記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/11/7 記事改定日: 2018/3/28
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
女性の方で、生理(医学的には月経というのが一般的です)前になるとイライラしたり、頭が痛くなったりするのであれば、「PMS(月経前症候群)」かもしれません。今回の記事ではPMSの代表的な症状や原因、治療、症状を緩和するセルフケアの方法などをお伝えしていきます。
PMS(月経前症候群)とは、生理の始まる3~10日前位から起こる心や体の不調のことを言います。これらの不調は生理が始まると解消されますが、個人によって症状が大きく異なります。
月経前症候群という言葉は、まだそれほど認知されていないのが現状のため、生理前になるとイライラするということは感じていても、それが月経前症候群であるということを知らない人も多いです。
PMSでは、身体面の症状として、胸の張り、眠気、むくみ、便秘、下痢、頭痛、ニキビ、食欲増進などがあります。のぼせ、疲れ、だるさ、体重増加などが現れることもあり、同じ人でも毎月症状が変わるということも珍しくありません。
また、PMSでは精神面の症状も出ることがあります。イライラしたり、憂鬱な気分になったりする他、無気力になったり、集中力が低下したりしてしまうこともあります。人によっては不安感が高まるだけでなく、興奮したり、攻撃的になったりすることもあります。家族や友人などに八つ当たりしてしまったり、しばらくすると後悔するようなことをしてしまう人もいます。泣きたくなる気分やひとりになりたい気分など、症状が多いのが特徴です。
PMSの症状が出る原因は、まだはっきりとは分かっていません。現状では、生理前に分泌されるプロゲステロンという女性ホルモンの影響により、水分などの代謝が影響して心身に症状が出るのではないかと考えられています。例えば水分の代謝がうまくいかなくなり、頭に水がたまると頭痛になりますし、胸では張りに、手足ではむくみにといったように、状態によって症状は変化します。
その他にも、ストレスや性格も原因として考えられており、ストレスや環境の変化を感じている時や、几帳面で細かいことを気にしやすい性格の人は、特に症状が強く出ると言われています。また最近は社会で働く女性が増えているため、ストレスなどから月経前症候群になりやすい傾向にあります。
PMSの受診は、基本的に婦人科や産婦人科、女性外来が専門科になります。ただ、イライラや抑うつなどの精神症状が非常に強い場合は、婦人科だけでなく、心療内科や精神科などの受診もおすすめです。ただし、心療内科や精神科がある医療機関でも、PMSに対応する診療は行っていないケースもあるので、まずは受診前に確認するようにしましょう。
PMSの症状を「生理前だから仕方がない」と思っている女性も少なくないようですが、ウォーキングなどの軽めの有酸素運動で血行を良くすることで、ホルモンの状態を整え、PMSの症状を緩和することができると考えられています。ヨガやストレッチ、散歩など、身体を動かすようにしましょう。
また、食事も大切です。バランスの取れた食事をきちんと三食食べ、栄養が行きわたり、免疫力を上げるというのもPMSの症状緩和に効果があります。イライラの症状が強い方には、ビタミンB6やビタミンE、カルシウム、マグネシウムを多く含む食事が、頭痛や腰痛・むくみの症状が強い方には、乾燥豆など利尿作用のあるビタミンEを多く含む食事がおすすめです。なお、カフェインやアルコール、塩分・糖分の多い食べ物は症状を悪化させる恐れがあるので、食べ過ぎには注意しましょう。
PMSの治療として、病院では主に薬物療法と認知行動療法が実施されます。
薬物療法で処方される薬は、頭痛や腰痛を緩和する鎮痛剤、イライラを和らげる抗不安薬、むくみを解消する利尿剤、排卵を抑制することで生理に伴うホルモン変動を軽減する低用量ピルなどが一般的です。また、体全体のバランスを整え、体質改善にも効果的な漢方を処方する場合もあります。
なお、認知行動療法とはうつ病の治療などでも行われる精神療法の一種です。偏った物事の捉え方を認識・修正することで、徐々に気分や行動を変化させていく治療法になります。
PMSの原因は明確にはわかっていないものの、ホルモンバランスの変化により、代謝の状態に影響が出たために諸症状が起こると考えられています。PMSでお悩みの方は、日頃から運動習慣をつけたり、栄養バランスのとれた食生活を心がけたりといった生活習慣の見直しから始めてみましょう。