記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/1/31
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
いつになっても根絶されないいじめですが、その根底にあるさまざまな原因について、子どもを持つ親への答えを探ります。
子どもがいじめを受けている、あるいは、いじめを受けているらしい。と知ったとき、親がもつ最大の懸念の一つは、“なぜ子どもがいじめられているのか”です。
この問題を解決するためにできるいくつかのことがあります。 自分たちですべての答えを見つけようと思わないでください。
子どもたちは、両親を怒らせたくないという理由や、いじめ問題を話したことで状況がさらに悪化するのではないかと考えて、いじめについて親に話さないことがあります。
しかし、子どもがいじめられている疑いがある場合は、発している兆候が必ずあります。それは以下のようなことです。
・帰宅した時に、衣服が破れていたり、一部紛失していたり、所持しているはずのお金がなくなっていたりする
・体に傷やアザがある
・特にはっきりした理由もなく、宿題をしない
・いつもと違う通学ルートを使っている
・いらいらしており、簡単に怒ったり、感情的になる
子どもがいじめられていることを伝えてきたら、最初にやるべきことは話を最後までよく聞くことです。決して途中で口をはさんで中断させたり、結論づけたりしてはいけません。
子どもが自分の言葉で説明できるようにしてください。そして、原因も解決方法も見出せない時期に、いじめの経験は「成長の一部である」として扱ってしまわないでください。
子どもがいじめについて記録(日記、メモ、スマホなど)をつけることをアドバイスします。事実の経過の記録は、第三者(学校やクラブの担当者・責任者)に相談する場合の材料になります。いじめの当事者に具体的事実を示すために役立ちます。
次のステップは、子どもの学校やクラブの担当者と話すことです。
学校に話すときは、親か子ども、または両方が揃って学校に話すことが不可欠です。
最初に誰に話すのが一番よいか考えてみましょう。子どもがより親近感をもっている教師がいるかもしれないので、子どもと話し合ってください。
学校はあらゆる種類のいじめを防ぐために、できることはすべてつくすべきです。いじめ防止対策推進法では、すべての学校にいじめ行為に関する方針が定められていなければならず、学校がどのようにいじめへの対策をするのかを調査できます。
一部の学校ではいじめ対策用の対話プログラムを実行しています。特定の子供たちが問題に耳を傾けて解決するように訓練を受けます。 教師は、学校の敷地外で起こるいじめについても、子どもたちを指導することができます。バスの中や、通り道、または店などが含まれます。
子どもが学校や先生への不信感を持っている場合は、別の団体や機関の助けを受けることになります。
子どもはいじめに気がついてくれない学校に対して、強い不信感を持っている場合があります。このような場合は、学校関係者への相談は一旦保留して、学校での状況を子どもによく聞いたうえで、地域のサポートセンターや、子どものメンタルサポートを扱っている医療機関に相談することもできます。
子どもたちはいじめが一旦終了しても、影響を感じることがあります。子どもたちの不安が続き、それが日々の生活を妨げているのなら、さらに助けを求めたほうがよいかもしれません。かかりつけの医師または学校のカウンセラーに話してみましょう。
自らの手首や体を刃物で傷つける自傷行為は、特に若い世代においては、予想以上に一般的なものです。若者の10%が特定の時期に自傷行為に及んでいたとされる調査もあります。
自傷行為は年齢を問わず行われます。また、全てのひとが助けを求めるわけではないので、この数字は過小評価である可能性が高いのです。 ほとんどの場合、自傷行為を行う者は、その行為によって、感情の問題を解決処理しています。これらの問題は、怒りや罪悪感、絶望や自己嫌悪といった激しい感情の増強につながりかねません。早く気がつく必要があります。
自傷行為の原因は以下のものに起因している可能性があります。
いじめ、学校や職場におけるいじめ。これは人間関係の難しさに一因があります。ゲイやバイセクシュアルであると自覚している場合は、そのセクシュアリティをカミングアウトできないことから発生する問題。また人間関係に引きずられて、結婚をする羽目に陥る場合などです。
肉体的・性的な虐待、または近しい人との死別、流産などです。
自傷行為に自らを駆り立てる思考や声が繰り返し生じる、分離(自身の人格、精神や周囲の事物からの解離)といわれる状態や人格異常
メールをやり取りした後やインターネットを使った後に引きこもってしまったり、イライラしている。ネットや電話でやり取りしている内容について話したがらない。携帯電話やパソコンなどに大量のメールが届く。数多くの新しい電話番号が表示されるなどです。
いじめから子どもを助けるために、親や大人は、なにをすれば良いのかは、永遠の課題かもしれません。兆候を見逃すことなく、ひとつひとつ注意深く検証し、ときには体当たりで救いの手を差しのべる。決して逃げ出さず、しかしやさしさを持って寄り添いたいものです。