疫系と善玉菌が正常に機能している健康な状態であれば、カンジダ菌の増殖は制御されるため増えすぎることはなく、害が起こることはありません。しかし、様々な内的および外的要因により正常な環境が保てなくなると、カンジダの過増殖を引き起こす可能性があります。
以下は、カンジダの過増殖の要因です。
抗生物質はカンジダ菌を制御する働きをもつ善玉菌の数を減らします。3人に1人の女性は、広範囲の抗生物質を服用中または服薬後に外陰腟カンジダ症に罹りやすくなります。抗生物質と同時に乳酸菌のようなプロバイオティクスを摂取しても、抗生物質による外陰腟炎は予防できません。
副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、抗炎症薬、化学療法薬、制酸薬など長期間使用されている医薬品。
AIDsや悪性腫瘍などの病気は、免疫システムを弱め、カンジダ症の発症リスクを高めます。また、加齢により免疫系が弱くなることもあります。
糖尿病患者は、特に血糖値がうまく管理されていない人は、カンジダ症を起こしやすい傾向があります。血中および尿中の糖が高い状態が真菌の増殖を促進するといわれています。
ホルモン異常は、月経、妊娠、糖尿病または避妊薬(通常は摂取の最初の3ヶ月)または甲状腺疾患の結果です。腟カンジダ症は、エストロゲンレベルの上昇に関連していると考えられています。
生涯にわたって全女性の約75%が、閉経前に少なくとも1回は腟カンジダ症に感染する可能性があるとされ、その内45%の女性が2回以上再発するといわれています。ストレス、不健康な食事、睡眠不足、病気などは、腟内イースト菌感染を起こりやすくする原因となります。
性感染症に分類されていませんが、特に性的に活発になった若い女性(20歳から40歳)にカンジダ症がよくみられます。また、出産時に腟カンジダ症がある場合、乳児の喉や消化管にカンジダ症が出ることがあります。
過度のアルコール消費や特定の化学物質によって、共生(友好的)と病原性(病原性)細菌との正常な腸内細菌バランスが妨げられると、イースト菌感染が起こりやすくなります。
真菌感染症はしばしば、湿った温かい環境が真菌の成長を促す場所に発達します。湿った温かい環境に当てはまる主な領域として、指とつま先、爪、性器と皮膚のひだが挙げられます。このような場所での発症は、特に糖尿病患者に多く見られます。
妊娠中は様々な変化が起こりやすいものです。
特に、妊娠中はホルモンバランスが大きく変化します。妊娠中に増加するホルモンには、エストロゲンとプロゲステロンがありますが、エストロゲンは、腟内にカンジダの餌となるグリコーゲンという物質を多く産生する働きがあり、カンジダが増殖しやすい環境となります。また、プロゲステロンは、体温を上げる働きがあり、外陰部がカンジダの増殖に適した高温で多湿の状態となりやすいのです。
また、妊娠中は多くのストレスや疲れが溜まりやすく、免疫力も低下しやすいため、カンジダを発症しやすくなります。
このように、妊娠中は様々な変化によって腟カンジダになりやすくなりますが、妊娠中に腟カンジダを発症すると、出産のときに赤ちゃんに感染してしまうことがあります。抵抗力の弱い赤ちゃんはカンジダに感染すると、肺炎などの重篤な合併症を起こすこともあるので、妊娠中の腟カンジダは決して放置しないようにしましょう。
カンジダは性行為でうつることがあります。
カンジダは女性だけでなく男性も感染しますが、女性よりも症状が軽く、感染していることに気づかないことも多いといわれています。そのために、感染した男性が気づかないままに女性にうつしてしまうことも少なくありません。もちろん、反対に女性が男性にうつしてしまうケースもあります。
カンジダを発症した場合には、必ずコンドームを着用して感染を予防しましょう。症状が治まっても、しばらくの間はカンジダが性器に潜んでおり、感染する可能性があります。症状が治まっても、1~2週間は感染予防をすることをおすすめします。
また、カンジダは性行為だけで感染するだけでなく、多くは免疫力の低下などによって、常在しているカンジダが活発になることが原因で発症します。日頃から、疲れやストレスを溜めず、体調を調えて免疫力の維持を心がけましょう。
近年、カンジダが歯周病の原因であるとの意見もあります。しかし、歯周病学会は「歯周病はカンジダ症の一病型」という考え方には否定的です。
カンジダは体内のいたるところに常在しているカビであり、歯周病患者の口の中からカンジダが発見されることはあります。また、カンジダは外敵から身を守るためにバイオフィルムと呼ばれるバリアを作りながら増殖します。これは、歯周病に有効な抗生物質を効きづらくし、結果として歯周病の治癒を遅らせることがあるのです。
このように、カンジダは歯周病を悪化させる原因となりますが、カンジダ自体が歯周病の発症原因とはならないとされています。
また、歯周病の治療では抗生物質の他に、カンジダに対して抗真菌薬が使用されることがあります。しかし、これはあくまで治療の補助的な役目を果たすにすぎず、抗真菌薬が歯周病を治癒させる効果はありませんので注意しましょう。
体のバランスが崩れ免疫力が弱くなると、カンジダは侵襲的になり、下記のように体のさまざまな部分で感染症を引き起こします。
一般に、直腸に常在していたカンジダによる自己感染によって起こります。
これは、唇の周り、頬の内側、および舌と口蓋の表面に発生します。
口腔カンジダ症は、口と胃の間の通路である食道に広がることがあります。
カンジダ菌は特に鼠径部や肘などの隙間の湿度が多くて換気が不十分な部位でで感染を引き起こす事があります。
陰茎の亀頭と包皮の下に起こる感染症です。
カンジダが血流を介して全身に広がった状態であり、免疫系が強く損なわれた人々にのみに発症します。
まれに、カンジダ菌が静脈留置針、尿道カテーテル、気管切開チューブまたは外科的創傷など皮膚のバリアが障害された部位から体内に侵入することがあります。感染が血流を介して腎臓、肺、脳その他の器官に広がると、重大な全身合併症を引き起こす可能性があります。これらは、重度の病気や免疫系を弱める他の健康上の問題を抱えている人にのみ発症します。
カンジダは健康な人にも常に存在している真菌であり、通常はカンジダが存在していても体に異常はおこりません。しかし、免疫系に影響のある病気にかかっていたり、疲れやストレスなどで免疫が低下しているとさまざまな疾患を引き起こします。
カンジダ症自体は適切に治療すれば比較的容易に完治する病気です。気になる症状が現れたら早めに治療を始めましょう。
また、カンジダの原因を理解し、日頃から予防に努めてください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。