記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/30 記事改定日: 2018/8/20
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
腎硬化症は、腎臓の血管が硬くなる病気です。良性と悪性の2種類がありますが、この2つの違いはどんなところにあるのでしょうか。腎硬化症の基礎知識をご紹介するので、早期発見のために役立ててください。
腎硬化症とは、その字の通り腎臓が硬くなってしまう病気です。継続した高血圧によって全身の動脈硬化が進むと、血液ろ過の役割を持つ腎臓の「糸球体」の毛細血管の内側も狭くなります。そのため、おのずと腎臓へと流れ込む血液が減り、腎臓の硬化が進んでしまうのです。
症状が進むと慢性腎不全となり、自力で老廃物を尿として排出できなくなったために透析が必要になるケースもしばしば見られます。高齢化が進んでいる日本では、現在増加傾向にあります。
また、腎臓が硬くなってろ過機能が働かなくなることだけでなく、高血圧による全身の動脈硬化の進行もあり、心筋梗塞や脳卒中などの命にかかわる疾患が引き起こされるおそれが高いともいわれています。
腎硬化症には、「良性腎硬化症」と「悪性腎硬化症」の二種類があります。
症状の進行が比較的ゆっくりであることが特徴です。長らく高血圧を患っていたという40代以上の人に多く見られ、本人は症状に気付いていないこともあります。自覚症状には、肩こりや動悸、めまい、頭痛などが挙げられ、尿タンパクは軽度もしくは陰性であることも珍しくありません。
症状が急激に進んでいくことが特徴です。血圧の急上昇によって血管が破壊され、同時に腎臓も急速に機能しなくなります。30代などの若い世代にも多く見られ、治療を受けずにいると1~2年以内に尿毒症に至り、肺水腫を伴う心不全や脳出血を発症すれば死亡するおそれもあります。血尿やタンパク尿も認められ、代表的な症状として、激しい頭痛や視力障害、悪心、嘔吐、意識障害、けいれんなどが現れます。
良性も悪性も、腎硬化症の原因は基本的には高血圧ですが、その性質は異なります。
原因がはっきりとはわからない「本態性高血圧」が原因とされ、本態性高血圧は、体質や、塩分の摂り過ぎ、肥満、過度の飲酒、運動不足、ストレス、喫煙などが要因になるのではないかと考えられています。
「加速型高血圧」「悪性高血圧」とよばれるタイプの高血圧が原因です。加速型―悪性高血圧とは、放っておくと腎機能が急激に低下し、心不全や高血圧性脳症、脳出血を発症するおそれがあるものです。長期間に及ぶ心身のストレスが関係していると言われています。また、悪性腎硬化症の発症には、遺伝的要因や「レニン」と呼ばれる血圧を上昇させるホルモンが関係しているとされています。
腎硬化症の症状が進めば尿毒症になってしまうため、人工透析を受けなければならず、精神的にも身体的にも大きな負担がかります。また、人工透析は、腎移植をしない限り生涯に渡って続けなければならないものです。人工透析を避けるため、さらには狭心症や脳梗塞といった重篤な合併症を防ぐために、病状が悪化する前に病院で適切な治療を受ける必要があります。
腎硬化症と診断されたときは、食事療法や運動療法を用いた血圧コントロールや、降圧剤の使用など、症状に合わせた治療を受けることが可能です。腎硬化症の早期発見のためには、血圧に気を配ることや生活習慣を見直すこと、定期的な病院でのチェックを習慣にしておくことが大切だといえるでしょう。
腎硬化症の診断には、高血圧の既往があることに加え、血液検査でクレアチニンや尿素窒素など腎機能を示す指標に悪化が見られること、網膜変化や心肥大など高血圧による他臓器への障害が生じていること、尿検査で高度な蛋白尿があることなどが必要となります。
また、他の腎不全と鑑別が難しい場合には、腎臓の組織を採取して病理検査を行う腎生検が行われます。
腎硬化症の診断基準は、「高血圧歴を有し、高度な蛋白尿(2.5g/日以上)および糖尿病や慢性糸球体腎炎などの基礎疾患を伴わない慢性腎不全」とされています。このため、腎硬化症を診断は、血液検査や尿検査などと共に、既往歴や全身の病変などを総合的に判断して行われます。
腎硬化症の治療の基本は、血圧を適正にコントロールすることです。血圧コントロールがうまくいかないと、腎機能が徐々に悪化し、最終的には透析や腎移植が必要となることもあります。
血圧コントロールで注意すべきことは、塩分や油分の多い食事を控えたり、肥満を予防するための適度な運動習慣、喫煙や睡眠不足、ストレスなどの高血圧を誘因する生活習慣の改善を行うことです。また、処方された降圧薬は必ず医師の指示通りに飲み、毎日血圧を測定して自身の血圧の状態を把握することも大切です。
その上で、血圧コントロールが難しいと感じた場合には、早めに担当医に相談して降圧薬の変更などを行うようにしましょう。
腎硬化症が重症化すると、尿毒症を合併し、人工透析が必要になってしまう可能性があり、狭心症や脳梗塞を合併する可能性もあります。特に悪性のものは進行が速いため注意が必要です。深刻な合併症に発展させないためにも、定期的な検査を習慣化し、いざというときに適切な治療を開始できるようにしましょう。