記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/27 記事改定日: 2020/7/3
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
鼻の奥から食道の入り口まで続く咽頭に発生する「咽頭がん」。実は咽頭がんは発生箇所によって種類があり、それぞれで現れる症状や特徴、治療法が異なります。以降で詳しく解説していきます。
咽頭とは、食べ物や飲み物が通る器官で、鼻の奥から声帯の上までの部分を指します。上部は上咽頭、舌の付け根あたりは中咽頭、下部は下咽頭と3つに分けられ、がんができた部位によって上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がんと区別されます。
咽頭がんは初期症状があまり見られないことがほとんどで、食べ物を飲み込むのが困難になったりという典型的な症状が現れたときには、すでにがんが進行していることも多いです。また、どの部位にがんができたかによって、現れる症状も違ってきます。
上咽頭は鼻腔のつきあたりから口蓋垂と扁桃の上後方までの部位で、頭蓋底の骨が境となって脳と隣接しています。上咽頭がんはこの上咽頭の周辺に発生する悪性腫瘍で、唾液を介して感染するEBウィルス(エプスタイン・バーウイルス)が大きく影響しているといわれています。
中咽頭とは、口を開けて奥に見える部位であり、さらに軟口蓋(上顎の軟らかい部分)・扁桃・後壁(口奥の突き当り)・舌根という4つの部位に区別されています。
中咽頭は食べ物、飲み物、空気の通り道でもあり、嚥下(飲み込む)、構音(言葉を話す)という動作を行うときに重要な役割を担っている部分です。
中咽頭がんのおもな原因は、長期間にわたる過度な飲酒や喫煙習慣と考えられています。
たばこの煙には多くの発がん性物質が含まれており、アルコールも粘膜に刺激を与える性質があります。喫煙や飲酒は、煙やアルコールの刺激を直に中咽頭に与えることにあります。
また、近年ではヒトパピローマウイルス感染によって発症率リスクが高くなることも分かっています。
扁平上皮がん(粘膜上皮より発生するがん)が最も多く、悪性リンパ腫、腺がん(付属腺より発生するがん)なども見られます。
初期症状は現れにくいことが多く、扁桃腺が腫れて食べ物が飲み込みにくくなって初めて気が付くというケースが多いです。
下咽頭とは、のどの奥の食道に繋がる部分で、下はちょうど「のどぼとけ」あたりになります。頸部のリンパ節にも転移しやすいことが分かっています。またその約60%において、初診時にはリンパ節に転移が見られ、進行がんとしての治療が必要となるという特徴を持っています。
下咽頭がんのおもな原因は、長期間に渡る過度な飲酒や喫煙習慣とされていますが、下咽頭がん患者の3~4人に1人は食道がんを併発していることから、食道がんと何らかの関係があることが示唆されています。
また、鉄欠乏性貧血が下咽頭がんの中でも輪状後部のがんの発生を促すことが指摘されており、女性によく見られる下咽頭がんとして注目されています。
中咽頭がんと同様、ヒトパピローマウイルス感染も下咽頭がんの発生に関わっていることがわかっています。
下咽頭がんは、かなり進行が進んでから症状が出る部位だと言われています。
下咽頭と耳を結んでいる神経経路にがんが広がると、耳に激しい痛みを感じます。リンパ節への転移があると首にしこりを感じます。呼吸がしにくくなったりもします。
咽頭がんの治療法では、放射線療法、化学療法、外科療法の3つがあります。咽頭は食べ物を飲み込んだり声を出したりという動作に深く関係している部位ですので、咽頭の機能を失わせないようにするためにも、放射線療法と化学療法がまず選択されることが多いです。ただし、がんが発生している部位によって治療法が異なってきます。
聴覚・視覚に関係する神経が集中しているため、外科手術を行うことが少ないです。抗がん剤や放射線治療でがん細胞を死滅させつつ、咽頭を残すという方法です。
扁桃腺・舌・顎の骨などの組織を切除することもありますが、再建術も行われることが多いです。
下咽頭がんにはかなり進行してから気づくことが多いため、咽頭・食道・リンパ節などを切除することが多いです。
咽頭がんは初期症状があまり目立たないために、気づかないうちに進行してしまう恐ろしさがあります。発生部位によって症状や治療法が違いますが、飲み込みにくさやリンパ節の腫れなど気になる症状がみられたら、早めに病院で検査を受けるようにしてください。