男性の更年期障害は女性とどう違う?症状と治療方法を知っておこう!

2018/2/8 記事改定日: 2018/4/23
記事改定回数:1回

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

更年期障害はホルモンバランスの乱れで、動悸や息切れ、イライラなどの症状が現れる病気です。女性の更年期障害はよく知られていますが、男性の更年期障害の特徴をご存知でしょうか。この記事では、男性の更年期障害の症状や治療について解説しています。

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男性の更年期障害の代表的な症状とは?どんな特徴がある?

男性の更年期は、加齢によって男性ホルモン(テストステロン)が減少することが原因と考えられています。女性のエストロゲンほど急激な変化ではないだけに、症状を自覚しにくいのが特徴です。

男性の更年期障害の代表的な症状としては、女性と共通するものとして手足の冷え、イライラ、動悸、息切れ、不眠などが挙げられます。疲労感や倦怠感も顕著であり、仕事や趣味への関心や意欲が薄らぐといった変化もよくみられます。また性欲の低下やED(勃起障害)も代表的な症状といえるでしょう。
男性の更年期障害の症状は、身体症状・精神症状・性機能症状の3つに大きく分けられます。

身体症状

男性更年期障害では、男性ホルモンの中のテストステロンが減少します。テストステロンは男性らしい筋肉や太い骨格を形成する作用があり、テストステロンが大幅に減少すると急激な筋力低下が生じ、日常動作での疲労感や歩行障害などが引き起こされることもあります。

また、テストステロンの減少は肥満や高脂血症につながり、放置すると動脈硬化が進行して脳卒中や心筋梗塞などの重篤な合併症を生じる危険も高まります。

精神症状

テストステロンは男性らしい活発性ややる気などの源となるホルモンであり、テストステロンの減少によってやる気の減退や抑うつ気分などを生じます。また、それに伴う不眠や食欲不振、注意力の散漫、イライラなどが引き起こされることもあり、職場で責任ある立場にある中年以降の男性には、仕事上のトラブルや弊害を生みやすくなる原因ともなりえます。

性機能症状

テストステロンは、性腺の発達や精力を促す作用があり、テストステロンの減少は性機能の低下につながります。また、テストステロンには勃起に必要なNO(一酸化窒素)という物質の産生を促すため、テストステロンの減少によって勃起障害を起こすこともあります。

男性更年期障害での性機能低下の特徴は、朝立ちの減少、勃起障害、性欲減退、射精時の快感の減少などです。
また、近年注目されているのは、男性更年期障害による動脈硬化は陰茎の血管から始まることがわかっており、勃起障害は動脈硬化が生じている証拠であり、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクの一つの指標としてとらえられています。

男性の更年期障害を病院で診てもらうタイミングは?

男性の更年期障害は、眠れない、食欲不振、気分の落ち込み、イライラといった症状の出方がうつ病に似ているため、判別が難しく、治療が遅れて深刻化するケースが多いといわれています。

女性の更年期障害は閉経や年代といった期間や区切りがあり、一過性の病気として周知されています。しかし、男性の更年期障害はまだ認知度が低いため、患者本人だけでなく周囲もうつ病を連想してしまいがちです。
なんとなく元気が出ない、食欲がない、気分が落ち込みがちと感じたときは、男性更年期を疑い専門医を受診することをおすすめします。

男性更年期障害は何科を受診すればいい?

男性には、女性の婦人科のように男性に特有の病気に特化した診療科がありません。そのため、男性更年期障害を疑った場合にどの診療科を受診すればよいか悩む人も多いでしょう。

最近では、男性更年期障害が注目され始めていることから、男性専用更年期外来やメンズクリニックなどのように男性更年期専門の病院も増えてきました。
しかし、このような病院は都心部のごく一部に限られています。近くに専門外来がない場合には、泌尿器科や内科、心療内科などを受診するとよいでしょう。どの診療科を選ぶかは、身体症状、精神症状、性機能症状の内、どの症状が最も強いかによって決定するとよいです。

