記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/21 記事改定日: 2019/3/15
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
耳下腺とは流行性耳下腺炎(おたふく風邪)のときに腫れるところであり、そこに腫瘍ができることを耳下腺腫瘍といいます。
耳下腺腫瘍には良性と悪性がありますが、治療の違いはあるのでしょうか?ここでは、耳下腺腫瘍の基礎知識を解説しています。
唾液腺は唾液を作り出し分泌する器官であり、三大唾液腺の一つである耳下腺はこの中で最も大きな唾液腺になり左右の耳の前から下にかけて位置し、顔面神経に貫かれているという特徴があります。
流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の際に腫れる場所と聞くとピンとくる人もいるのではないでしょうか。
この耳下腺に腫瘍ができる病気を耳下腺腫瘍といい、良性腫瘍と悪性腫瘍があり、さらに良性腫瘍は多型腺腫や腺リンパ腫など、悪性腫瘍は、粘表皮がんや腺房細胞がん、扁平上皮がん、悪性リンパ腫などというように、それぞれ様々な種類に分けられます。
耳下腺腫瘍は、腫瘍全体から見ると、3%前後、発症頻度は10万人に1~3人とされ、およそ80%が良性腫瘍であり、そのうち多型腺腫が70~80%を占めているといわれています。
耳下腺腫瘍は良性・悪性によって症状が異なります。
良性の場合には、耳下腺部にしこりを触れるのみで特に症状がないことがほとんどです。しこりには可動性があり、急激に大きくなることはありません。
一方、悪性の場合には硬いしこりが触れるようになり、徐々に大きくなります。そして、痛みやしこりの癒着(可動性がない)を伴い、耳下腺の周辺を走行する顔面神経にダメージを与えるため顔面神経麻痺を引き起こすのが特徴です。さらに、進行すると頚部リンパ節などに転移を起こしてしこりが触れることもあります。
耳下腺腫瘍の検査では、問診、視診、触診のほか、超音波検査、唾液腺造営、CT、MRI、RIシンチグラムなどが行われ、腫瘍の形、大きさ、部位などから耳下腺腫瘍かどうかを判断します。
一般的に腫瘍が良性の場合は、痛みを伴わないことが多く、触診のときに腫瘍が動くのが特徴です。逆に、腫瘍に痛みがあったり、腫瘍が硬く動きにくい、顔面神経麻痺がある、といった場合は悪性腫瘍が疑われます。
これは耳下腺に悪性腫瘍ができると、周囲の組織に広がって癒着したり、耳下腺に張り巡らされた顔面神経にがんが広がり、神経を侵すことがあるからです。
また、腫瘍が急速に短期間で増大する場合は悪性腫瘍と考えます。良性腫瘍が大きくなるスピードは悪性腫瘍に比べると遅い傾向がありますが、良性の場合でも長年放置しておくと悪性に転化することがあります。
確定診断は、摘出した腫瘍の病理組織検査によって行われます。
耳下腺腫瘍と診断された場合、良性、悪性にかかわらず、基本的には外科的手術となります。
手術では再発防止や顔面神経の温存、唾液機能の温存などを考慮しながら腫瘍が摘出されます。
摘出方法には、腫瘍のみをくりぬく核手術、主要の周囲に耳下腺組織をつけて切除する耳下腺部分切除術、腫瘍を耳下腺浅葉とともに摘出する耳下腺浅葉切除術などがあります。
腫瘍の大きさや部位から判断して摘出方法が選択されますが、どの方法もメリットとデメリットがあります。
腫瘍が顔面神経のそばにあったり、中を通ったりすることも多く、腫瘍の周りの正常な組織ごと切除することが難しい手術とされ、1回目の手術で取り残しがあると再発しやすく、良性であっても時間が経つと悪性になることもあるので注意が必要です。
ゆっくり再発することもあるので、手術後数年以上経ってから再び違和感が出るようであれば、すぐに病院を受診しましょう。
耳下腺腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍がありますが、基本的にはどちらも手術が必要です。また再発も多く、良性腫瘍が悪性化するケースもあります。数年以上経過してから悪性化することもあるので、経過観察を忘れないようにし、少しでも異常を感じたら必ず病院を受診しましょう。