心臓移植後に起こり得る合併症と日常生活での注意点とは?

2018/2/21 記事改定日: 2019/4/16
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

重い心臓病の患者さんに適応される「心臓移植」ですが、無事移植が終わった後も、気をつけるべきことはたくさんあります。今回の記事では、心臓移植後に起こりうる合併症や、日常生活での注意点についてご紹介していきます。

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心臓移植手術とは?

心臓移植とは、ドナーから心臓を提供してもらい、自分の心臓の代わりとして機能させる治療法です。延命と社会復帰を目的に実施されます。

心臓移植を受けるためには、日本臓器移植ネットワークに移植希望者として登録し、ドナーが現れるのを待つことになります。ドナーが現れると日本臓器移植ネットワークから病院へ連絡が入ります。そして、患者やその家族に対して移植手術の意思確認が行われ、了承すると手術になります。

移植手術は全身麻酔をして行われ、人工心肺という機器によって血液循環と呼吸を維持しながら、心臓を移植していきます。
心臓移植が行われるのは、心臓移植でないと治療が困難な重度の心臓病の場合です。具体的には、重症の突発性心筋症、広範囲に及ぶ心筋梗塞、重度の心筋障害を伴う心臓弁膜症などがあげられます。

心臓移植手術後に注意が必要な合併症

心臓移植手術後に注意が必要な合併症は、拒絶反応と感染症です。

人の体は、異物が体内に入ってくると排除するために攻撃する免疫機能があります。移植された心臓は異物と認識されてしまい、免疫機能によって攻撃を受け、拒絶反応を起こします。拒絶反応は、移植後3ヶ月は注意が必要ですが、時間が経つにつれ減少していきます。全くなくなるものではありませんが、早期に治療を行えば問題は起きません。

拒絶反応を抑えるために免疫抑制療法が行われますが、免疫を抑制すると体の防御力が低下し、感染症にかかりやすくなります。特に移植後3ヶ月は免疫抑制剤の使用量が多く、感染症にかかりやすいので注意が必要です。場合によっては感染症によって死に至ることもあります。

免疫抑制療法とは?

心臓移植後は拒絶反応を抑えるため、免疫抑制剤の内服を一生涯続ける必要があります。
一般的には、シクロスポリンやタクロリムス、メソトレキサートなどの免疫抑制剤を複数種類使用します。術後は、点滴によって投与され、移植後早期に生じやすい急性GVHDなどの合併症のリスクを軽減し、徐々に薬剤の減量を行いながら内服治療に移行していきます。
免疫抑制剤は自己判断で中止したり、減量したりすると術後長い時間が経過した後でも拒絶反応を生じるリスクがありますので、必ず医師の指示通りに服薬を続けることが大切です。

日常生活ではどんなことに気をつけたら良い?

心臓移植を受けた後は、拒絶反応を抑えるために免疫抑制薬を飲み続ける必要があります。しかし、免疫抑制薬を飲むと、体の防御能力が低下するために感染症にかかりやすくなります。そのため、感染症にかからないために日常生活のさまざまなことに注意しなくてはなりません。

具体的には、手洗いやうがいを徹底し、マスクを着用するようにします。また動物にも注意が必要です。糞の中にさまざまな菌がいるからです。

食事においても、なるべく菌に接しないよう注意します。殺菌表示のある食べ物を選んだり、果物は新鮮なものを選び、食べるときには皮をむいて水で十分に洗浄するようにします。ペットボトルやビンなどの飲み物は開封後24時間以内に飲むようにしてください。

おわりに:心臓移植後の合併症には注意が必要

心臓移植は成功すれば心臓の機能が回復し、社会復帰できたり、活発に活動できるようになったりとQOLが改善します。
一方で、拒絶反応を抑えるために、免疫抑制薬を飲み続ける必要があります。術後の合併症対策のために日常生活においてもさまざまな制限が発生します。ドナーから提供してもらった心臓を大切に、日常生活を自分でしっかりとコントロールすることで術後の合併症を予防しましょう。

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