記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/24 記事改定日: 2018/3/28
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
メニエール病は、突然回転性のめまいや耳鳴り、難聴、吐き気といった発作が起こる病気です。30分から数時間で症状が落ち着くことがほとんどですが、何度か発作を繰り返すうちに症状が悪化したり、慢性化したりします。このため、初期の段階で治療することが大切です。この記事では、メニエール病の治療法にはどのようなものがあるかを中心に解説します。
メニエール病とは、ある日を境に突然回転性のめまいを発症し、それに伴い難聴や耳鳴り、耳の閉塞感、吐き気や嘔吐などが起こる病気です。
メニエール病の症状の特徴として、内耳からくる回転性のめまいや吐き気が繰り返し起こります。発作の頻度は人によって異なりますが、1カ月に1度以上や年に数回など、何度も起こる場合があります。
発症する原因ははっきりと解明されていませんが、直接の原因としては、内耳が内リンパ腫を起こし、内圧が上がるためではないかと考えられています。通常、内リンパ液は一定量を保っていますが、何らかの原因により増えすぎてしまい、蝸牛がパンパンに膨れ上がると、蝸牛や三半規管の機能が乱れて、さまざまな症状を引き起こすと考えられています。
メニエール病は20~50代の女性や、働き盛りの40代~50代の方が発症する確率が高いと言われています。また、発症にはストレスが大きく関わっているのではないかとも考えられています。
メニエール病の主な治療法として、「薬物療法」「手術」「栄養素の摂取」「漢方薬の服用」の4つがあります。
メニエール病の治療で中心となるのは薬物療法です。主に、めまい止めやむくみを解消するための利尿剤や、不安や緊張を和らげる抗不安薬が処方されます。難聴の症状が強い場合は、ステロイド剤を使用することもあります。また、薬の服用だけで症状が治まらない場合は、点滴を投与します。
薬物療法や点滴による治療方法でも改善がみられない場合、手術を行うケースもあります。一般的な手術法として、内リンパ嚢開放術と前庭神経術の2種類あります。
<内リンパ嚢開放術>
内リンパ嚢開放術は、内耳のリンパ液の流れを調整する袋(内リンパ嚢)を開けて、リンパ液の流れを正常に戻す手術法です。メニエール病は、内リンパ嚢のつまりが原因で発症すると考えられているため、この方法が行われます。最近では、開けた内リンパ嚢に直接高濃度のステロイド剤を注入することで、手術の効果を高めることも行われています。
この手術をすると内耳の機能を温存することができるため、難聴に対するリスクが小さくなります。ただ、手術で開けたリンパ嚢がふさがってしまった場合、メニエール病が再発することがあります。
<前庭神経切断術>
前庭神経切断術は、聴覚神経を傷つけることなく、平衡感覚を司っている前庭神経だけを切断する方法です。手術は耳鼻科と脳神経外科で行います。頭蓋骨を開放したあと、内耳の出口にある前庭神経を特定し、切断します。
手術後はめまいがおさまりますが、手術した耳のバランス感覚がなくなるため、ふらつきが残ることがあります。
メニエール病の発作を予防する効果的な栄養素として、ビタミンやアミノ酸などがあります。毎日の食生活で、1日に必要な摂取量が摂れないことが多いので、サプリメントで補充することも治療のひとつとなります。すぐに効果が出なくても、継続することで徐々に効果があらわれます。
そのほか、漢方薬も薬物治療のひとつとして使われることがあります。東洋医学において、メニエール病は水毒や悪血が原因と考えられているため、体内の水分をとることを目的とした漢方薬が個々の症状に合わせて処方されます。
ところで、メニエール病には、大きく分けて、蝸牛型、前庭型、両側性の3種類があります。
蝸牛型メニエール病は、内耳の中にある蝸牛という感覚器官の水はけが悪くなり、内リンパ液が溜まって水腫ができるために発症するものです。そのため音の信号が歪み、キーンという耳鳴りがしたり、低音が聞き取りにくい「低音難聴」が起こったりします。内耳の血液循環が悪くなるのが原因で発症するもので、比較的ほかのメニエール病に比べて軽症ですが、放置すると悪化します。
前庭型メニエール病の特徴は、耳鳴りや低音難聴が主な症状である蝸牛型と異なり、激しい回転性のめまいを繰り返し起こし、かなり長い時間発作が続きます。蝸電図が陽性になっているか、半規管マヒが陽性になっている場合は、内リンパ腫が原因とされます。
両側性メニエール病の特徴は、両側にめまいや難聴、耳鳴りが起こることです。難聴の程度が高く、進行が早いと言われています。メニエール病の症状が長期にわたって続いていればいるほどかかりやすく、また、高齢になるほど発症しやすいと言われています。
メニエール病の治療法には、薬や手術など、さまざまなものがあります。どの治療法が行われるかは、症状の程度や体質などに応じて、最適なものを医師に診断してもらうことが大切です。メニエール病は、初期の段階で治療を始めたほうが症状が改善しやすいと言われています。めまいや耳鳴りが続いて不安に思うことがあれば、早めに医師の診察を受けましょう。