涙嚢炎(るいのうえん)の症状の特徴と治療方法とは?

2017/11/10 記事改定日: 2020/3/16
記事改定回数:1回

渡辺 先生

記事監修医師

東京都内大学病院眼科勤務医

渡辺 先生

赤ちゃんの目を見てみたら、泣いているわけではないのに涙が流れていた――そんな症状でびっくりしたことはありませんか?もしかしたらそれは、「涙嚢炎(るいのうえん)」かもしれません。詳しい症状や原因、治療法について解説していきます。

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涙嚢炎(るいのうえん)とは

涙嚢炎(るいのうえん)とは、泣いているわけではないのに涙が止まらなかったり、常に目が潤んだりする症状が出る目の病気です。新生児によくみられる病気ですが、成人でも発症することがあります。

涙嚢炎は、鼻の付け根あたりに位置する涙嚢(るいのう)と呼ばれる小さな袋状の器官が細菌に感染することで発症します。はじめのうちは痛みはありませんが、悪化すると目頭のあたりが赤く腫れ、膿のような目やにがでるようになります。

目と鼻は鼻涙管(びるいかん)と呼ばれる細い管でつながっており、この管が塞がることで炎症を起こし涙嚢炎となります。涙嚢炎は「慢性涙嚢炎」「急性涙嚢炎」「新生児涙嚢炎」の3つの種類に分けることができます。

涙嚢炎の原因

涙嚢炎の原因は目と鼻をつなぐ経路が何らかの理由で塞がれることで起きる「鼻涙管閉塞」であることがほとんどです。この経路が詰まってしまう原因は、先天性によるものと後天性によるものに分けられます。

新生児に起こる場合は、先天性で形成異常による閉塞であることが多いです。形成異常といっても、生まれたばかりの時には薄い膜が残るなどして開通していないというだけで、たいていは自然に開通します。もしくは母体の産道で細菌に感染していることも考えられます。

後天性の場合は蓄膿症や鼻炎、鼻腔ポリープなどといった鼻の病気や、結膜炎など目の病気が発端となって起こることが多いです。どちらの場合も細菌が入り込むことで炎症が起こり発症します。

涙嚢炎の症状の特徴は?

涙嚢炎の症状は、慢性涙嚢炎と急性涙嚢炎で違います。

慢性涙嚢炎

涙嚢が細菌に感染すると、増殖した細菌によって鼻涙管への流れがせき止められてしまうため、本来鼻に排出されるはずの涙が常に目から溢れ出てくる状態になってしまいます。
多くの場合炎症により軽い腫れを起こし、眼脂(目やに)が生じるようになり、涙嚢を押すと膿が出ることもあります。
ただし、慢性涙嚢炎で痛みが出ることはあまりありません。

急性涙嚢炎

涙嚢炎の症状が悪化すると、目の周囲の腫れが酷くなり、まぶたや頬などに痛みがあらわれます。この状態の涙嚢炎が「急性涙嚢炎」であり、重症化すると発熱を伴うこともあります。

炎症が周辺組織にまで及ぶと、脳髄膜炎(のうずいまくえん)などを合併するおそれがあるため、早期の治療が大切になってきます。

新生児涙嚢炎

新生児涙嚢炎は、生まれつき涙が排出される経路が狭くなったり閉じていることによって発症します。このため、発症すると目に涙がたまりやすくなり、常に目が潤んで涙が流れやすいといった症状が見られます。

また、涙の流れが悪くなることで目に細菌感染が起こりやすく、目ヤニが溜まりやすく、目が充血しやすいのも特徴の一つです。

涙嚢炎はどうやって治療するの?

涙嚢炎の治療は基本的には細菌感染に対して抗菌薬の投与が行われます。また、涙管の内部に膿が溜まっているような場合には、涙嚢のマッサージを行って膿の排出が試みられます。

一方で、涙管の閉塞の程度が強い場合にはこれらの治療を行っても再発を繰り返すケースが多く、涙嚢から涙管に細い管を通して涙管を拡げる「涙管ブジ―」を行う必要があります。

おわりに:涙嚢炎の悪化を防ぐため、症状に気づいたらすぐに専門医へ

涙嚢炎の原因は、形成異常による先天的なものや、鼻炎といった後天的なものなどさまざまで、その原因に応じて治療法も変わっていきます。また、急性涙嚢炎が悪化すると合併症のリスクもあるので、涙嚢炎の症状がみられたらまずは専門医に診てもらいましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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