記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/1/29 記事改定日: 2019/11/28
記事改定回数:1回
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
智歯周囲炎とは、親知らず付近の歯茎に炎症を起こしてしまうことです。しばらくすると症状が治まることも多いため、放置しがちな歯のトラブルではありますが、実は危険な合併症を引き起こしてしまう可能性があるのです。
この記事では、智歯周囲炎の症状やリスク、治療方法について解説していきます。
智歯周囲炎(ちししゅういえん)は、智歯(ちし:親知らず)周辺の歯茎などが炎症を起こしてしまうことです。
生えかけの親知らずと歯茎の間にある深い溝に細菌が入ることで発症し、親知らずが生えてくる20歳前後の人の発症が多いです。
親知らずは
ことから、歯ブラシが届きにくく、食べかすや汚れが残りやすいです。残った食べかすや汚れは炎症の原因になり、智歯周囲炎を引き起こすことがあります。
軽度の智歯周囲炎であれば、1週間ほどで自然に症状がおさまることもあります。ただし、一旦症状が落ち着いても、根本的な問題が解決しているわけではありません。
疲れや寝不足で体の抵抗力が落ちたり、口内が不衛生な状態が続いたりすると、再発を繰り返します。
再発を繰り返すうちに、細菌と炎症がのどや顎の骨・筋肉、扁桃腺にまで広がり、高熱やつばを飲み込んだり口を開けるだけでも強い痛みを感じるようになります。
さらに炎症が広がると、細菌が胸にまで達し血液に入り込んで敗血症になったり、非常にまれではありますが、感染症が原因で心臓が停止し死亡してしまうリスクもあるのです。
だからこそ、智歯周囲炎の発症に気づいたら、できるだけ早く歯科医院で治療を受けることが大切です。
智歯周囲炎では次のような症状が現れます。
智歯周囲炎は発症初期では智歯周囲に炎症が生じるのみですが、炎症が広がると口を開けたり物を飲み込んだりするのに支障を来すことも少なくありません。また、炎症の悪化により、発熱などの症状を引き起こすこともあります。
さらに放置して悪化すると、脳にまで炎症が広がって膿の塊を形成する脳膿瘍を発症するケースも報告されています。
重症化するまえに、気になる症状がある場合はできるだけ早く歯科医院や口腔外科で治療を受けるようにしましょう。
歯科医院では、症状や重症度にあわせて、以下のような智歯周囲炎治療が行われます。
智歯周囲炎による炎症と痛みが強い場合は、麻酔がきかないことがあります。
そのようなときは、親知らずの周りを消毒して膿を取り除き、抗生物質を投与して炎症を抑える治療が行われます。
(あわせて抗生物質や痛み止めの飲み薬が処方されることもあります。)
炎症が落ち着いたら、あらかじめレントゲンで親知らずの生え方や位置を確認してから、智歯周囲炎の原因となっている親知らずを抜きます。
上の歯は比較的抜きやすいですが、下の歯は顎の骨を通る太い神経に近いところに生えているため、抜歯に時間がかかることもあります。
また、親知らずが横向きに歯茎に埋まっている状態(水平埋状)の抜歯は難易度が高く、親知らずに虫歯ができている場合は歯がもろくなっているため割れやすいため、時間がかかってしまうことがあります。
智歯周囲炎は誰でも起こりやすく、軽度なら放っておいても症状がおさまる身近な歯のトラブルです。ただし、重症化すると死亡のリスクがあるということを忘れてはいけません。
歯茎に痛みを感じるなど、思い当たる症状がでたら、早めに歯科医院に相談しましょう。