記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/10/3 記事改定日: 2020/2/26
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
おしりの周りがズキズキと痛んで膿が出たり、高熱で苦しんだりする「痔瘻(じろう)」。特に中年以降の男性に多いといわれていますが、そもそも痔瘻はなぜ発生するのでしょうか?
痔瘻(じろう)とは、肛門付近が炎症を起こして膿が溜まり、肛門付近の皮膚と直腸との間にトンネルができた状態のことです。別名「あな痔」とも呼ばれます。痔瘻になると、化膿している肛門付近が腫れて痛んだり、高熱が出たりすることがあります。
痔瘻は、肛門周囲の直腸内にある「肛門陰窩」と呼ばれるくぼみに細菌が入り込み、肛門周囲に生じた炎症が悪化することによって引き起こされます。炎症が悪化して肛門周囲の組織内に膿が溜まると、膿を排出するための経路として肛門陰窩から肛門周囲の皮膚にトンネルのような穴が開くのです。
おもな原因は頻回な下痢、便秘、内痔核など肛門陰窩にダメージが加わる状態が続くことが挙げられますが、身体の免疫力や抵抗力の低さも発症に関与していると考えられています。そのため、糖尿病を患っている人、ストレスや疲れなどが溜まっている人などが発症しやすいとの見解もあります。
痔瘻のおもな原因は、肛門陰窩に下痢便が溜まることです。その点から考えると、痔瘻を予防するには下痢をしないようにすることが大切になってくるでしょう。
また、肛門周囲膿瘍にならないようにするために、免疫力を下げないことも大切です。「日頃から栄養バランスのいい食事をとる」「刺激物や脂っこいもの、アルコールの過剰摂取など下痢を誘発する食事を避ける」「ストレスを発散し、規則正しい生活を送る」といったことを心がけましょう。
痔瘻の症状はトンネルから膿が排出されると一時的に緩和しますが、トンネルがある限り膿が出てくるので、根本的に治すためには手術が必要になります。具体的な手術の方法は以下のとおりです。
トンネルに沿って皮膚を切開し、トンネルを切除するタイプの手術です。一般的な手術法ではありますが、痔瘻の程度によっては術後の肛門機能に悪影響を与える可能性があるため、実施できないことがあります。この手術の場合は、基本的に入院が必要になります。
トンネルだけをくり抜く手術です。術後の肛門機能障害の恐れが少なく、回復が早いというメリットがありますが、縫合した部分が破けて再発してしまう恐れがあります。
痔瘻のトンネルにゴム状の医療器具を通し、ゴムを徐々にしばることで痔瘻組織を壊死させ、ゆっくりとトンネルを除去していく方法です。定期的にゴムを締め直す必要がありますが、治癒率が高く、肛門機能への負担も少ないので、この手術法を推奨する病院も多いです。
痔瘻はある程度予防できますが、自然治癒したり、市販薬で治療できたりするものではありません。基本的には手術をしてトンネルを除去することが必要になっていきます。痔瘻の症状がある方は、なるべく早く専門医を受診するようにしてください。