動かないと寿命が縮まる? 高齢者の運動のポイント

2017/2/10

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

65歳以上の多くは、一日に10時間以上を座って過ごします。高齢者が活動的ではなくなってしまう原因には、もちろん筋力の低下や病気もありますが、実際には高齢者は、座ってすごす時間を最低限にできるようにしたほうがよいとされています。

同時に、高齢者が運動することで病気を改善できるということも証明されていて、健康ためにも重要になってきます。

この記事では、高齢者が運動するために知っておきたいことをみていきましょう。

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高齢者と運動

高齢者の運動は安全?

65歳以上の高齢者でも、心臓病、高血圧、糖尿病、関節炎などの慢性疾患のある無しを問わず安全に運動することができます。また、慢性疾患の多くは運動によって改善されます。

しかし、どのような運動が安全なのかわからない、または近頃まったく運動していないので不安だという人は、医師に相談してみてください。 

運動の準備には何が必要?

ゆったりとした快適な服装と、フィット感のある丈夫な靴を用意してください。 特に靴は、土踏まずを支えるサポートがあって、かかとの部分のショックを吸収する厚めのクッションが付いているものを選んでください。

まずは、楽にできる運動から始めていきましょう。 ゆっくり始めるなら、ケガや痛みを防ぐのにも役立ちます。

高齢者が運動する際は、高い強度(負荷)をかけて行う必要はほとんどありません。そのため、「歩くこと」は手軽にできる素晴らしい運動です。

「歩くこと」に慣れるか、すでに活動的な運動を続けているのであれば、その強度をゆっくりと上げていくことができるでしょう。 

どんな運動がいい?

毎日少なくとも30分間のウォーキング、水泳、自転車などの有酸素運動を行うのがオススメです。また、週2日は筋力トレーニングを行うべきです。

運動する前には5分間ウォーミングアップも取り入れてください。ゆっくりと歩いてからストレッチ(柔軟運動)すれば、ちょうどいいウォーミングアップになるはずです。

反対に運動を終えたときには、5分間のストレッチでクールダウンしてください。 暑い季節には時間をかけて入念にクールダウンをするようにしましょう。

しかし、風邪やインフルエンザまたはほかの病気にかかっているなら、病気が回復するまで運動は控えてください。また、2週間以上運動しなかったときは、ゆっくりとウォーミングアップするところからからやり直すようにしてください。

運動後、筋肉や関節の痛みがあったときは、運動し過ぎなのかもしれません。次は、もっと軽くするようにしてください。また、痛みや不快感が持続するとき、あるいは運動中に以下の症状があらわれたときには医師に相談してください。

・胸の痛みや圧迫感 
・呼吸障害または過度の呼吸困難 
・軽度の頭痛またはめまい 
・バランスを取りにくい 
・吐き気 

自宅でできる簡単な運動

以下は、自宅で行うことができる簡単な運動の例です。  
それぞれ各1セットを、8〜10回×2セット行います。 

・壁を利用した腕立て伏せ(ウォールプッシュアップ)
 1.手を壁に平らにつけます。  
 2.ゆっくりとからだを壁に倒します。  
 3.からだを壁から離して最初の位置に戻します。 

・椅子スクワット
 1.椅子に座ります。 
 2.少し前に傾いて椅子から立ち上がります。 
  その際、片側に傾いたり手を使ったりしないようにしてください。 

・二頭筋カール
 1.両腕をからだの横におき、手でダンベル※を持ちます。
 2.両腕を肘から曲げて、肩まで持ち上げます。 
 3.両腕をからだの横に下ろします。 

・ショルダーシュラッグ
 1.両腕をからだの横におき、両手にダンベル※を持ちます。  
 2.肩を耳につけるように肩をすくめ、肩を元に戻します。 
 ※ダンベルは、水をいれたペットボトルで代用できます。 

自分に合った運動の見つけ方

高齢者の運動では高い強度のものは必要ないということは先に説明しましたが、ムリせず習慣として続けられるようにしたいものです。以下の項目を参考にして、自分に合った運動の仕方を見つけましょう。

・家の中でアクティブになる
料理や家事をしたり、電話をしながら歩くことで、常に体を動かすことができます。しかし、このような軽い活動は、一週間に必要な運動に含めることはできません。

・エクササイズガイドに従って、体力、バランス力、柔軟性を高める
これには、座ったまま行える運動もあります。

・地域ボランティア活動に参加する
活動に参加することで、地域に貢献しながら体を動かすことができます。

・ウォーキングを行う
活動量を上げるために最も手軽な方法は、ウォーキングです。家族や友人を誘って一緒にやるのがオススメです。地域でウォーキングを行っているグループに入ってみるのもいいかもしれません。

・シニアスポーツやシニア向けのフィットネスクラスに参加する。
楽しくてストレス解消にもなりますし、定期的に友達と会うこともできます。

・ガーデニングをはじめる
押す、しゃがむ、運ぶ、掘る、などは良い運動になります。

・水泳、水中エアロビクスなどの水中運動を行う
高齢者には理想の運動方法です。
水中で動くことで、関節にかかる負担を軽減することができます。

・ヨガをはじめる
どんな人にも効果的です。呼吸をしながらさまざまなポーズをとることで、体力、柔軟性、バランス力が高められます。

・太極拳
古代中国の運動で、ゆっくりとした、決まった動作を繰り返すことで、体力、柔軟性、バランス力を高めます。

・ピラティス
全身のストレッチと筋力トレーニングに特化していて、バランス力、筋力、柔軟性を高め、姿勢を良くします。

おわりに:体を動かして健康的な老後に

かのヘミングウェイは立ったまま手紙を書いていたそうです。年をとったからといって、座ってばかりいては健康によくありません。

立ったり、歩いたりして、体を使ってあげることが健康づくりにもつながっていきます。

健康のためにも、無理せず自分にあった運動を見つけてみてください。

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