記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/5 記事改定日: 2019/4/4
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
胎児の脊髄形成に先天的な異常が起こる「二分脊椎」。この二分脊椎を防ぐには、妊娠中や妊娠前からの葉酸の摂取が大切だということが、近年わかってきました。その理由などについて、以降でお伝えしていきます。
二分脊椎とは、背骨の形に先天的な異常があり、脊柱管のなかにあるべき脊髄神経が背骨の外部に位置しているために、様々な神経障害をきたす病気です。
この病気には2つのタイプがあります。1つめが、脊椎の異常が外部からも確認出来るもので、顕在性二分脊椎と言われます。脊髄神経が露出している部分は脊髄髄膜瘤と呼ばれます。もう1つは脊椎の異常が外部からは確認できないタイプで、これを潜在性二分脊椎と言います。腰椎周辺に脂肪腫を合併することが多く、この病気を示唆する症状として重要です。
診断技術の進歩は目覚ましいものがあり、出生前の超音波診断で異常が発見されることもあり、追加で胎児MRI検査を行い出生後の治療計画をあらかじめ策定して、早期から適切な治療を実施することが行われています。
二分脊椎の原因としては、葉酸不足などの栄養学的因子、糖尿病や肥満などの環境因子、遺伝的因子の3つが知られています。この点から、未然に二分脊椎の発症を防止し、胎児を成長させるためには、葉酸を必要量摂取することが大切です。
葉酸は水溶性のビタミンBの一種で、細胞の分裂と増殖、組織・臓器の形成、早産の防止などの働きを持っています。妊娠時にはとりわけ必要量が高くなることから「赤ちゃんのビタミン」との名前も付けられているほどです。
しかし遺伝的要因は全体の患者数の20〜30%程度に留まるものなので、葉酸を摂取するなどの対策をとってもリスクを軽減できない場合があります。特に過去に二分脊椎の子供を出産した経験がある、3親等内に二分脊椎の患者さんがいる場合などは、発症のリスクが高く注意が必要とされています。
葉酸は細胞が成長し分化して正常な細胞に成長する上で、不可欠な役割を担っています。特に最近の研究では十分な量の葉酸を妊娠中に摂取することにより、二分脊椎をはじめとした神経管閉鎖障害の予防に大きく貢献することが明らかになってきました。
神経管閉鎖障害とは、妊娠初期に作られる脳や脊髄のもとになる神経管という組織が正常に成長しないために生じる障害のことを指しています。この神経管の成長のためには、正常な細胞への分化を促進する葉酸が必要量存在することが不可欠です。
葉酸は妊婦に限らず全ての人々にとって、不可欠な栄養素ですが、妊娠中は必要量が増加します。一般的な状態の必要量は1日あたり200μgですが、妊娠を予定している方や妊娠中の方には、神経管閉鎖障害を予防するため400μg以上の摂取を厚生労働所が推奨しています。
葉酸を摂取し二分脊椎の発症のリスクを下げるためには、摂取する食材を意識することが大切です。葉酸を多く含む食品としては肉類や野菜類があります。
含有量が多いのは肉のレバー類や海藻類です。特にレバー類は入手も容易で価格的にもリーズナブルであることから、葉酸を手軽に摂取出来る食材といえます。しかしレバーはビタミンAが豊富なため、過剰摂取を防ぐうえでも適正な摂取量を心がける必要があります。
二分脊椎を予防するためにも妊娠中は積極的に葉酸を摂取するようにしましょう。葉酸が含まれたサプリメントも販売されていますが、食生活に注意することも大切です。ここでは、妊娠中におススメの葉酸レシピを3つご紹介します。
ブロッコリーや葉物野菜に多く含まれる葉酸ですが、野菜ばかり食べると飽きてしまう…という人におススメなのが、菓子パン感覚で食べられるケーキサクレです。おからを使うことで、低カロリーかつ良質なたんぱく質も多く含む理想的なメニューに挑戦してみましょう。
まず、小松菜やピーマン、ブロッコリーなどのお好みの野菜はツナ缶と共にオリーブオイルでよく炒めます。
ボールに適量の生おから・卵・豆乳、炒めた野菜を投入してよく捏ね合わせ、そこに生地が固まる程度の小麦粉とベーキングパウダーを入れてさっくり混ぜ合わせます。
チーズや刻んだハムなどお好みの具材を投入し、炊飯器に入れて通常の炊き上げメニューを押せば完成です。
葉酸は妊娠初期に特に多く摂りたいものです。しかし、妊娠初期はつわりに悩まされる人も多く、食欲がないことも多いでしょう。そこでおススメなのが葉酸がたっぷり含まれた春菊をさっぱり食べやすいナムルにしたメニューです。
適量のひじきは水に入れて戻し、臭いが気になる場合は一回熱湯にくぐらせておきましょう。春菊やきゅうり、トマトなどお好みの野菜は適当な大きさにカットし、ひじきと混ぜ合わせ、ツナ缶・ごま油・塩コショウ・砂糖などで味付けしたドレッシングを和えれば完成です。
カロリーや糖分が気になる妊娠中ですが、デザートは楽しみたいものですよね。そこでおススメなのは、葉酸が多く含まれるバナナを使ったさっぱり&低カロリードリンクのデザートです。
バナナと無糖ヨーグルト、プルーンをミキサーにかけて液状にします。そこにはちみつやきなこなどでお好みに味付けすれば完成です。カルシウムや鉄分の補給にもよいので、毎朝の日課にいただくのがおススメです。
赤ちゃんの健やかな成長はもちろん、二分脊椎の予防のためにも、葉酸の摂取は非常に大切です。サプリを飲んだり、葉酸がたくさん含まれる食べ物を積極的に食べたりと、できるところから始めていきましょう。