記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ジャンパー膝とは膝蓋腱炎と呼ばれる整形外科疾患です。バレーボールやバスケットボールなど、ジャンプを多くするスポーツ選手の発症例が多いことからこの名がつきましたが、治すことはできるのでしょうか?ジャンパー膝の治療や予防について解説します。
膝蓋腱炎とは、膝蓋腱が損傷し炎症を起こす慢性、疲労性障害です。ジャンプや着地動作を頻繁に行ったり、サッカーのキック動作やダッシュなどを繰り返したりするスポーツに起因する疾患です。
症状としては、膝蓋腱のある箇所、つまり膝蓋骨(ひざの皿)のすぐ下あたりに痛みと腫れが見られます。初期は膝蓋骨の下に違和感を感じる程度ですが、進行するにつれて次第に走ったりジャンプしたときになどに痛みを感じるようになります。
この段階では、運動中や運動後しか痛みはないことが大半ですが、炎症がさらに悪化して慢性化すると、膝が腫れ、少し歩いたり触っただけでも痛みを感じ、さらには何もしない安静時にもズキズキとした痛みが生じるようになります。
膝蓋腱炎は、バレーボールやバスケットボールなどジャンプを多くする選手が発症しやすいことから、ジャンパー膝(ジャンパーズ・ニー)とも呼ばれます。12〜20歳、特に骨の成長が一段落する高校生以降の年代で背の高い男性に多く見られます。
膝蓋腱炎の主な原因として、大腿四頭筋の柔軟性低下が挙げられます。特に成長期の長身選手は、骨の成長に筋肉の成長が追いつかずに相対的筋短縮(筋肉が硬い)状態を招き、膝蓋骨周辺に負荷が蓄積して発症します。
膝蓋骨(膝のお皿)から下腿(膝から下の脚。すね)につながる腱を膝蓋腱とよび、膝を伸ばすときは強靭な大腿四頭筋が収縮し膝蓋腱を介して下腿を持ち上げます。これらの組織は、ランニングやジャンプをするときの衝撃を吸収する機能も果たしていますが、ジャンプを頻繁に行うスポーツでは、強いストレスが繰り返し膝にかかるため腱や付着部に微小な損傷をもたらすことになり、痛みを引き起こしてしまうのです。
痛みの程度や膝蓋腱の損傷の度合いに応じて様々な治療法がとられます。
軽度であれば、安静を保ちながらアイシングを行い炎症が治まるのを待ちます。また、テーピングやサポーターで患部を固定して膝蓋腱への負荷を減らすことも大切です。痛みが強い場合は、これらに加えて炎症や痛みを抑える消炎鎮痛剤を使う薬物療法も行われ、筋肉腱が完全に切れる膝蓋腱断裂が起きた場合は、腱を縫合する手術が必要になります。
症状が和らいできたら、医師や理学療法士の指導のもと膝関節のストレッチングや膝周辺の筋力トレーニングを行い、再発予防に努めましょう。
膝蓋腱炎の予防と再発防止には、太もも前面の筋肉である大腿四頭筋のトレーニングが効果的と考えられています。
筋肉トレーニングやストレッチによって筋力と柔軟性を高めることは、衝撃を吸収し膝蓋腱に加わる負荷を軽くすることにつながります。
また、運動の前後のウォーミングアップやクールダウンも大切です。特に太もも前面(大腿四頭筋)や股関節周りは重点的に行いましょう。
痛みが出てきたときはアイシングを徹底し、テーピングやサポーターを装着するようにしてください。
発症しても軽症あるいは中等症であればスポーツは続けられることがほとんどなので、医師や理学療法士に相談しながらセルフケアやトレーニングのメニューを作ってもらうことをおすすめします。
ジャンパー膝は少しずつ症状が悪化していくため、病院を受診するころには重症化して治癒が長引いてしまうケースが多いといわれています。痛みがひどいときに安静を心がけることはもちろんですが、慢性化を防ぐためにも初期のうちに病院を受診し、医師や理学療法士に相談しながら治療計画を立てていきましょう。