記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/23 記事改定日: 2020/3/4
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脊髄空洞症とは、脳脊髄液が脊髄内に溜まってしまうことで起こる病気です。脊髄が圧迫されることで、しびれや脱力など様々な症状が現れます。この記事では脊髄空洞症の症状の特徴や治療内容について解説しています。
脳脊髄腔(脳や脊髄をおさめる空間)の中は「脳脊髄液」と呼ばれる液体で満たされています。脊髄空洞症とは、脊髄の中に脳脊髄液が溜まることで空洞ができてしまい、脊髄を内側から圧迫して神経症状や全身症状を引き起こす病気です。
20歳代から30歳代の発症が多いといわれていますが、症例は全年齢層に見られます。発症の原因は幅広く、脊髄及びその周辺組織の炎症や腫瘍、脊髄の梗塞や血管障害、外傷など、また小脳の一部が脊柱管に落ち込む「キアリ奇形」が代表的です。この他に原因の特定ができないものもあります。
脊髄空洞症の症状は脊髄のどの部位に異常が生じるかによって大きく異なります。
多くは、片方の腕の重苦しさ、しびれ、痛みなどの症状から始まり、徐々に感覚の低下や脱力が生じるようになります。そして、脊髄の病変は病気が進行するにつれて大きくなっていくため、それらの異常が腕だけでなく、足などにも広がっていくこともめずらしくありません。
また、病変が脳にまで及ぶと脳の神経にもダメージが加わり、物の飲み込みが悪くなるなどの症状が現れるこことがあります。
その他にも、自律神経にダメージが加わることで動悸や立ちくらみ、異常な発汗など所謂「自律神経失調症状」が現れることも知られています。
脊髄空洞症の治療は、薬物療法と手術療法の2種類があります。
脊髄空洞症に対しての薬物療法は、病気自体を根本的に治すことが目的ではなく、病気によって引き起こされる諸症状を改善することが目的となります。
このため、しびれがひどい方にはしびれを改善するためのビタミン剤、めまいがひどい方には抗めまい薬、痛みがひどい方には鎮痛剤などが必要に応じて使用されます。
手術療法には、「大後頭孔拡大術」と「空洞短絡術」の2つがあります。
大後頭孔拡大術は、頭蓋骨から脊柱管への移行部分を拡大させて脳脊髄液の流れを改善する手術です。「キアリ奇形」により脳脊髄液の流れが妨げられ、空洞の形成に通じている場合に有効とされる手術であり、基本的には術後約1ヶ月で空洞が小さくなるといわれています。
空洞短絡術は、脊髄空洞内に直接チューブを挿入して溜まった水を他に流す手術です。この手術は効果が高く難易度の低いものといわれていますが、人工のチューブを使用するため、チューブの詰まりや抜け落ちの危険性も考慮しなければなりません。また「キアリ奇形」の改善には効果が見込めないと考えられています。
脊髄空洞症の手術では脊髄を手術することになるため、手足のしびれや動きの悪化などが起きる可能性があります。また、手術の過程で脳脊髄液が漏れ出すと、髄膜炎などの合併症につながるおそれがあり、使用する人工の膜やチューブの使用がアレルギー反応や感染症をもたらすこともあります。
合併症が起こらない場合でも、脊髄空洞症には再発の可能性があります。術後は神経症状の診察やMRI検査などを受けることが大切です。
脊髄空洞症は原因を特定できない場合もある治療が難しい病気ではありますが、手術で空洞を小さくすることができれば、寛解に向かうことも少なくありません。ただし、手術後には合併症や再発のリスクがあるため、定期的な検査をおこたらないようにしましょう。