びまん性汎細気管支炎(DPB)はどんな病気?検査と治療法とは!?

2017/10/24 記事改定日: 2018/8/2
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

びまん性汎細気管支炎(DPB)は慢性的な呼吸器障害のひとつで、アジア人に多く見られる病気です。この記事では、そんなDPBの特徴や気をつけるべき合併症、検査・治療法などをご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

びまん性汎細気管支炎(DPB)とは

びまん性汎細気管支炎(Diffuse Panbronchiolitis:DPB)は、呼吸細気管支に慢性的な炎症が起きてしまう呼吸器障害の一種で、咳や多量の痰が出る、息苦しくなるなどの症状がみられます。

現在では世界中に認められている疾患ですが、1969年に日本人医師によって病気として提唱されました。患者が東アジアに集中して見られる一方、欧米にはほとんど患者がいないため、びまん性汎細気管支炎の発症には人種特異性(大まかに遺伝的に分類した特定のグループにのみ見られる性質)や遺伝的要因が関係しているという考えもありますが、明確な原因はわかっていません。

びまん性汎細気管支炎(DPB)の症状と合併症

びまん性汎細気管支炎の代表的な症状は以下の通りです。

  • 大量の痰が出る
  • 持続する咳、息切れに伴う呼吸困難

感染が原因で痰が異常に分泌されるため、人によっては1日に100ml以上の痰が出ることもあります。また、気管支が狭くなって空気が通りにくくなる気道閉塞や気道の細菌感染によって咳が止まらなくなったり運動時に息切れを起こしたりと、病気が進むにつれて呼吸困難を伴う傾向が高いです。

また、慢性副鼻腔炎を併発すると、鼻づまり・膿性鼻汁(黄色い鼻水)・嗅覚低下などの症状が現われます。慢性副鼻腔炎の併発はで、びまん性汎細気管支炎の患者の8割以上が発症するといわれています。

びまん性汎細気管支炎(DPB)の検査と診断の流れ

びまん性汎細気管支炎の診断は、以下のような方法で行われます。

胸部X線画像やCT検査

胸部X線画像やCT検査では、左右の肺全体に広がる小さな粒状の影や気管支や肺の過膨張所見などがないかどうかを調べます。

呼吸機能検査
閉塞性換気障害などによって気道や気管支が狭くなっていないかどうかを調べます。
喀痰検査
患者の痰を検査し、感染を引き起こしている細菌を調べます。
びまん性汎細気管支炎に罹っていると、肺炎球菌やインフルエンザ菌、緑膿菌が検出されることが多いです。
血液検査
血液中の白血球数の増加や赤沈、CRP(C-リアクティブ・プロテイン:体内で炎症や組織細胞の破壊などが起こると増加する成分で、症状が進行するほど数値が高くなる)値の上昇の有無を調べます。

びまん性汎細気管支炎(DPB)の治療方法と日常の注意点

DPBに対しては、一般的にエリスロマイシンに代表されるマクロライド系の抗生物質を使った投薬治療が行われます。マクロライド系抗生物質は痰の軽減や呼吸器症状の緩和に効果的で、発症から時間が経っていないほど効果が早く現われる傾向が高いです。

日常生活の注意点

びまん性汎細気管支炎は発症メカニズムが明確に解明されていないため、その原因を全て取り除くことは困難であり、完全に予防することはできません。
しかし、びまん性汎細気管支炎の治療中の人が症状の悪化を予防するために日常生活で気を付けるべきことには、風邪をひかないように規則正しい生活を心がけ、栄養バランスの取れた食生活を送る、過度なほこりなどを吸い込まないように室内の掃除や換気を行うことなどが挙げられます。

ワクチン接種は必要?

びまん性汎細気管支炎はインフルエンザウイルスや肺炎球菌に感染すると症状が悪化して、なかには呼吸不全などの重篤な状態が引き起こされることがあります。
このため、びまん性汎細気管支炎を発症している人はこれらの感染症予防のため、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを受けることが推奨されています。
肺炎球菌ワクチンは公費負担で接種する場合、年齢に制限がありますが、その年齢に該当しない場合でも接種するようにしましょう。

おわりに:他の病気との区別が困難なことも。疑わしいときはすぐに病院へ

びまん性汎細気管支炎は、症状が似ていることからCOPDや嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう、日本では稀)といった他の病気との判別が難しいこともあります。
びまん性汎細気管支炎が疑われる場合は、早急に病院で診察を受けるようにしてください。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

診断(68) 治療(461) 症状(552) 合併症(64) 細菌(25) 気管支炎(7) DPB(1) 痰(8) 呼吸器(1) びまん性汎細気管支炎(1)