記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/9/5 記事改定日: 2019/5/13
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
膵臓などの臓器に腫れを起こし、さまざまな合併症を引き起してしまう自己免疫性膵炎。自覚症状がほとんど出ないことが特徴ですが、何かサインはないのでしょうか? その他、症状や治療法について解説します。
自己免疫膵炎は、何らかの原因で自分の免疫が膵臓を攻撃し始め、膵臓に慢性的な炎症をきたしてしまう病気です。
この疾患自体は、1995年に初めて提唱された新しい概念であり、それ以前は膵がんや胆管がんと区別するのが難しく、誤診されてがんの手術が行なわれることもありました。
症状としては全身の臓器に病変が及ぶ全身疾患の様相を呈することが多いですが、単一臓器のみの場合もあります。
日本人の、とくに高齢の男性が多く発症していることで知られ、60代がピークとなっています。
自己免疫性膵炎が発症する原因について、まだはっきりしたことはわかっていません。ただ、血液中の免疫グロブリンG(IgG)という抗体成分のうち、IgG4という成分が上昇する過程を経ることから、全身にIgG4をつくり出す細胞が浸潤して臓器に腫れが起こる自己免疫性疾患であると考えられています。ただし、その決定的な病因抗体がなんであるかは、まだ解明されていません。
現在、アジアでの発生率が高いことから、遺伝的な背景も研究されています。
膵臓は自覚症状が現れにくいため、通常の膵炎のように痛みを感じることはあまりありません。しかし、膵臓が炎症を起こしてソーセージのように腫れあがると、胆管が圧迫を受け胆汁が腸に流れにくくなり、皮膚や目に黄疸が現れるようになります。
自覚症状として腹痛が起こることもありますが、症状は軽い場合が多く、食欲不振や体のだるさ、体重の減少など、見逃しそうな症状として現れることも少なくありません。
また、糖尿病の発症・悪化要因になったり、膵臓以外の臓器が炎症で腫れることによる機能不全や圧迫症状といった合併症状が起こることがあります。
自己免疫性膵炎の治療は、ステロイドによる薬物療法が主体となります。多くは内服薬が用いられ、治療開始後一か月は多量のステロイド薬が投与されますが、徐々に減少していき、少量のステロイドを長く飲み続けることになります。
ステロイド薬の内服を中止すると再発するリスクが高まるため、一般的には症状がない場合でも少量の東尾yが続けられます
自己免疫性膵炎は適切なステロイド治療を継続すれば、症状を抑え、進行を予防することが可能です。このため、比較的予後は良い病気です。
しかし、治療を続けた場合も三年以内に15%程度は再発するとされており、膵機能の低下による重度な糖尿病などを発症したり、膵臓の腫大によって胆道が圧迫されることで高度な黄疸による皮膚掻痒感などに悩まされることがあります。
また、膵臓がんへの移行や他臓器がんの併発の可能性に関しては、明確な根拠はないため、定期的な検査を行っていく必要があります。
自己免疫性膵炎の治療では通常長期間のステロイドの内服が必要となります。長期間のステロイド内服に伴う様々な副作用の管理やステロイドを減量するスケジュールなど医師と相談すべき事項が多くあります。再発のリスクを防ぐためにも、投与が完了した後も定期的に通院し、医師に経過を診てもらうようにしましょう。