記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
急性副鼻腔炎は副鼻腔の粘膜に炎症が起きている状態で、鼻詰まり、粘り気のある鼻水、頭や目の周辺が痛むなどの症状が見られます。
この記事では、副鼻腔炎の原因や治療法、予防対策などをまとめました。気になる症状がある人、家族に副鼻腔炎の人がいるという人はぜひ参考にしてください。
副鼻腔炎とは鼻道に開口する空洞(=副鼻腔)に炎症が起きている状態です。アレルギー反応を起こしやすい、風邪をひきやすい方は鼻腔粘膜が弱い傾向があるため、副鼻腔炎になりやすいことがわかっています。
副鼻腔炎(慢性副鼻腔炎)はかつて蓄膿症と呼ばれていました。
蓄膿症とは、副鼻腔に膿がたまることを言いますが、最近では副鼻腔に膿が溜まっていなくても炎症が起きているだけで鼻水や頭痛などの症状が引き起こされることが分かってきたことから、蓄膿症とはいわなくなったのです。
しかし、副鼻腔炎は悪化すると膿が溜まるという事実は変わらないため、蓄膿症は副鼻腔炎が悪化したもの、慢性化したものといえるでしょう。
急性副鼻腔炎の主な症状は以下の通りです。
急性副鼻腔炎は上顎洞(じょうがくどう)と呼ばれる上あごの奥歯の上にある骨の空洞で起きる傾向が高く、重症の場合は膿が溜まることもあります。
症状が慢性化すると慢性副鼻腔炎(さらに蓄膿症へ)へと進行して鼻腔内にポリープができてしまう可能性もあります。副鼻腔炎と診断されたときや気になる症状に気づいたら、早めに治療を開始し、最後まで治療を続けるようにしてください。
また、炎症がさらにひどくなると
などの深刻な合併症を招く危険性があります。
子供の副鼻腔炎は、大人よりも重症化しやすいという特徴があります。
上咽頭には耳とのつながりがある耳管が開口しますが、子供は耳管の発達が未熟なため、副鼻腔に鼻水や膿が溜まっているとその細菌が鼓室へ感染し中耳に炎症が波及することで中耳炎を発症し、高熱などの全身症状が現れることもあるのです。
また、鼻や喉の構造が小さいために溜まった鼻水や膿が喉に落ちやすく、ひどい咳が続くことがあります。このような状態が長く続くと、いつまでも治らずに慢性化しやすいのも子供の副鼻腔炎の特徴です。
子供は自分の症状をうまく大人に伝えられないことが多く、重症化や慢性化するまで気づかれないことがあります。子供の鼻水や咳が長く続いていないかなど、子供の体調の変化には常に注意を払うようにしましょう。
副鼻腔炎は
などが原因で発症します。また、HIVなどの免疫系に関わる病気やストレスによる免疫低下、鼻中隔湾曲症などが原因になることもあります。
軽度の急性副鼻腔炎の場合は、抗生物質や抗炎症薬、膿を吸い取って物理的にきれいにするなどの方法で治療することができます。
また、ネブライザー療法という有効成分を細かい粒子にして蒸気を鼻から吸う治療が行われることもあります。ネブライザー療法をすることで、炎症部分に薬が届きやすくなり、粘膜が正常な状態に回復しやすくなります。
重度の急性副鼻腔炎や慢性副鼻腔炎でできた鼻茸という鼻の中のポリープを取り除く場合には手術が必要です。
現在主流になっているのは内視鏡下副鼻腔手術(ESS)と呼ばれる方法で、内視鏡と手術器具を鼻の穴から挿し入れて内部の様子をモニターに映しながら施術をします。
手術は1時間ほどで終わることが多いです。
ESSのメリットは術後の痛みや腫れなどが他に比べて少ないこと、費用・時間・体への負担が少ないことといえるでしょう。
ただし、症状が重い副鼻腔炎には不向きであり、経過観察のため退院後にも通院が必要になります。
妊娠中は免疫力が低下し、妊娠前よりも副鼻腔炎になりやすくなります。特に妊娠前から副鼻腔炎を繰り返していた人は注意が必要です。
妊娠中の副鼻腔炎の治療は自己判断で市販薬を飲んだり、自然に治るだろうと考えて放置するのは控えましょう。
妊娠中の感染症は思わぬ合併症を生じることがありますし、飲んではいけない薬もありますから、必ずかかりつけ医に相談してから治療を開始してください。
軽症な副鼻腔炎の大部分は特に治療をしなくても自然に治ります。しかし、鼻水や咳の他に頭痛や顔面痛を感じる人もおり、このような症状にはロキソニンS®などの市販の鎮痛薬で症状を改善することが可能です。
しかし、鎮痛剤には症状を改善する効果はあっても、副鼻腔炎自体を治療することはできません。症状が長引くときには自己判断で市販薬の服用を続けずに早めに医療機関を受診するようにしましょう。
副鼻腔炎の慢性化を予防するには、何よりも副鼻腔炎をしっかり治しきることが大切です。
副鼻腔炎を治すには適切な抗菌薬の投与や、吸引、ネプライザー治療などが必要となります。いずれも病院でしか行うことはできない治療ですので、市販薬の服用を漫然と続ける・放置する・治療を自己中断するなどしないよう、医師の指示がある間は通院を続けるようにしましょう。
また、生活の中の対処法としては、鼻水や副鼻腔に溜まった膿などの排出を促すため、室内を加湿する・湯船にゆったり浸かることがおすすめです。ほぐれて排出しやすくなった鼻水などはこまめにふき取り、静かに優しく鼻をかんで除去するようにしましょう。鼻をすすったり、強く鼻をかみすぎると副鼻腔炎が悪化することもありますので、注意が必要です。
急性副鼻腔炎は鼻の粘膜への直接的な細菌感染だけでなく、風邪や扁桃炎などの病気が起因して発症することもがあります。
「風邪は治ったのに鼻詰まりが治らない」
「ずっと黄色い鼻水が出ている」
・・・など、風邪とは異なる鼻詰まりや悪寒、頭痛、眼の周りの痛みなどが見られる場合は副鼻腔炎の可能性があります。
できるだけ早く耳鼻咽喉科や専門医の診察を受けるようにしましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。