記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/20 記事改定日: 2018/6/22
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
骨肉腫とは、骨にできる悪性腫瘍、いわゆる「骨のがん」です。初めのころは軽い痛みしか出ないことも多いため、筋肉痛と勘違いしてしまうケースもあるようです。ここでは、骨肉腫の症状についてわかりやすくまとめているので参考にしてください。
骨肉腫とは骨の悪性腫瘍のことで、類骨と呼ばれる未熟な骨の形成を特徴とする、悪性細胞腫瘍の一群です。特に膝関節や肩関節に近いところから発生しますが、全身の骨に発生することもあります。
骨肉腫の代表的な初期症状は痛みです。痛みが出る箇所は腫瘍が発生した骨に由来します。膝周辺や肩関節に近い部分によく発症するので、そのあたりに痛みを感じたり、腫れや熱感、関節が痛みで曲がりにくいと感じることが多いです。
初期段階では軽い痛みのため、スポーツをしている人などは筋肉痛と勘違いしやすく、放置しがちになってしまうことがあります。そのまま症状が進行すると腫瘍が成長しながら周囲の骨を破壊していくため、ズキズキという強い痛みに変わったり、患部の腫れがひどくなったりして、じっとしていても痛むようになります。さらに放置すると、骨がもろくなり骨折をしたり、肺などに転移してしまう可能性があります。
10代が約半数、5~24歳までに3分の2が発症していることから、10代から20代の若い人、また盛んに運動している活動性の高い少年期に発症することが多いといわれています。ただ、高齢になれば発症しないかというとそうではなく、最近は50~60代の人でも発症することがみられるようになってきています。骨肉腫は若い人の病気だ、と決め付けて考えないようにしなければなりません。
骨肉腫は血液の流れによる転移を起こすことがあります。特に肉腫内に血管が形成されているケースではこのような血行性転移を生じやすいとされています。肺に転移しやすく、膝の痛みなどを生じて病院を受診すると既に肺転移が見られることも少なくありません。
また他の骨へも転移を生じることがあり、このような場合には治療が非常に難しくなるのが特徴です。
骨肉腫の診断は、主にX線(レントゲン)撮影です。骨肉腫の場合、膝や肩の関節に近い部分の骨が虫に食べられたように破壊されていたりするため、骨の形がいびつになって写っていることがあります。
また、肺への転移も多いため、転移の有無を調べるために胸部X線撮影をすることもあります。胸部X線撮影によって何らかの異常が見られた場合には、腫瘍の大きさや位置、範囲、内臓への転移の有無などをチェックするために、さらにMRI検査やCT検査などの画像診断を行います。
その後、疑わしい組織の一部を採取して、がん細胞でないかどうかを調べる生検を行います。また、骨肉腫の場合、採血でアルカリホスファターゼや乳酸脱水素酵素(LDH)に高値が出ることがあります。
骨肉腫の治療法は、がん組織の切除と化学療法の組み合わせが基本となります。一般的にはがん組織を切除する前に抗がん剤を利用し、がん組織を小さくしてから切除する手術を行います。
また、良性骨腫瘍の場合は腫瘍だけかき出すような手術をしても再発の心配はありませんが、悪性の場合、再発しないように正常な組織で病巣を包み込むように切除する「広範切除」が必要になります。
手術後、傷が治るのを待ち、再発しないように再び化学療法を行います。化学療法は白血球などの血液細胞の量を減らすため、1~3週間の間隔を空け、その回復を待って効果のある化学療法を半年~1年程度繰り返します。化学療法を終了しても、最低5年間は経過観察が必要です。
骨肉腫の初期症状は筋肉痛に似た軽い痛みであることも多く、発見が遅れがちです。通常の筋肉痛であれば2日から1週間もあればなくなりますし、症状も次第に治まっていきます。いつまでも治らない、よくなっていかない筋肉痛がある場合は、すぐに病院を受診しましょう。