男性の更年期障害の治療法

ホルモン補充療法

日本においてはまだ普及が遅れていますが、泌尿器科や男性更年期外来などでは、減少している男性ホルモンを補うためのホルモン補充療法を導入しているところがあります。
適応となるのは、40歳以上で、自覚的あるいは他覚的に男性更年期障害の症状があり、血中の遊離テストステロンが基準値より低く、重篤な基礎疾患を持っていない人です。

治療には、2~3週間ごとに筋肉注射でテストステロンや性腺刺激ホルモンを補給する方法や、男性ホルモン軟膏を1日1~2回陰嚢の皮膚に塗る方法があります。治療を開始してから3ヵ月ごとに評価を受け、効果が認められれば治療が継続されます。

治療によって、気分、意欲、睡眠などが改善する人もいれば、性欲や勃起障害が改善する人もいます。しかし長期間頼りすぎると、身体が自分でテストステロンを作ろうとしなくなるおそれが指摘されています。
また副作用として、心血管系疾患、脂質代謝異常、多血症、睡眠時無呼吸症候群、前立腺疾患などが発生する可能性があります。

そのため病院では、治療効果と副作用やデメリットなどを総合的に判断しながら、ホルモン補充療法を始めるかどうかが検討されます。治療をすすめられた場合は、医師と相談のうえ、治療費、治療期間、有効率などをきちんと理解したうえで受けるかどうかを検討しましょう。

心理療法

心療内科や男性更年期外来では治療の一環として、希望者にカウンセリングを行っています。専門カウンセラーが面談し、職場や家庭環境を改善するためのアドバイスやライフスタイル改善の支援をしながら、患者の心の問題を解決するためのサポートを行います。

漢方薬

男性更年期障害には様々な漢方薬が有効であると言われており、症状に合わせて併用されることがあります。一般的に使用されるのは以下のものです。

  • 八味地黄丸:性機能低下だけでなく、疲労感にも効果があるといわれています。
  • 補中益気湯:疲労感や食欲低下などに効果があるといわれています。
  • 柴胡加竜骨牡蛎湯:イライラや動悸などの精神症状に効果があるといわれています。

漢方薬は薬局でも購入できるため、自己判断で飲んでいる人も多いでしょう。しかし、漢方薬はあくまで症状を緩和するための薬であり、テストステロンの減少による動脈硬化などの恐ろしい合併症を予防することはできません。また、体質に合わない人は長く続けても十分な効果を得ることはできず、思わぬ副作用を生じることもあります。

漢方薬を使用する場合には、自己判断で使用せず、必ず医師と相談してから服用しましょう。

男性の更年期障害のための食事 ― 生活習慣の改善も必要

男性更年期障害では、テストステロンの減少によって高脂血症や内臓脂肪の蓄積、高血圧などの様々な生活習慣病が生じやすくなります。

これらの生活習慣病は脳卒中や心筋梗塞などの重篤な合併症を生じる危険を高め、生命の危険や日常生活に支障を来たす後遺症を引き起こす可能性があります。このため、男性更年期障害に差し掛かった人は、更年期障害の根本的・対症的治療だけでなく、これらの症状を回避するために生活習慣の改善を行う必要があります。

最も大切なのは、肥満や高脂血症予防のための食生活の見直しと運動習慣です。特に食事は、高カロリーなものを控え、野菜を多めとしたバランスの良いメニューがすすめられます。また、喫煙や過度な飲酒も避けた方がよいでしょう。

おわりに:ホルモン補充方法にはメリットとデメリットある。専門医と相談しながら自分にあった治療方法を選ぼう

男性ホルモンの減少が原因で起こるといわれる男性の更年期障害は、女性の場合と異なり、まだ認知や理解が遅れている現状です。しかしホルモン補充療法などの導入で症状の改善がみられるケースが増えているといわれています。

ただし、ホルモン補充療法については、長所と短所を比較検討しつつ、十分納得したうえで選択することが大切です。食事や運動習慣を見直し、生活習慣をしながら、自分にあった方法で治療を続けていきましょう。

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