記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
気胸(ききょう)という病名を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ただ、気胸とはいったいどんな病気なのでしょう。特徴的な症状や原因、治療法などをご紹介していきます。
胸の中にある肺を包む膜・胸膜の中に空気が溜まる病気を気胸と言います。正常な状態であれば臓側胸膜と壁側胸膜の2枚は密着しているため、その間に空気は存在しません。しかし、何らかの原因により肺に穴が空いて、そこから空気が流れ込むと気胸の状態となります。
気胸を発症すると、呼吸困難や咳・胸の痛みなどの症状が起こります。胸だけでなく肩や背中に痛みが起こることもあり、多くの場合は息苦しさも伴います。
気胸は、自然気胸と怪我による気胸、月経(生理)に伴う気胸に分けられます。
まず、自然気胸はさらに「特発性自然気胸」と「続発性自然気胸」の2つに分類されます。特発性自然気胸は、明確なきっかけがなく、体質などが原因となって発症するタイプの気胸です。若く、痩せ型で胸の薄い男性に多くみられます。肺に穴が開いて、一時的に空気が漏れるのですが、多くの場合すぐに閉じます。ただし、穴がふさがらずに空気が漏れ続けたり、再発したりすることもあります。一方の「続発性自然気胸」は、肺気腫や肺がんなどの肺の病気が原因で起こるタイプの気胸です。比較的、高齢者に多くみられます。
次が、怪我が原因で起こる気胸です。事故や怪我によって肋骨が折れ、肺に刺さることで穴が開き、空気が流れ込むことで気胸を発症することがあります。
最後が、月経の前後に発症する気胸で、このタイプは「月経随伴性気胸(げっけいずいはんせいききょう)」と呼ばれます。月経随伴性気胸は、子宮内膜症が原因で発症すると考えられています。子宮内膜症というのは、子宮内腔にしか存在しないはずの組織が卵巣や直腸・膀胱など子宮以外の場所に増殖する病気ですが、組織が胸腔まで達して増殖し、月経の際に子宮内膜組織が脱落するとともに肺に穴が開くことがあります。これにより気胸が引き起こされるのではないかといわれています。
気胸の症状は胸や背中あたりの痛み、息苦しさ、咳などです。痛みは数分程度でおさまったとしても、息苦しさがそのまま続くのであれば気胸の可能性が高いです。ただ、激しい痛みで夜も眠れない人もいれば、単に肩や鎖骨辺りの違和感を感じるだけだったり、動悸が感じられたりなど、症状の現れ方には個人差があります。
気胸にも段階があり、軽度によっては発症していること自体に気づかないことも珍しくありません。実際、息苦しさや痛みがあっても日常生活を送るのに妨げにならない程度であれば、自然に消失することもあるので特に治療をする必要はありません。
ただ、中等度・高度になり日常生活が困難なのであれば、チューブを使い、溜まった空気を逃がす胸腔ドレナージが必要になることがあります。胸腔ドレナージでも治らない場合は、外科手術が行なわれることもあります。
なお、呼吸器に負担のかかる行為は気胸の再発要因になり得ます。飛行機に乗ったり登山を行ったり、息を思いっきり吐いて音を出すような楽器を演奏したり、喫煙したりした場合には、気胸が起こるリスクは高まるので注意しましょう。
胸の痛みや息苦しさなどを引き起こす気胸。比較的男性に多い病気ではありますが、女性でも発症することがあります。心当たりのある症状が続く場合は、中等度以上の気胸に進行している可能性があるので、一度病院を受診するようにしてください。