記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/10 記事改定日: 2018/6/21
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
腎臓病を予防するには、「血圧コントロール」が重要ということをご存知でしたか?腎臓病と血圧の関連性や、上手な血圧コントロールのために知っておきたい点について解説します。
腎臓は、血液のろ過などの重要な役割を担う臓器です。この腎臓の機能は加齢によって徐々に低下していくのですが、これに高血圧が加わると腎機能はさらに低下し、慢性腎臓病を発症しやすくなることがわかっています。
また、両者の関連性はそれだけではありません。腎機能が低下すると余分な塩分や尿の排出ができなくなり、血液量が増加することで高血圧が引き起こされ、この高血圧によってさらに腎臓への負担が増え、腎機能が低下するという悪循環にも陥りやすくなるのです。
慢性腎臓病は自覚症状が乏しいため、気づいたときには既に重症化しており、人工透析を余儀なくされるケースも少なくありません。また、慢性腎臓病は、脳卒中や心臓病などの心血管疾患の主要因の一つとも言われています。しかし、腎臓病と血圧には深い関連性があることから、血圧管理をしっかり行うことが、腎臓病の発症や悪化を予防することにつながるとも考えられているのです。
健康な人の血圧の目標値は年齢によって異なります。
75歳未満の人では収縮期血圧が135mmHg、拡張期血圧が85mmHg未満であり、75歳以上の人は拡張期血圧が145mmHg、収縮期血圧が85mmHg未満とされています。
これらの目標血圧は、いわゆる「家庭血圧」とよばれるものを基準にしており、家庭でリラックスした状態で測った血圧の平均的な値での数値を指しています。
慢性腎臓病患者さんの降圧目標は、収縮期血圧が130mmHg、拡張期血圧が80mmHg未満となります(尿中たんぱく量が1日1g以上の場合は、125/75mmHg未満)。特に、近年の研究では、朝の収縮期血圧が腎機能の低下率に大きく関わっていると考えられているため、朝の収縮期血圧を130mmHg未満にコントロールすることが大切です。まずは毎日朝晩欠かさず、血圧の計測をすることから始めましょう。
血圧コントロールのためには、食事管理をきちんと行うことが重要です。下記の点をしっかり守りましょう。
1日あたりの塩分摂取量の目安は6g以下となっています。塩分は高血圧の要因として有名ですが、腎臓病がある程度進行している方や高齢者の場合、必要以上に塩分量を制限するとかえって血液循環が阻害される可能性があります。医師と相談し、ご自身に合った塩分摂取量を把握することが大切です。
タンパク質は生命維持に欠かせない栄養素ですが、老廃物を作り出すため、摂りすぎると腎臓に負担をかけてしまいます。体重1kgあたり、0.6~0.8gの摂取量が目安です。
バナナやほうれん草などに多く含まれるカリウムは、腎機能が低下するとうまく排出できなくなります。1日あたり1500mgを目安に、摂取量を制限してください。
腎臓病予防のためには適度な運動が効果的です。
運動は肥満や高脂血症、糖尿病など腎臓病を引き起こす可能性がある様々な病気を改善する効果が期待でき、結果として腎臓病の発症を予防することができるのです。
しかし、運動ならば何でもよいというわけでありません。効果的に脂肪を燃焼させるウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動がおすすめです。これらの有酸素運動を無理のない範囲で長く続けられるように行いましょう。
ただし、既に腎臓病を患っている人は、運動をすることで腎臓病をさらに悪化させることも考えられます。そのため、スクワットやかかと上げ、ふくらはぎのマッサージなど軽度な運動が推奨されますが、行う前に医師と相談して体に負担の少ないものを行うよう指導を受けるとよいでしょう。
すでに腎臓病を発症している場合には、腎機能の悪化によって尿の生成能力が低下し、余分な水分が体にたまりやすくなるため、水分摂取を制限される場合があります。
しかし、腎臓病予防のためにはこまめな水分補給が非常に重要となります。これは、脱水になると血液が濃くドロドロとした状態になるため、血液のろ過を行って老廃物を排出する役目をする腎臓にダメージが加わりやすくなるからです。
腎臓病の発症や症状の悪化には、高血圧が大きく関連していると考えられています。血圧のコントロールの基本は食事管理にあるので、ご紹介したポイントに注意して、普段の献立を見直してみてください。