肺アスペルギルス症って何が原因で起こるの?どんな種類がある?

2017/11/20 記事改定日: 2018/11/27
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肺アスペルギルス症はアスペルギルスというカビが原因となる病気です。健康な状態であればアスペルギルスを吸い込んでも発症することはありません。ではなぜ肺アスペルギルス症になってしまうのでしょうか。
この記事では、肺アスペルギルス症の原因や症状、治療方法などをわかりやすく紹介していきます。

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肺アスペルギルス症には、どんな種類がある?

肺アスペルギルス症とは、アスペルギルスというカビ(真菌)の一種によって肺がおかされて発症する疾患です。
アスペルギルスはごくありふれた真菌であり、1立方メートルあたりの空気中に約10個~20個程度存在していとされ、誰もが呼吸をするときに体内へ吸い込んでいます。健康な状態であれば吸い込んでも病気を引き起こすことはないのですが、免疫の低下や肺の病気などが原因で肺アスペルギルス症を引き起こしてしまうことがあります。

たとえば、白血病になった人や抗がん剤を使用している人などは、免疫機能が著しく低下してしまうため、かかりやすくなります。また、アスペルギルスに対してアレルギーを持っている人や、気管支拡張症の人や結核を患ったことがある人など、肺に何らかの問題がある場合もなりやすいので注意が必要です。

種類と症状

肺アスペルギルス症はその病態によって、肺アスペルギローマ、慢性壊死性肺アスペルギルス症、そして侵襲性肺アスペルギルス症の3つに区別されます。

肺アスペルギローマ
肺アスペルギローマの主な症状は、咳、喀痰、胸痛、呼吸困難などの一般的な呼吸器症状が現れます。他の呼吸器疾患に比べて血痰や喀血の症状が多い傾向がありますが、症状がない状態で胸部X線(レントゲン)検査などで発見されることも多いようです。
慢性壊死性肺アスペルギルス症
慢性壊死性肺アスペルギルス症は、症状が数週間かけて少しずつ進行していく特徴があり、徐々に肺を破壊していきます。
侵襲性肺アスペルギルス症
侵襲性肺アスペルギルス症は急性のため、突然に発熱とそれに続く咳、痰、呼吸困難、胸痛、血痰、喀血などの症状が起こるのが特徴です。

肺アスペルギルス症の原因とは?

肺アスペルギローマの原因は、過去に患った結核や肺嚢胞などの肺疾患によってできた肺の古い空洞に、アスペルギルスが入りこみ、その中で増殖することによって起こります。典型的には菌球を形成するのが特徴です。

慢性壊死性肺アスペルギルス症の原因は、何らかの基礎疾患が原因で症状を現します。
侵襲性肺アスペルギルス症の原因は、血液悪性腫瘍患者が抗がん化学療法を行う際、好中球が減少することが原因で発症したり、臓器移植患者が免疫抑制薬投与や膠原病患者に大量の長期の副腎皮質ステロイド薬投与したことが原因で発症します。

なお、この病気は、抗生物質やステロイド剤が多く使われるようになってきてから増加した可能性があることが指摘されています。

肺アスペルギルス症の治療法

肺アスペルギルス症の治療法は病態によって異なりますが、肺アスペルギローマの場合は、注射や点滴、または内服薬によって薬を投与し治療を行います。薬はポリコナゾール(VRCZ)やイトラコナゾール(ITCZ)などが用いられますが、実は投薬治療では根本的に治すことができません。完治させるためには基本的に手術をして原因となる部位を切除する必要があります。

慢性壊死性肺アスペルギルス症の場合は、まず原因となっている基礎疾患の治療を行うことが重要になります。侵襲性肺アスペルギルス症の場合は、静脈注射や点滴による投薬によって治療を行います。このほか、アレルギーによって引き起こされる場合には、ステロイド薬が用いて治療を行うのが一般的です。

検査

肺アスペルギルス症の診断には以下のような検査が必要になります。

画像検査

肺アスペルギルス症は、肺内に球状の塊のような病巣を形成するのが特徴です。病巣の発見のためには、レントゲンやCTなどによる画像検査を行う必要があります。
しかし、画像検査では病巣の発見は可能ですが、それが肺アスペルギルス症と確定することはできません。

気管支鏡検査

気管支内に内視鏡を挿入して病巣を観察する検査です。病巣の一部を切除することもできるため、画像検査では発見された病巣の病理検査を行うことができ、確定診断を下すことが可能です。
肺アスペルギルス症を確定するには必須の検査です。

血液検査

真菌に感染すると、血液中の「β-Dグルカン」と呼ばれる物質が増加します。真菌の種類を特定することはできませんが、画像検査で肺アスペルギルス症が疑われる病変が発見された場合には診断を下すための補助的な検査として調べられることがあります。

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症とは?

肺アスペルギルス症は、アスペルギルスを吸い込むことで肺内に侵入し、そこに病巣を形成することで様々な症状を引き起こす病気です。

一方、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症とは、喘息患者がアスペルギルスを吸い込むことで、アレルギー症状が生じ、咳や痰、喘鳴などの喘息発作様の症状や、重症化すると血痰や喀血、呼吸苦などの重篤な症状を引き起こす病気です。
通常の喘息で使用されるステロイド吸入薬や気管支拡張薬が効きづらくなり、ステロイドの内服治療が必要になります。また、内服薬でも十分に症状が改善しない場合には、抗真菌薬の内服も同時に行う事があります。

おわりに:肺アスペルギルス症は原因によって症状や治療が違う

肺アスペルギルス症は原因によって症状や治療方法が異なります。症状が徐々に進んでいくものや過去の病気が原因のものは、発見が遅れることもあるので注意が必要です。少しでも疑わしい症状に気づいた場合は、必ず医師に相談しましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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