記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/8/15
記事監修医師
前田 裕斗 先生
女性にとってとてもポピュラーな病気である子宮筋腫。自覚症状がほとんどない場合が多いのですが、もし筋腫ができた場合、どんな症状に注意すればよいでしょうか。その治療法とともに解説します。
多いのが「症状がない」というパターンです。そのため、気づかないうちに筋腫がコブシ大、もしくはそれ以上の大きさになってしまうこともあります。
このように症状が出にくいのは、筋層内筋腫や漿膜下筋腫の場合が多いですが、筋腫が大きくなってくると、自分でも下腹部を触ったときにわかるようになります。
粘膜下筋腫の場合は、経血量が増え、生理期間が長くなり、貧血が起こるなど、自分でも気づくほどの症状が現れます。ひどいときは輸血が必要になることもあるのです。
他には、筋腫が大きくなり腸を圧迫することで便秘になったり、膀胱を圧迫することにより頻尿になることがあります。また、お腹の張り、下腹痛、腰痛などの症状が出る可能性があります。
筋腫がかなり大きくなっても、病気とわかるような自覚症状が出ないときもあります。子宮筋腫は治療が遅くなるほど、手術の際の体の負担が増えるので、定期的に検査を受けるようにしましょう。
発生する場所の違いによって、「筋層内筋腫」「粘膜下筋腫」「漿膜下筋腫」の3タイプに分けられます。
子宮筋の中にできる筋腫です。子宮筋腫の70%を占めるのがこのタイプで、最も多くみられます。
大豆大からこぶし大、さらには鶏卵大のものまで大きさはバラバラであり、いろいろな場所に複数個できやすく、大きく成長しやすいのが特徴です。
子宮内膜を覆う粘膜のすぐ下にできる筋腫です。約1割がこのタイプで、子宮内腔に向かって成長し、症状が出やすいことが特徴です。月経時の出血が多く貧血になることもあります。
子宮壁の外側にこぶのように飛び出した形でできる筋腫です。2~3割がこのタイプとなります。
症状が出にくく、なかなか自覚できないことが多いですが、大きく成長したときに他の臓器を圧迫して症状が出ます。
自覚症状や月経の状態に関する確認をした後、お腹側の触診と、腟に指を入れることによる触診により、筋腫の有無や位置、大きさ、硬さなどを調べます。
そして、近年、普及してきた超音波検査を行ないます。超音波検査では、これまでは発見できなかったような小さな筋腫を見つけることも可能になりました。
また、粘膜下筋腫のように、筋腫が子宮の外に飛び出して見える場合には、詳しく調べるために子宮鏡検査を行ないます。
さらなる精密検査や、治療が必要な筋腫が見つかった場合には、もっと詳しい情報を得るためにMRI検査が実施されるでしょう。
筋腫が小さかったり、自覚症状が小さいなどの場合には、そのまま経過をみるという判断になることもあります。
しかし、筋腫が大きい、さらにそれによる圧迫が激しい、流産や早産の原因になると医師が判断した場合には、治療が開始されます。
子宮筋腫の原因と考えられている女性ホルモンの分泌を薬で抑えることで、筋腫の成長を抑制し、縮小させていきます。
ただし、人工的に閉経の状態にするため、副作用として更年期障害や胃が弱くなるといった症状が出ることがあります。
子宮筋腫の数が多かったり、症状が酷い場合には、筋腫を切り取る手術(子宮筋腫核出術)が行なわれます。この場合、後で妊娠することも可能ですが、再発の可能性が残ります。
今後、妊娠の予定がないといった場合には、子宮ごと取る手術(子宮全摘出術)を行うこともあります。
また最近は、開腹せず、カテーテルを使って物質(塞栓物質)を注入することで筋腫に栄養を送っている血管を詰まらせる「子宮動脈塞栓術」や、高周波の超音波を筋腫に当てて筋腫を焼却する「高周波超音波集積治療」といった新しい治療法も出てきています。
前述のように、子宮筋腫は自覚できないことも多い病気です。もし、月経がいつもより重い、痛いなど、“いつもと違うこと”が起こったときは注意が必要です。
今回のコラムを参考にして、いち早く異変に気づけるようにするとともに、気づいたら早めに婦人科を受診しましょう。