記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/7/23
記事監修医師
前田 裕斗 先生
プロラクチンはホルモンの一種で、乳腺の発達や乳汁の分泌に影響を与えるものです。ただ、女性特有のものではなく、男性にも一定量存在するホルモンです。この記事では、プロラクチンの働きとともに、分泌量が多くなる症状(高プロラクチン血症)について解説します。
プロラクチンは体内にあるホルモンの一種で、脳の下垂体から分泌されています。このホルモンは乳腺の発達を促したり、乳汁を分泌したりする働きがあります。
もうひとつは、排卵を抑制する働きです。授乳中に妊娠すると、授乳による子宮収縮で流産してしまう恐れがあるため、プロラクチンが排卵を抑えて妊娠しないようにコントロールしています。
プロラクチンは男女ともにあるホルモンで、正常値は女性で3.4~24.1、男性の場合は4.1~18.4です。正常値を超えると、高プロラクチン血症と診断されます。
高プロラクチン血症とは、授乳中といった特別な事情がないのに、プロラクチンの数値が高くなることです。高プロラクチン血症になると体が授乳中と同じ状態になり、排卵を抑制してしまいます。その結果、排卵障害や無月経が起こり、結果として不妊を招く恐れがあります。不妊はさまざまな原因が考えられますが、高プロラクチン血症も比較的多い不妊原因のひとつです。
高プロラクチン血症を引き起こす原因として、以下の3つがあります。
機能性高プロラクチン血症は、視床下部のホルモンバランスが崩れることにより起こります。プロラクチンは脳の下垂体から分泌されますが、下垂体は視床下部でコントロールされているため、視床下部のホルモンバランスが崩れると、分泌量がコントロールできなくなります。
薬剤性高プロラクチン血症は、ドーパミンを抑える作用のある睡眠薬や胃薬を使用した時に起こります。薬を使用した時に、一時的に値が高くなります。
腫瘍性高プロラクチン血症は、下垂体に腫瘍ができる場合や、下垂体周辺の組織に腫瘍ができる場合、脳腫瘍が転移した場合があります。
プロラクチンの値を下げる方法は、原因によって異なります。
機能性高プロラクチン血症の場合、基本的に薬で治療します。代表的なものはブロモクリプチンという薬で、プロラクチンの数値を下げます。
薬剤性高プロラクチン血症の場合、原因となる薬剤を特定して、その薬が服用をやめてもよいものであれば中止します。どうしても服用しなければならない場合は、ブロモクリプチンなどで数値を下げます。
腫瘍性高プロラクチン血症の場合、ブロモクリプチンを使って値を下げることもできますが、根本的な治療にはならないため、薬を服用し続けなければなりません。もう一つの方法として、手術によって腫瘍を取り除く方法があります。こちらはきちんと除去できれば完治させることができます。腫瘍を小さくするために放射線療法が行われることもありますが、治療期間が長くかかるというデメリットがあります。
プロラクチンは脳の下垂体から分泌されるホルモンで、排卵を抑制する働きを持っています。生理的な状態では授乳中でない限り、プロラクチンの数値が上がることはありませんが、視床下部のホルモンバランスが崩れたり、薬の服用や腫瘍などによって数値が上昇することがあります。