非結核性抗酸菌症の症状や治療法は?どんな感染予防法がある?

2017/11/20 記事改定日: 2020/9/25
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

土いじりやお風呂掃除などをよく行う方に注意していただきたい病気「非結核性抗酸菌症」を知っていますか?この記事では非結核性抗酸菌症の感染経路や治療法、結核との違い、感染予防法について解説します。

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非結核性抗酸菌症と結核の違いは?人から感染するの?

非結核性抗酸菌症とは、抗酸菌に感染して起こる病気です。結核菌も抗酸菌の仲間なのですが、非結核性抗酸菌症は結核菌および、らい菌以外の抗酸菌に感染したものを指します。

結核菌は人から人へ感染するのに対し、非結核性抗酸菌症は人から人への感染がないのが大きな違いです。

非結核性抗酸菌症の症状

症状は結核と似ていますが、一般的に症状はゆるやかです。咳や痰、血痰、喀血、全身倦怠感、発熱などが現れます。

非結核性抗酸菌症の治療法

結核に準じて行います。結核の場合、結核菌をターゲットとした薬があるのに対し、非結核性抗酸菌症は特定の菌をターゲットにした薬がありません。
これは非結核性抗酸菌が150種類以上もあるからであり、特定の菌をターゲットとした薬がない分、結核よりも治療は長くかかります。

非結核性抗酸菌症の感染経路や菌の特徴

非結核性抗酸菌は自然界に存在する菌で、非結核性抗酸菌症は人から人へ感染するものではありません。ただし、体力が弱っていて、免疫力が落ちているときに感染する可能性があります。

非結核性抗酸菌のうち、一番多いのが「MAC」と呼ばれるものでこれが全体の80%くらいにあたります。次に多いのがカンサシ菌です。

感染経路

非結核性抗酸菌が多く存在しているのは浴室や土壌です。浴室の掃除の際に知らず知らずのうちに吸い込んでいる、土を扱う仕事をしている人が知らず知らずのうちに感染するといったことが考えられます。

非結核性抗酸菌症は、女性の方が男性よりも発症が多いと言われています。また、菌を吸い込んだからといってすぐには発症しません。多くは、数年から10年以上かけてゆっくりと進行します。

非結核性抗酸菌症の自覚症状は?感染しやすい人の特徴って?

非結核性抗酸菌症は感染から数年から10年くらいかけて発症するので、自覚症状がないことが多く、検診で胸部レントゲンをとってはじめて罹患していることがわかったというケースも珍しくありません。

無症状で進行することの方が多いですが、咳、痰、血痰、喀血、全身倦怠感、発熱などを自覚症状として感じることもあります。

非結核性抗酸菌症にかかりやすい人
  • もともと肺に疾患を持っている人
  • 持病があり免疫力が落ちている人 など

白血病などで免疫抑制剤を飲んでいる人はとくに抵抗力が弱いので注意が必要です。

病院の受診の兆候やサインは?

非結核性抗酸菌症は発症頻度が高い病気ではありませんが、上述したように免疫力が低下した方は注意が必要です。万が一発症した場合はできるだけ早めに病院を受診して、適切な治療を受ける必要があります。次のような症状が続くときは軽く考えず、病院を受診するようにしましょう。

  • 2週間以上咳が続く
  • 微熱が続いている
  • 食欲や活気が低下し、体重が落ちている
  • 痰が絡みやすくなる
  • 血液が混ざった痰が出る
  • 息苦しさや呼吸困難感がある

非結核性抗酸菌症の検査と治療法

非結核性抗酸菌症であるかどうかは、胸部レントゲン写真のほか、胸部CT、喀痰検査で検査します。痰がでない人の場合は、喀痰検査のかわりに気管支鏡検査で検体を採取し、菌を調べます。

非結核性抗酸菌症の治療法

軽症の場合

特に治療をせずに経過観察を行っていく過程で自然に治ることもあります。しかし一般的には年齢や肝機能などに合わせて抗生物質クラリスロマイシンとエタンブトールやリファンピシン、ストレプトマイシンなど3~4剤の抗結核薬を併用した内服治療を行います。注意点としては、その治療方法はいまだ確立されておらず、治療効果にも個人差があることです。

肺の一部が大きなダメージを受けている場合

ダメージを受けている部位を切除する手術が行われることもあります。

非結核性抗酸菌症の感染予防法

非結核性抗酸菌は、浴室や土壌といったところに多く存在することがわかっているので、体調のよくないときに浴室の掃除や土いじりなどをしないことが予防法の一つです。

なお、非結核性抗酸菌症の場合、胸部レントゲンで特徴的な影が出ることがわかっています。予防というよりは早期発見につなげるために、定期的に検診を受けて胸部レントゲン写真でチェックしておくことが大切です。

また、まれに創部(傷口)から感染することもあります。カテーテルなどを使っている人は器具の衛生管理にも気を配りましょう。

おわりに:免疫力が低下している人は風呂掃除や土いじりを控えましょう

非結核性抗酸菌は健康な人に対してであれば悪影響を与えることはありません。ただし免疫力が低下している人の場合、菌を吸引したことがきっかけで非結核性抗酸菌症を発症してしまう可能性があります。体調が優れないときは、発症予防のために、原因菌が多く存在する場所に近づかないようにしましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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