記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/13 記事改定日: 2018/4/26
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸がピタリと止まってしまう病気ですが、寝ている間のことなので患者さん本人が自覚しにくい傾向にあります。ここでは睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状、危険性、治療法について詳しくご紹介していきます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、医学的に無呼吸(10秒以上呼吸が止まる状態)が睡眠時に多く見られる状態のことを指します。
睡眠時無呼吸症候群には、上気道がふさがり口や鼻の気流が止まってしまう「閉塞性」と、呼吸運動が止まってしまう「中枢性」の2種類があります。「閉塞性」は睡眠時に気道が狭くなり、いびきをかくのが特徴的なのに対して、「中枢性」は脳からの「呼吸しなさい」という指令が一時的に止まってしまうために起こるものなので、いびきをかかないのが特徴です。
睡眠時無呼吸症候群かもしれないと思ったら、専門医療機関の睡眠外来を受診しましょう。ほかにも呼吸器科や循環器科、耳鼻咽喉科などで治療を行っている医療機関もあります。
治療では「簡易型睡眠モニター」という装置で、血液中の酸素濃度、鼻や口での気流を測定して測定結果で軽症以上と出れば、1泊か2泊の検査入院をし、精密検査を行います。
精密検査で各種筋電図や脳波のセンサーを付け睡眠状態を細かく調べていき、結果に応じて睡眠時無呼吸症候群の確定診断がされると、以下の方法を組み合わせて治療が進められます。
軽症の「閉塞性」睡眠時無呼吸症候群の場合、体重管理や食事制限、運動、飲酒制限などを行うと睡眠時無呼吸症候群は正常値に近付き、改善する可能性があります。
生活習慣を見直しても改善されない場合は、持続陽圧呼吸法(CPAP療法)という、睡眠時に専用のマスクを装着する治療法を行います。そのマスクを通じて気道に陽圧と呼ばれる圧力を持続的にかけ、舌の根元が気道を閉塞してしまうのを予防します。
口腔内装置で行う治療は、マウスピース療法とも呼ばれます。睡眠時に下顎が少し前にでるようなマウスピースを装着する治療法です。下顎が少し前にでることで気道が広がり、軽症、中等症の「閉塞性」睡眠時無呼吸症候群は改善する可能性があります。
睡眠時無呼吸症候群の治療期間は人によって大きく異なります。
発症の原因が肥満や扁桃肥大などの解剖学的な病変であれば、改善すれば症状はなくなります。しかし、扁桃肥大は一般的には手術をしない限りすぐに改善するものではなく、治療期間も長くなります。生涯にわたって治療が必要となるケースも稀ではありません。
また、睡眠時無呼吸症候群の診断を確定させるには、終夜睡眠ポリグラフ検査が必要であり、これは入院して睡眠時の脳波や血中酸素飽和濃度などを測定し、睡眠の質を評価するもので、当然ながら入院が必要となる検査です。
睡眠時無呼吸症候群の検査や治療には健康保険が適応になり、自己負担は3割となります。
必要な検査は、自宅で睡眠時の血中酸素飽和度を計測するパルスオキシメトリー検査が概ね3000円程度、病院に一泊して行う精密検査は医療機関によって異なりますが15000円~50000円程度といわれています。
また、一般的な治療であるCPAP療法が機械の貸し出しを含めてひと月5000円程度の費用がかかります。他にも自分に合ったマウスピースの作成や手術などの治療法もありますが、これらは医療機関によって費用は大きく異なります。
マウスピースは10000円前後で作成できることが多いですが、手術は術式や入院期間によって費用が異なりますので、事前に医療機関に問い合わせておくとよいでしょう。
睡眠時無呼吸症候群をそのまま放置していると、以下のようなリスクが発生します。
睡眠時無呼吸症候群をそのままにしていると心臓血管に負担がかかり、不整脈を起こすことがあります。
睡眠時無呼吸症候群が続くと体内の酸素濃度が低下します。すると空気中の酸素を取り入れるために心臓の働きが強まり、高血圧を引き起こすことがあります。また、体内の酸素濃度が低下することで動脈硬化も進み、脳梗塞や心筋梗塞を起こしてしまう可能性もあります。
睡眠不足の状態からストレスがたまり、コレステロール値や血糖値が高くなることがあります。またそれが原因でメタボリックシンドロームになってしまう恐れもあります。
睡眠時無呼吸症候群になると充分な睡眠がとれず、日中に酷い眠気を引き起こし、過眠になってしまうことがあります。
上述の脳梗塞、心筋梗塞、過眠などが原因で、交通事故を起こしてしまう恐れがあります。病気を引き起こすだけでなく、そういった事故からも命を落としてしまう危険があるのです。
睡眠時無呼吸症候群の症状を改善するためには、その原因の一つである生活習慣病を改善することが肝心です。
脂肪によって気管が狭くなるので、食事内容の見直しや改善、体重のコントロール、運動を行うことをおすすめします。お酒や睡眠薬を禁止するのも効果的です。また寝るときは、横向きの態勢で寝ると気管が閉じにくくなります。
睡眠時無呼吸症候群は、未治療のまま放置すると交通事故を引き起こし、命を落としてしまうリスクもある病気です。そうならないためにも、家族やパートナーからいびきや呼吸の停止などを指摘されたら、早めに病院へ受診しましょう。