記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/7
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
多発性硬化症は、ミエリン鞘(髄鞘)に何らかの異常が起こり、髄鞘が脱落してしまう病気です。感覚障害や運動障害などの症状が現れ、再発と寛解を繰り返す特徴があります。この記事では多発性硬化症の再発について詳しく解説しています。
多発性硬化症は、脳や脊髄、視神経といった場所のあちこちに病巣が出来てしまい、いろいろな症状が現れるようになります。正常な身体では、脳から送られる情報は神経細胞を介して全身に送られていきます。この神経細胞にはところどころミエリン鞘(髄鞘)というカバーで覆われている部分があり、髄鞘は脳からの情報をスムーズに伝える役割を果たしています。しかし、なんらかの原因で髄鞘に障害が起こると、髄鞘が脱落する脱髄が起こります。脱髄が起こると脳からの信号をスムーズに伝えられなくなるため、さまざまな症状が現れます。
多発性硬化症は脱髄が原因で発症しますが、なぜ髄鞘が脱落してしまうのかというメカニズムについてはまだわかっていません。自己免疫を行うリンパ球の働きに異常が出るためでないかと考えられています。
多発性硬化症にかかる人は20~30代といった若い人に多く、男性よりも女性に多い傾向があります。症状としては痛みや温度の感覚が鈍くなる感覚障害、手足に力が入りにくい運動障害、目に起こる障害や排泄障害なども起こることがあります。
多発性硬化症は、症状が出る時期(再発、発症)と症状が治まる時期(寛解)を繰り返します。症状が治まったかに見える寛解の時期でも、身体の中では髄鞘が持続的にダメージを与えられていると考えられています。そのため、寛解期に適切な治療を行わないと、身体にあらわれる機能障害が悪化してしまう恐れがあるのです。
例えば多発性硬化症を治療せずに放置すると脳がだんだんと委縮していき、集中力や理解力・記憶力といった認知機能が低下していく可能性があります。
多発性硬化症を完治させる治療法は確立されていませんが、早いうちから治療を始めることで進行や悪化の度合いを遅くすることが出来ます。
また多発性硬化症を発症したとしても、妊娠出産ができないわけではありません。むしろ妊娠中は再発が抑制される傾向があるともいわれています。服薬による治療は胎児にとって影響を与えることもあるので薬には注意すべきですが、治療を早めに続けていくことで妊娠や出産を経験することも可能と考えられています。
多発性硬化症の治療は、再発期や寛解期によっても異なります。再発や進行を防ぐためには飲み薬・注射剤・点滴剤といった治療が行われます。
飲み薬は、リンパ球に作用して再発や進行を直接的に抑制するものと、酸化ストレスや炎症を抑えることで再発や進行を抑えるものがあります。前者は1日1回飲むタイプで、後者は1日2回飲むこととなります。
注射剤はインターフェロンβ製剤で免疫機能を調節し再発を防ぐことが目的です。皮下注射もしくは筋肉注射で投与され、皮下注射であれば2日に1回、筋肉注射であれば週に1回の注射となります。ペプチド医薬品は1日1回皮下注射をすることで、免疫機能を調節して再発を防ぎます。
点滴剤は抗体製剤と呼ばれるもので、4週間に1回医療機関で1時間ほどかけて点滴を行います。リンパ球が脳や脊髄に侵入するのを防ぐ作用があり、再発や進行を抑える効果があります。飲み薬や注射といった治療法があまり効かない場合や、症状が重い場合に使用されます。
多発性硬化症は、脱髄によって感覚障害や運動障害などが起こる病気です。発症の原因が明らかになっていないこともあり、完治させる方法もわかっていませんが、適切な治療を受けることで症状の悪化や再発を予防できるといわれています。疑わしい症状があるときはすぐに病院を受診し、医師の指示を守ってしっかりと治療を続けましょう。