記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/26 記事改定日: 2020/2/20
記事改定回数:3回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
尖圭(せんけい)コンジローマとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因の性感染症です。性器や肛門付近にカリフラワー状のイボができることが主症状ですが、このイボが自然に治る可能性はあるのでしょうか。この記事では尖圭コンジローマの治療方法と、治療の注意点についてまとめています。
尖圭(せんけい)コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症する病気です。このウイルスの感染経路は、性行為が主なものであり、全てのセックスで感染の危険があります。また性行為以外でも皮膚や粘膜に傷がある場合には、そこから感染することがあるため、感染が広がりやすい病気といえるでしょう。
ウイルスに感染した後は3週間〜8ヶ月の潜伏期間があり、その後ニワトリのトサカのようなカリフラワー状のイボが性器や肛門の周囲にできます。
このイボは痛みや痒みがないことが多く、初期の段階では尖圭(せんけい)コンジローマに感染していることに気づかないこともあるようです。性行為でうつることが多いため、発症する人は10代から30代の若い年代に多いことも特徴です。
尖圭(せんけい)コンジローマの原因はHPVウイルス感染ですが、HPVに感染したからといって必ず発症するわけではありません。
人の体には免疫力が備わっています。ウイルスや細菌など体に害があるものが体内に入ってきた場合、免疫機能が働きこれらの病原微生物を退治してくれます。しかし、免疫機能が正常に働かなかったり、病原微生物の量が多かったりして病原微生物を退治できなかった場合、病原微生物が増殖してしまい発症することがあります。
これは尖圭コンジローマでも同様です。何らかの原因で免疫がうまく働かないと、HPVウイルスが増殖して発症するといわれています。
まれに発症後にイボが自然に消失していくこともありますが、HPVを完全に体の中からなくすことは難しく、自然に消失したとしても多くのケースで再発がみられるといわれています。
尖圭(せんけい)コンジローマは、かゆみや痛みなどを伴わないことが大半であり、まれに自然にイボが治まってくることもあるため放置してしまう人もいるようです。
しかし、治療せずに放置した人の多くに病状の悪化がみられ、イボがどんどん増えていくといわれています。これはHPVはイボだけでなく皮膚の中に潜んでいるため、一度症状が治まっても何らかのきっかけでHPVが増殖してしまうと症状が悪化してしまうからと考えられます。
イボが増殖してしまうと、それだけ治療も長期化してしまいます。また、治療後に尖圭コンジローマを再発するケースも少なくありません。HPVの中にはがんの原因になる悪性のものもあるので、適切な治療を行い経過を観察する必要あることも忘れないようにしましょう。
尖圭コンジローマの治療には薬物療法と外科的療法がありますが、それぞれ次のような治療が行われます。
軽症な場合にはまず薬物療法が行われます。第一に使用される薬は、べセルナクリーム®と呼ばれる塗り薬です。かつてはべセルナクリーム®は日本で販売されておらず、治療は外科的切除が必要でしたが、今では国内で治療薬が販売されていますので薬物治療を行うことが可能です。
べセルナクリーム®で治療を続けても改善しない場合や、再発を繰り返すような場合には手術によってイボを切除する治療が行われます。
切除手術には4つの方法があり、一般的に広く行われてきたのは液体窒素凍結手術です。これは-200℃近くの液体窒素でイボを凍らせて切除を試みる治療法ですが痛みが強く、再発率も他の手術方法より高いのがデメリットです。
また、その他にも電気メスを用いてイボを焼きとる電気焼灼療法、炭酸ガスレーザーを照射することでイボを切り取るレーザー光線療法などがあり、これらの治療を行っても再発を繰り返す場合にはイボをメスなどで直接切除する手術が行われます。
電気メスでの治療や直接の切除は再発率が低いものの、治療後に傷跡が残りやすいため、術前に医師とよく打ち合わせ、納得のいく治療法を選択するようにしましょう。
尖圭コンジローマは性行為によって感染しますので、予防のためには安全な性生活を起こることが大切です。妊娠を希望している場合を除き、普段からコンドームを使用する習慣を身に付け、不特定多数との性行為は控えるようにしましょう。
また、尖圭コンジローマの原因ウイルスであるヒトパピローマウイルスは子宮頸がんワクチンによって予防することもできます。現在、女児に対するワクチン接種には賛否両論あるのが現状ですが、ワクチンを接種することも予防法の一つとして覚えておくとよいでしょう。
HPVに感染して尖圭コンジローマの症状がでているのに放置するのは大変危険です。イボはでき始めは少量だったとしても、そこから周囲の皮膚にどんどん広がっていきます。
症状が出始めた時点ですぐに治療を開始すれば、悪化してから治療するよりも短い期間で治癒できる可能性が高くなります。イボが性器や肛門の周りにできていることがわかったら、まずは医療機関を受診して診察を受けましょう。また、適切な治療を受けても再発するケースが多い病気でもあるので、医師の指示に従い、その後の経過観察も行うようにしてください。