記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/30 記事改定日: 2020/1/9
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
おしりから出血した場合は注意する必要があります。それは出血する原因が痔だけではないからです。ここではおしりからの出血の原因を詳しく解説していきます。思い当たる悩みがある人は参考にしてください。
おしりからの出血の主な要因として、いぼ痔、切れ痔、腸の炎症が挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
おしりには、毛細血管が集まっている静脈叢(じょうみゃくそう)というものがあり、トイレでいきみ過ぎたり便秘が続くことで肛門周辺に負荷がかかってうっ血したり、血液循環が悪くなることなどが原因でいぼ痔ができます。
いぼ痔の中でも、肛門の内部におさまっている内痔核が破れて出血すると、真っ赤な鮮血がおしりから出てくることがあります。
便秘が続いて便が硬くなったり、下痢などが肛門付近を刺激すると、皮膚が切れたり、裂けたりして切れ痔を発症します。切れ痔で皮膚が切れたり裂けたりした部分から出血すると、トイレでおしりを拭いたときに血がついたり、血で下着を汚してしまうことがあります。
腸の炎症などで、腸から出血をしたときは便と一緒に出血することがあります。腸の炎症や異常のある部位によって血の状態が変化するため、便の色が変わってきます。
また、見た目に血が混ざっているとわからなくても、便を検査すると血が検出される便潜血もあるので注意が必要です。
おしりから真っ赤な血が出たのに、痛みを感じない場合には痔だけでなく大腸の中に病気が隠れている可能性があります。
ただ、痔の中でも内痔核は痛みは出ず、痛みのない出血の多くは内痔核によるものといわれています。
これは、内痔核が発症する場所には痛みを感知する神経がほとんどないからですが、内痔核が進行して肛門から脱出した状態になると痛みを感じることがあります。
また、痔以外の病気として考えられるのは
などです。
これらの病気は早期発見・早期治療が非常に重要であり、おしりから鮮血が出た場合にはなるべく早めに病院を受診するようにしましょう。
おしりの痛みがないものの鮮血が出たときは、上でも述べた通り内痔核が考えられますが、がんやポリープなど大腸の病気である可能性も否定できません。
大腸の病気によって鮮血が出たときは粘膜がダメージを受けていることが考えられますので食事は控えたほうがよいです。
すでに内痔核と診断され、出血を繰り返している人であれば、痔核を刺激しないよう香辛料や塩分の多い食事、過度なアルコールを控えて便が柔らかくなるよう水分を多めに摂るように注意しましょう。
原因がはっきりわからない鮮血のときは、食事を摂らずに病院を受診するようにしてください。
おしりから出血をする病気には痔以外にも様々なものがあります。痔は排便後に出血することが多く、ほとんどは長く続くことはありません。
しかし、上記のような大腸の中に起こる病気では、排便と共に出血することも多いです。大きな腹圧をかけない状態でもダラダラと出血したり、出血が長く続くのが特徴であり、貧血などの症状を引き起こすことも少なくありません。
痔の出血が止まらないときは、他の病気による出血の可能性もあるため、必ず病院を受診し、適切な検査・治療を受けるようにしましょう。
腸の炎症によって起こす病気には様々あります。深刻なものとしては直腸がんが挙げられますが、多いのは大腸ポリープや直腸炎といえるでしょう。それぞれおしりからの出血以外に腹痛を伴うものや発熱を伴うものがあります。
大腸にできた隆起した良性腫瘍を大腸ポリープといいます。痛みなどの症状は現れませんが、大きくなったり数が多くなると腸内での出血量が増えるので、便に血が混ざるようになります。血が混ざるといっても、目で見てわからないケースも多く、健康診断や人間ドックなどの検便(便潜血検査)などで発見されることも少なくありません。
下痢が一日に数十回あり、腹痛が起こり、血便以外にも、直腸から粘液が出ることもあるのが特徴です。直腸炎は潰瘍性大腸炎の病型の1種ではありますが、クローン病が原因になることもあります。また、貧血などの合併症が起こる危険もあります。
おしりから出血があった場合、痔以外の重篤な病気が隠されている可能性も否定できません。このため、次のような症状や状態があるときにはなるべく早く病院を受診するようにしましょう。
これらの症状は大腸がんや炎症性腸炎の可能性があり、早期治療を行わなければ病気がどんどん進行して命に関わることもあります。
「たかが痔」と思い込まず、全身の状態をチェックしてみましょう。
おしりの悩みは非常にデリケートな問題のため、病院に行かず一人で抱え込んでしまうケースもあるでしょう。しかし、おしりからの出血は痔だけが原因ではありません。深刻な腸の病気が原因で起こっている可能性もあるのです。おしりから血が出たときは、まずは医療機関を受診して原因を調べてもらいましょう。