記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/2/14
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
虫歯を放置すると骨髄炎になる可能性があることをご存知でしょうか?骨髄炎は慢性化すると完治が難しく、重症化して敗血症を合併すると命を落とす可能性もある病気です。この記事では、骨髄炎のリスクと虫歯を放置することのリスクについて解説しています。
骨髄炎は骨に細菌や真菌などが感染して、炎症が起こる病気です。
骨髄炎の原因(感染経路)には
・血流にのって体の別の部位から感染が広がる
・骨に直接感染が起こる
・骨の近くにある器官や組織、人工物から感染する
の3つの経路が一般的です。
これらの中でも、骨折や手術などで骨が破壊されたときに骨に直接炎症が起こるケースが多いといわれています。ただし、関節など周囲の組織の感染が広がって骨髄炎を起こしたり、血液を介して感染が広がるケースもないわけではありません。
骨髄炎は主に幼児と高齢者に見られますが、どの年代の人でもかかる可能性がある病気です。
炎症が起きている部位の痛みや発熱、体重減少などの症状が現れます。
骨髄炎の治療がしっかりと完了せずに慢性化してしまうと根治が難しくなります。
虫歯を放置して徐々に悪化していくと、虫歯菌の侵食はどこまでも広がっていきます。虫歯が歯の奥まで進行してしまえば、さらに神経まで虫歯菌の影響を受け、さらに悪化すると神経から顎の骨にまで侵食していくことがあるのです。
ここまで症状が進行するとかなり深刻な状態です。骨の中で炎症が起こっているために、痛みはかなり強くなり、さらには骨が壊死して元に戻らなくなってしまいます。
歯を削る治療だけでは骨髄炎は治療できないので、骨にアプローチする手術をしなければいけません。麻酔後に歯茎を切開し、炎症を起こしている骨を除去するという大変大がかりな手術になります。
最悪の場合には、敗血症という病気を起こして死に至るおそれもあるのです。
骨髄炎の診断はまず症状の問診から始まります。骨の同じ部位に持続的な痛みがあるかどうかを確認し、その後血液検査で赤血球沈降速度やC反応性タンパクの値を調べ炎症の有無を確認します。
X線(レントゲン)検査もしますが、X線検査は発症後2~4週間を経過しないと画像にあらわれないことがあるため、必要に応じてCT検査やMRI検査を行います。これらの画像検査で炎症の有無を確認し、感染部位を特定します。
その他、骨シンチグラフィー検査を行うこともあります。骨シンチグラフィー検査は、成長中の骨の異常は正確には調べられないため乳児の検査には使えませんが、骨髄炎の範囲の特定が可能です。
骨シンチグラフィーだけでは骨髄炎か別の病気かを判別できないときには、白血球シンチグラフィーを行うことがあります。また感染を起こしている原因微生物を特定するために、血液、膿、関節液、骨そのものを採取することもあります。
骨髄炎は、骨折や手術などで骨が損傷したときに起こることが多いですが、進行した虫歯が歯髄を介し、顎の骨に侵食していくことで発症することがあります。顎の骨髄炎は、とても大掛かりな手術になり、体への負担も大きいです。虫歯を見つけたら放置せず、早めに治療するようにしましょう。